

本日から三日間、皆さんとプラスチックの成形と加工に関する学習を行いたいと思います。
皆さんもご存知のように、私たちの身の回りには多くのプラスチックが存在しており、次のグラフに示すとおり、販売量も年々増えています。
さて、このプラスチックという言葉ですが、特定できるいくつかの材料の呼び名ではありません。プラスチックは、その用途や使用目的によって、様々な性質を持ったプラスチックが生み出されており、これら一群の材料を総称した呼び名です。
一般にプラスチックは、エチレンとかプロピレンと言った小さな分子を、いくつも連結させることによって作り出されます。そこで材料となる小さな分子のことを「モノマー」と呼び、出来上がったものをたくさんつながったと言う意味を込めて「ポリマー」と呼ぶこともあります。そして、モノマーが重なり合うようにしてポリマーになることから、プラスチックを作る反応のことを「重合」と呼んでいます。
このようして作るプラスチックには、先程述べたように様々な性質を持つものがあり、いろいろな考え方により分類されます。
ここに、代表的なプラスチックを持ってきましたので、手に取ってみてください。
左から
- PP:ポリプロピレン
- PLA:ポリ乳酸(代表的な生分解性プラスチック)
- PE:ポリエチレン
- PET:ポリエチレンテレフタレート(いわゆるPET=ペット・ボトルの材料)
- PA6:ポリアミド(ナイロンと言った方がなじみやすいかも)
- PS:ポリスチレン(発泡剤を加え成形したものが発泡スチロール)

手に取ってみると

回された試料
次に、プラスチックを考える上で重要な二つの視点を紹介したいと思います。
まず第一の視点は、プラスチックを加熱したときの性質についてです。
例えるならば、お菓子の「チョコレート」と「ビスケット」のようなプラスチックがあるということです。つまり、プラスチックは一度加熱し反応させて固めたものですが、再び加熱したとき「チョコレート」のように溶けて柔らかくなりますが、冷やすと固まるような性質を持つプラスチックと、「ビスケット」のように一度固まったものは再度加熱しても溶けないと言う性質を持つプラスチックがあります。
そこで、「チョコレートタイプ」のプラスチックを「熱可塑性樹脂」、「ビスケットタイプ」のプラスチックを「熱硬化性樹脂」と言います。

プラスチック分類表
このことが何に関係するかというと、リサイクルという話につながってくるのです。近年は環境に対する関心が高くなりましたが、その中でプラスチックは、ゴミの減量やリサイクルという話になると必ず登場します。身の回りにたくさんあるプラスチックを使い終わった時どう処理するかと言えば、リサイクルするに越したことはないわけですが、「熱可塑性樹脂」は熱を加えれば柔らかくなり、再び製品にすることが容易にできます。一方、「熱硬化性樹脂」そう簡単にはリサイクルできないという話になるわけです。
ですから、プラスチックだからと言って、混ぜてしまっては大変なことになります。だから、プラスチックの分類表にあるように、細かく分けなくてはいけないのです。
ところで、このリサイクルですが、良いことばかりではありません。
熱を加えれば成形し直せると言っても、何度も熱を加え続けられると性能が劣化しますし、出来上がる製品は石油から作ったときよりも高価なものとなってしまいます。それは、捨てられるプラスチックを集め、処理工場に輸送して粉砕してと言った具合に、多くの手間がかかるからです。実際にリサイクルして採算が合うのは、アルミくらいだとも言われています。

結晶化の違いによる分類
さて次に、第二の視点ですが、それは結晶化という話です。
様々な性質があるプラスチックですが、その中の分子の様子はどうかというと、全ての分子が規則正しく整列しているわけではありません。
規則正しく整列している部分を「結晶化」しているといい、結晶化の割合が高いほど硬く、弾性率強度などが向上し、透明性はなくなります。
透明性があるものの代表としてはCDの材料となるポリカーボネートは有名ですが、透明なペットボトルの材料であるPET(ポリエチレンテレフタレート)は、実は結晶化しやすく本来は不透明なものなのです。それが、どうして透明なのかというと、加工するとき急冷することで結晶化を防いでいるのです。
続いて紹介したいのは、どのようにして様々な性質を持ったプラスチックを作るのかと言うことです。

研究成果
一般にプラスチックは、柔らかくて燃えやすく、電気を通さないと言う性質があります。これに対して、石や金属と言ったものは、硬くて燃えにくく、金属は電気を通します。
もし、プラスチックに石や金属を混ぜ合わせてみたらどうなるでしょうか。プラスチックに混ぜ合わせるものを「フィラー」と言いますが、私たちの研究室では、こうしたフィラーについて何を、どのように、どの程度混ぜてやったらどうなるかという研究もしています。
これが、そうした研究の成果です。
このような改良方法もありますが、一般に目的にあったプラスチックを作ろうとするときに試みる方法には、次の二つがあります。

