稲穂の中のミズアオイ
9月20日(土)に、予定通り秋の観察会を実施しました。
しかしながら、前日までの1週間は、台風13号の進路を気にしながら様子を眺め、実施の有無の判断が付きかねていました。
決行を決めたのは、前日(19日)の午後2時でした。
この日の12時45分気象庁発表の資料で、台風13号は潮岬の南西100q付近にあって、20日午前6時には伊豆半島付近に達する見込みであることを確認し、次いで、福井気象台の予報により、20日午前中の降水確率は20%で、心配される風については北の風3〜5m/sとなっていたことを受けての決断でした。

活動オリエンテーション(小橋宏充学芸員)

皆さん、こんにちは。
「比べる」ということをテーマにした活動も、今日で3回目となりました。
皆さんも、前回来たときに比べて、あたりの様子が変わっていることに気がついていると思います。
そうです。稲刈りが始まっていますね。
皆さんには、この後稲刈りを体験してもらうつもりですが、他に何か気がつきませんか。
私は、植物というものが、したたかだなということに気がつきました。
なぜ、そう思ったかというと、畦を乗り越えてミズトラノオが水田のほうに生えだしたからです。
植物は、水や光などの条件がそろった場所で生長します。今、畦ぎわに咲いているミズトラノオは、草刈りを待っていたかのように増え始めました。
こうしたことに気がついたのは、私が今の状況と去年の状況を比べることができたからです。
つまり、「比べる」ということは、人間からの働きかけが必要であるということに気づいてほしいのです。
こうした人の働きかけを、最も受けた植物の一つが「稲」ではないでしょうか。
早く収穫したいだとか、病気に強いものはないかだとか、冷えてもおいしく食べられるようにしたいなどという希望を叶えるために、「稲」には多くの人の手が働き、現在たくさんの種類の「稲」が育てられています。
人は、「比べる」ことによって、植物の種類を増やしてきたともいえます。
ところで、皆さんの右手のほうに小さな花が咲いていると思います。この花の名前は「サワヒヨドリ」といいます。よく見ておいてください。
これから皆さんが観察するシボラ道のほうには、「ヒヨドリバナ」という花が咲いていますので、指導員の方に教えてもらってください。
サワヒヨドリ
名前からもわかるとおり、非常によく似た花です。
よく似た花であってもその名前が違うということは、誰かが花の付き方、花の色、花にある雄しべの数といったものの違いを順番に比べ、その結果を学会で発表し、広くみんなに認知されたということです。
ここまでくわしく比べる必要はありませんが、皆さんもデジタルカメラをうまく利用しながら、その違いを考えてみてください。
これを、今日の課題としたいと思います。

課題をもう一つ(笹木 進 指導員)

今、小橋学芸員から「サワヒヨドリ」と「ヒヨドリソウ」を比べてみようという課題が出されましたが、今シボラ道には「ヒヨドリソウ」の他に、「キンミズヒキ」という花もたくさん咲いています。この花がそうなんですが、これに似た花に「ヒメキンミズヒキ」という花が咲いています。
見分けるポイントはというと、雄しべの数です。「キンミズヒキ」のほうは雄しべの数が10本以上見ることができますが、「ヒメキンミズヒキ」はというと、5本ほどです。
この他にも、草丈や花の大きさなどにも違いがあります。
この他にも、似ているけどチョット違うぞというものがあります。そういうものを見つけたら声をかけてください。
キンミズヒキ
確かに雄しべの数が多く
10本ほどはある

秋の農作業(高木 健 会長)

講師の高木さんと坂口さん
秋といえば、収穫の時期です。
皆さんには、コンバインという機械を使って稲刈りをする様子になじみがあると思います。
しかし、ここ中池見湿地では機械を使うことができません。
ですから、ここでは稲を手で刈っています。そして、それをハサ掛けして乾燥してから脱穀するのです。
皆さんには、目の前にある「イクヒカリ」という品種の稲刈り体験をしてもらいますが、その前に、脱穀に関して説明したいと思います。
足踏み脱穀機
皆さんは、これが何かわかりますか。これは、足踏み脱穀機といって刈り取って乾燥した稲から籾を採る機械です。
使い方はこんな感じです。

この足踏み脱穀機で籾を採るのですが、同時に、ワラくずなども籾に混じります。
そこで使われるのが、この唐箕と呼ばれる道具です。
唐箕
ハンドルを回すと羽根が
回って風が起きる。
上の受け皿に脱穀した籾を入れて、口を開けると籾が下に落ちていきます。
唐箕の使い方
この時ハンドルを回して風を送ると、軽いワラくずは前の吹き出し口から飛び出し、実の詰まった籾はそのまま落ちて、手前の取り出し口から出てくるという仕組みです。
こうした仕組みを持つ機械を、風力分級機と言います。
コンバインの処理胴の仕組み

