夜明けの中池見湿地
7月26日(土)に、予定通り夏の観察会を実施しました。
朝露がおりている早朝は清々しいのですが、太陽が高くなるにつれて、気温もドンドン上がっていきました。
朝露にぬれたシロツメグサの花
時間通り、生徒が到着

活動オリエンテーション(筒井宏行学芸員)

皆さん、こんにちは。
7月に観察会をする話を聞いて、皆さんに何を観察してもらおうか考えました。
夏と言えば、まさに今日のように、強い日差しに、うだるような暑さですよね。そこで、中池見湿地の暑さを、今日の観察テーマとしたいと思います。
ところで、私の後ろ、皆さんの正面には稲がスクスクと育っていますが、こうした植物たちは暑さなどの刺激を受けて成長し、花を咲かせて、実をみのらせることは学校で習いましたか。
ちょうど今、稲が穂を出し始め、花が咲いているところです。
皆さんは、稲の花がどんなものか知っていますよね。
アレ?見たことありませんか。それじゃ、最初に稲の花を観察しなくてはなりませんね。
その前に、皆さんの目の前の田んぼをよく見てください。
背の高い稲が生えているところもありますが、背が低い場所があったり、稲がまばらにしか生えていないところがあったりしますよね。
これは、カモのイタズラです。カモが餌取りのために田んぼに入って、稲がなぎ倒され、うまく成長できなかったのです。
このこと自体は喜ばしいことではありませんが、なぜこの場所にカモが来てくれたのかと言うことを考えると、嬉しいことだと思います。つまり、カモが来たと言うことは、そこにたくさんの餌があったと言うことであり、豊かな生態系があるという証拠だと考えられるからです。
その生態系を保つために、大きな役割を果たしているのが水路です。
中池見湿地には、3本の大きな水路が走っていますが、どれも素堀りの水路で、コンクリートで固めて流れを良くしたりはしていません。
ですから、その保全のためには大変な努力が必要です。このことについては、この中池見湿地で農業に携わられ、現在は「中池見会」という組織を作って「中池見・人と自然のふれあいの里」の保全活動に協力していただいている高木さんにお話していただきたいと思います。
さて、話を最初に戻しましょう。今日のテーマは、暑さの観察です。これから皆さんには、いろいろ体験してもらいますが、その時皆さんの体がどうなるかを、よく観察してください。
最後に、今日は本当に暑いですから、熱中症にならないように注意して活動しましょう。

夏の農作業(高木 健 会長)

講師の高木さん(左)と坂口さん
皆さん、田植えは何月にしますか。大抵は4月か5月ですね。
しかし、今年は、カモのイタズラのせいで6月頃まで田植えをしていました。
皆さんは、ずいぶん遅くまで田植えをしていたなと感じると思いますが、7月頃にやっと田植えが終わると言うこともありました。
それは、この場所の水位が高いためです。小さい稲を植えても水没して育たないから、十分に大きくしてから田植えを行う必要があったのです。特に、今は住宅団地などができて埋め立ててしまいましたが、余座池見という場所では半夏生(7月のはじめ)の時期に、40pほどにも伸びた苗を、やっと田植えをすると言うのが当たり前でした。
さて、今は夏です。
これからの時期の大切な仕事の一つに「江ざらい」があります。春にも行うのですが、夏に行う「江ざらい」は、田んぼの水を抜くために行います。
「胴長」をはくところ
作業は、水路に入って行うことも多いので、、こちらの「胴長」と呼ばれる長靴を履いて行ったりもしました。
そこにたまった泥をすくい上げるために使う道具は、これで、「ジョレン」と言います。
底が少しかたかったりすると、先がスコップのようになった「クワ」を使います。
こちらがジョレン
実際の作業については、後で水路の方でお見せしたいと思います。
この作用に挑戦したいと思う人はいってください。こちらの「胴長」を10足準備してあります。
また、NPO法人ウェットランド中池見さんが、クワとレーキを10丁ずつ準備していただきました。