講義に聴き入る生徒
一つ目は「共重合」です。共重合というのは、異なる性質を持つプラスチックを作る原料となるモノマーを、あらかじめ混ぜて目的とするプラスチックを作ると言う方法です。
これに対して「ポリマーアロイ」と言う方法があります。これは、異なる性質のポリマーを混ぜて作るというものです。
ところで、身近にあるプラスチック製品ですが、どのようにして作られているのでしょうか。
プラスチック製品は、先程お見せしたような粒状の材料から作られます。
この粒状のプラスチックを加熱して流動性を与えることが第一の工程です。金属に比べてプラスチックは、流動性を持つ温度は低いですが、熱を通しにくいという面を持っています。ですから、加熱して流動性を持たせるときには、十分に撹拌する必要があるわけです。
内部温度の測定

この日の午後の実験中、流れ出て固まったプラスチックの内部温度を測定しました。
素手でもさわれるほどになったところ(表面温度は60℃)で、温度計の先端を少し差し込み、内部温度を測ってみると120℃でした。
次に行うことは、形状を作るという第二の工程と固めるという第三の工程がありますが、これらにも、目的とする形状に合わせた様々な方法が取られます。全てをお話しすると時間がかかりますので、本日は第二工程の形状を作る話だけをしておきたいと思います。
形状を作る方法として有名なやり方に「射出成形」と呼ばれる方法があります。これは、注射器のようなもので、目的とする形状の陰影をつけた「金型」と呼ばれるものの中にプラスチックを押し込んで、その形を写し取らせる方法です。
このように、金型と呼ばれるものを使う成形方法には、薄く延ばしたプラスチックを真空の負圧によって金型に吸い付けて行う「真空成形」や、プラスチックに発泡剤を混ぜて体積が増加することによって金型に合わせる「発泡成形」などがあります。

射出成形

真空成形

発泡成形
このような金型に押しつけるようにして成型する方法は、お菓子の作り方で例えるならば「タイ焼きタイプ」と言ったところでしょうか。
これに対して「ところてんタイプ」の成型方法もあり、一般的には「押出成形」と呼ばれています。押出成形では絞り出されるところに金型が使われているのですが、この絞り口の金型のことを「ダイ」と呼びます。このダイの形によって様々な形状が生み出されるのですが、出てきたものを引っ張り延ばすことによって細い糸を作ることもできます。

紡糸

絞り口と成型品

押出成形
こうした押出成形の特徴は、連続成形が可能であると言うことですが、気をつけなければならないことがあります。
それは、水のような「ニュートン流体」と呼ばれるものは、絞り口と同じ太さで流れていくのですが、プラスチックの場合は、流れ出した直後に、それよりも太くなってしまいます。

ダイスウェル
こうした現象を「ダイスウェル」と言いますが、押出成形を行うときには、こうしたプラスチックの性質を考えた絞り口にしておかなくてはならないのです。

粘弾性とは
では、どうしてこのような現象が起こるのでしょうか。
プラスチックのこのような挙動を示すことを説明するためには、「粘弾性」と言うことを理解しなくてはなりません。
一般的な物質に力を加えたとき、粘土のように形が変わる物と、ゴムのように元の形に戻ろうとする物があります。粘土のように、形が変形する性質を「粘性」とか「塑性」と言います。

ダイスウェルの仕組み
一方、ゴムのように元の形に戻ろうとする性質を「弾性」と呼びます。プラスチックの場合は、力のかけ方によって、どちらの性質の表れるので、このような性質を「粘弾性」と呼びます。
先程の現象は、絞り口から出るまでは比較的ゆっくりとした力のかかり方であるので、粘性体の振る舞いをします。
ところが、絞り口から出ると一気に力が解放されるので、弾性体のように元の形に戻るような振る舞いをして、絞り口より太くなると言うわけです。
プラスチックの粘性と弾性


←内部温度を測定したプラスチックの固まりを床にたたきつけてみると、スーパーボールのように跳ね返ってきました。
二日目の実習で同じ材料の試験片を引っ張ったところ、3倍以上も伸びました。→
さて、プラスチックに関する説明はこれ位にして、今説明したことに関する実験を始めたいと思います。皆さんそれぞれの班に分かれて実験を開始しましょう。