ところで、話をコンバインに戻したいと思いますが、コンバインは刈り取りと脱穀を行う機械です。
一見複雑な機械のように思うかもしれませんが、その中の仕組みは、ここで紹介した脱穀機と唐箕が上手に組み込まれているだけなのです。その違いはというと、人力でやるかエンジンを使うか位でしょうか。
(参考)
http://www.iseki.co.jp/products/combine/comb-HPS2.html
さて、説明はこれ位にして、さっそく「イクヒカリ」の稲刈りを体験してもらいましょうか。

稲の結束の仕方

@刈り取った稲を、株のところで交差するように置く
A交差したところにワラを通して交差する
B稲穂を振って一回転させてワラを一ねじりし、端の方をワラにねじ込み完成

ハサ掛けの仕方

束ねた稲の股を割りく
束ねた稲をハサ竹に掛ける
下から順番に、隙間なく
ハサ掛け終了
ミズアオイ畑になった水田

稲刈り体験の後は、各班に分かれての観察会です。
各班が、思い思いの場所に分かれて、思い思いの観察をしています。
仕切りの中にあるのは、「トチカガミ」と「ヒツジグサ」です。
よく似ているけれど少し違うでしょ。

何を見つけたのかな?
「ツユクサ」のようですね。

マムシがいたようです。
みんな気をつけて!!

ヒヨドリバナを
見つけたようです。
スズメバチ発見!!
慌てず静かに進みましょう。

あたりに注意して通りましょう。
足早に通り過ぎていきます。

慌ただしい中でも
しっかり観察してます

早く着いた人はいつもの場所で待機
でも、最後のひとがんばり!

本当に、お疲れ様でした。
小雨がぱらついたのでガード下まで避難。
全員無事に集合です。
指導員の方が誘う声、同行した教員が急がせる声、聞こえていたのでしょうか。あっちで座り込み、そこでは覗きこみ、こちらではガヤガヤと、少しも予定通りには進みませんでした。気がつくとカメラの撮影総数は1469枚!!

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秋の観察会のまとめ(小橋学芸員)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか。
最初にでした課題、「ヒヨドリバナ」と「サワヒヨドリ」の違いがわかりましたか。
まず、花の色ですが、「ヒヨドリバナ」は純白ですが、「サワヒヨドリ」は赤みがかった花をしていましたね。
また、茎の色も、「ヒヨドリバナ」は緑色であったのに対して「サワヒヨドリ」のほうは、こちらも赤かったと思います。
さらに、生育していた場所をよく見ると、「ヒヨドリバナ」は、どちらかといえば乾燥している場所であったのの対し、「サワヒヨドリ」は、その名前にあるように湿気の多い場所であったのではないでしょうか。
さて、今は「ヒヨドリバナ」と「サワヒヨドリ」を比べてみたのですが、「比べる」ためには比べるものを目の前に置いたり、イメージしたり、バラバラにしてみたりと、エネルギーが必要ですね。そして、「比べる」という作業の先には、「選ぶ」であったり、「決める」などの作業があります。
実は、こうした一連の作業は、これから皆さんに求められているものだと思います。
この中にはサッカーをしている人もいると思いますが、一つ一つのプレーの中で、例えばどこへパスを出すかということ一つをとってみても、いくつかあるパスコースを比べて、その中で一番効果的なパスコースはどれかを選んで、パスを出しているわけです。
この中池見湿地で行った事前観察を通しての「比べる」という体験は、これからの人生の中で起こる「比べる」という作業の練習でもあったと思います。
今日は、稲の手刈りを体験してもらいましたが、最近の稲刈りはどこでも機械を使って行っています。この機械もこのまま石油の値段が上がっていったら使えなくなってしまうかもしれません。機械が使えなくなったら、稲刈りができませんから、食べ物がなくなってしまうのでしょうか。
そんなことはありませんよね。効率は悪いけれど、生き残る術があることを今日知ったわけです。
人には、「これしかない」という力強さもありますが、「比べる」ことによって知る力強さもあるはずです。
今日、皆さんが体験したことを通して、どのようにしたら自然と仲良く暮らせるかを考えてほしいと思います。

鳥の羽で比べてみよう(吉田一朗指導員)

皆さんの中には、野生の動物の姿を見てみたいと思っている人も多いと聞きました。
しかし、動物は植物のようにジッと立ち止まって待っていてはくれません。ですから、その姿を捉えることは難しいです。
ところが、見ることはなくても、そこに間違いなく動物がいたことはわかります。
例えば、足跡があったり、フンが残っていたり、何かを食べた跡が残っていたりするからです。
今日の観察会で私はふたつの羽を拾いました。
茶色の羽は多分キジの羽だと思います。
そして、こちらの黒い羽はわかりますね。
そうです。カラスの羽です。カラスの羽を見つけたら、このようにチョットにおいを嗅いでみてください。抜け落ちて間がないものだと、カラス独特のにおいがするはずです。これは、においを嗅いでみればすぐにわかると思います。
さて、この鳥の羽ですが、膜でできているわけではありません。
ですから、バサバサになっている羽でも、羽繕いをしてやればきれいな羽になります。
また、同じ鳥の羽といっても、どの場所に着いていた羽かによって、羽の飛び方が違います。
鳥の羽を見つけたら、こんなこと「比べて」ください。

植物を比べてみよう(笹木智恵子指導員)