夏の観察会

オリエンテーションが終わり、早速観察会スタート。稲の花の観察から始めます。
田んぼの畦に散って
あぜ道をおっかなびっくり
これが稲の花
各班思のままに観察
左の民家前に植えてあるハスは切り花用のハスです。
右のハスは、レンコンを掘るためのものです。
民家の前のハスは花盛り
こちらのハスは葉っぱばかり
しっかり観察してみよう
木道に戻って辺りを見回すと、夏草が一杯。
でも、良く見比べるとおもしろいものが見られますよ。
緑のじゅうたんをよく見ると
カンガレイ
葉の中程に花が咲きます。
サンカクイ
葉の先端に花が咲きます。
イグサの仲間で、その茎の断面
から名前がついています。
木道を、さらに歩いていくと、ガマの穂が目に付きました。
下のふくらんだ部分が雌花
その先に見えるのが雄花
日本にはガマが3種類あります。その、3種類ともが自生するのは、ここ中池見湿地だけです。見分けが困難と言われるガマとコガマの違いもよくわかります。
さて、右の写真のガマの種類は何でしょうか。
中池見湿地にある3種類のガマと比べてみましょう。

ガマ

草丈は2mくらいで土地の栄養状態などによって、草丈はコガマ程度に低くなることもある。雄花と雌花の境がない。穂の色は、コガマに比べて黒くて濃い感じがします。現在、雄花は枯れてしまっている。

コガマ

草丈は1.5mくらいで雄花と雌花の境がない。雄花が雌花くらいにこんもりとしている。花期が一番遅いので、雄花がしっかり残っている。

ヒメガマ

草丈は2mくらいで葉は、かまぼこ状に、真ん中がふくらんだ感じがする。雄花と雌花が離れている。すべてがほそみで、穂の色はコガマに比べると赤みを帯びているので、優美な感じがする。


ガマの穂、観察中
答えは、ヒメガマです。
ヒメガマは、穂の形を見るとすぐに区別できます。
しかし、ガマとコガマの区別はつきにくく、正確に区別するには、花粉の形を顕微鏡で見比べる必要があります。
ヒメガマとコガマの花粉は一つ一つがバラバラで、ガマの花粉は4個の花粉が一塊になっています。

さあ!次は冒険に出発!!

中池見湿地にある大きな水路の一つ、笹鼻江を渡ります。
その先には背丈を超えるヨシ原が続いています。

まるで、アニメ「トトロ」の1シーンです。

冒険好きは男の子だけじゃありません。

ニッコリピース!!
余裕の男の子たち

いよいよ作業に挑戦!!
ひとときの冒険を終えて、作業現場に向かう生徒達
僕の前に道はない。
僕の後に道ができる。

100人が通って、できた道の跡

夏の農作業(パート2)

それでは、「江ざらい」をどのようにするか説明します。
今私は土手に立っていますが、一歩先に進むとどうなるか見てみましょう。
このように、簡単にクワが沈んでしまいます。
つまり、ここの深さは、少なくても胸あたりまであると考えられますが、クワの先にはそれ程手応えがありませんから、底なしと言ってもいいでしょう。
これから行う「江ざらい」というのは、まず、ここに生えているマコモやヨシなどを抜いて、それから、底にたまったヘドロを取り除く作業です。こうすることによって、水の通りが良くなり、排水が簡単に行えるのです。
マコモなどは、割合簡単です。根本を持って、少し揺するようにしてから持ち上げるとこのようにぬけます。
作業を見つめる真剣なまなざし
深いところにあるものは、クワを根に引っかけるようにして抜きます。
ガマなどは、しっかりと根を張っていますから、最初にカマで「根切り」をしてから行います。
さあ、皆さんも一度やってみて下さい。
挑戦開始!!
危ない!!
とれた〜!!
引き上げたマコモ

根から伸びた白いものが新芽。
かじってみると、少し甘い味がします。
女の子も挑戦!!
坂口さんの笑顔に励まされ
頑張りました。
作業の後は日陰で休憩です。
一息ついたら仮設道路を
解散場所に向けて出発!
湿原の中と違って風が吹く
ので足どりも軽くなりました。
溜め池にうつる影は涼しそう
最後のひとがんばり!
本当に、お疲れ様でした。
いつもの場所ではなく
ガード下まで避難。
一人の落伍者もなく
全員無事に集合です。
指導員の方が誘う声、同行した教員が急がせる声、聞こえていたのでしょうか。
あっちで座り込み、そこでは覗きこみ、こちらではガヤガヤと、少しも予定通りには進みませんでした。
気がつくとカメラの撮影総数は1085枚!!

小さな写真をクリックすると大きく表示します。

夏の観察会のまとめ(筒井学芸員)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか。
皆さんは、半日だけでしたが、この中池見湿地の中を歩き回りました。
汗をかいて、クタクタになったのではないでしょうか。
ところで、農作業をされる方々は、これからの収穫に向けて邪魔になる雑草を、この夏場に取り除いておかなくてはなりません。
しかし、戦う相手は田んぼや水路の雑草だけではありません。
皆さんが今日体験したように、この夏の暑さとも戦わなくてはならないのです。
ですから、夏に農作業をするときは、朝早くに田んぼに出て作業を始めます。そして、日が高くなり、お昼時刻になると家に帰って休みます。
それから、夕方になり、気温が下がるのを待って、もう一度、農作業をすると言った工夫をします。
そのようにして、毎日毎日農作業をこなしていくのです。
今日、皆さんが体験したことを通して、自然とケンカするようなことばかり考えず、どのようにしたら自然と仲良く暮らせるかを考えるきっかけになってくれたら、と思います。
最後に、暑い中指導していただいた方にお礼を述べて、中池見湿地を後にしました。

夏の観察会を実施するに当たっては、次の二つの点が懸念されましたので、学校・ふれあいの里・NPO法人ウェットランド中池見の三者で検討を進め、事故が起きないように、慎重な事前準備を行いました。今回、無事に観察会が終了できたのは、こうした事前準備があったからです。

この日の最高気温は、33.8℃を記録し、風が通る日陰に入っても31.5℃でした。
これ程の猛暑になるとは考えていませんでしたが、昨年より1週間遅れの実施と言うことで、暑さ対策は万全にする必用があるとの認識で行動しました。

温度計で気温の確認
とけたスポーツドリンクで給水中
その一つが、温度計の持参です。
温度計から得た気温の情報などをもとに、こまめに水分補給を指示し、できるだけ日陰を見つけては、そこで観察したり避難させるなどの指示を出しました。
また、学校長と教頭から凍らせたスポーツドリンクの差し入れがありました。これを、生徒一人一人に持たせて、時々首筋や脇の下を冷やすように指示しました。

こちらの方は、昨年同様の対策を行ってきました。
(詳しくは、総合学習2007・秋の観察会を参照してください。)
観察路周辺の草刈り(左から、整備前、草刈り後、当日の様子です。

しかしながら、今年は例年以上にスズメバチの活動が活発でした。
そこで、当日の早朝6時30分から、担当者1名とNPO法人ウェットランド中池見の方4名が協力し、中池見湿地全域についてスズメバチの活動状況を見て回りました。

コスズメバチのものと見られる
直径10pの巣
キイロスズメバチのものと思われる
直径12pの巣
その結果、本来予定していたコース(前回の観察会で歩いたシボラ道;日陰が多く、熱中症対策には、こちらのコースがベターであった)は、万が一の危険性が否定できないとの結論に達し、「江ざらい体験」の後、シボラ道に進まず、溜め池の横の仮設道路を歩くことにしました。