今日の観察会では、各班がテーマをもって参加してくださったようですね。
私に班では、「ミクリ」がテーマだったようです。
ここにあるのが「ミクリ」なんですが、これにも「ナガエミクリ」というもう一つの種類があります。
実は、この区別がなかなか難しいのです。
皆さんで、この区別が付くように頑張って「比べて」みて下さい。
ところで、この観察会で「アキノエノコログサ」を紹介したところ、穂の色が違うものがあることに気づいた人がいました。
「アキノエノコログサ」は緑色をしているのですが、茶色というか紫色をしたものがあったのです。こちらの方は「ムラサキエノコログサ」といい、この他にも黄色い穂が直立したように付く「エノコログサ」という種類もあります。
一番手前は緑色をしていますが、その奥に見えるのは茶色く見えます。
しっかり「比べて」みないとわかりませんね。
赤い花のようなゴンズイの実
最後にこちらを見てください。
これは何に見えますか。
一見すると、赤い花のようですが、これは「ゴンズイ」という木の実です。もうしばらくするとこの赤いガクの部分が落ちて黒い木の実だけになります。
秋は実りの季節といいますが、今日の観察会では、多くの植物の実も観察できたのではないでしょうか。

秋の観察会を実施するに当たっては、次の二つの点が懸念されましたので、学校・ふれあいの里・NPO法人ウェットランド中池見の三者で検討を進め、慎重な事前準備を行いました。
今回、無事に観察会が終了できたのは、こうした事前準備があったからです。

いつの観察会でもそうですが、野外活動は天気次第です。
今回は、台風13号の接近で気を揉む日が続きました。
特に心配したのが風の影響でした。
観察路は、歩くための手入れは、草を刈ったり、土留めを作ったり、今回のように、あえて草を刈り残したりするなど、観察目的に合わせて行っています。
しかし、強い風が吹くと、枯れ枝が落ちてきたり、倒木の心配が出てきます。
観察会を行っている中池見湿地、その中でも湿地エリアと呼ばれる部分はNPO法人ウェットランド中池見をはじめとするボランティアによる整備が主です。したがって、観察路周辺まで手を広げた整備がなかなかできない状況にあります。
このため、もし台風が通過しても、吹き戻しの風などの影響が大きい場合は、校内における講習会に切り替える準備をしていました。
幸いなことに、当日に至るまで強い風が吹くことはなく、当日の早朝に行った観察路確認においても倒木や枯れ枝の落ちる心配はなさそうということで、予定通りの行動ができました。

前回も報告したとおり、スズメバチ対策は、昨年と同様に行ってきました。
(詳しくは、総合学習2007・秋の観察会を参照してください。)
今年の夏までは、例年以上にスズメバチの活動が活発で心配されたのですが、お盆を過ぎた頃から沈静化しました。
また、ふれあいの里の近く(天筒山に向かう林道脇)で、スズメバチの巣が駆除されたという情報もあり、少し安心して観察会に臨みました。
しかしながら、観察会が始まってみると、スズメバチと3回遭遇することになりました。
最初の遭遇が一番危険な状態であったと思いますが、観察路脇の草藪にエサ取りのために5分間スズメバチが徘徊していました。ちょうど、その横を生徒が通過中であったので、指導員がスズメバチと生徒の間に立ってスズメバチの行動を観察するとともに、後続の指導員と声を掛け合って、生徒をその場から素早く退避させました。
後の2回は上空通過を目撃しただけなのですが、最初のことがありましたので、その行方について十分注意しての行動となりました。
スズメバチは、巣から約10mほどのテリトリーを持っているということです。
もし、この圏内に入った場合は、警戒役のハチが出てきて「カチ、カチ」という音を立てて侵入者に対峙するとのことです。こうなってしまった後は、後ずさりして警戒範囲の外に出るしかありません。
こうした状態にならないようにするには、観察路の10m圏内に巣を作らせないことです。
だからといって、観察のの10m圏内全てが整備できるわけではありません。また、スズメバチにとっても人間は危険な存在であり、特別な事情がない限り、スズメバチのほうでも安全なすみかを作ろうとしています。
こうした、人間と動物が譲り合うゾーン(お互いを尊重するゾーン)を介して、人間が生活するゾーンと動物たちが暮らすゾーンを持つことが重要です。そして、この人間と動物が譲り合うゾーン(お互いを尊重するゾーン)が、いわゆる里地・里山と呼ばれる地域なのです。
現在、人と自然の共存が大きく叫ばれる時代となってきました。こうした時代だからこそ、危険な動物(今回の観察会でもスズメバチの他にマムシらしきものを見かけましたし、イノシシの足跡もありました)がいるから近づかないのではなく、こうした動物とどのように接していけばよいのかを学んでいく必要があると思います。
こうした意味において、環境省の行う環境調査「モニタリングサイト1000」で、里地・里山のコアサイト(重点調査地域・調査研究拠点)となっている中池見湿地で行う本校の自然観察活動には、大きな意味があると考えています。
とは言え、事故が発生しては元も子もありません。
今後も、ふれあいの里やNPO法人ウェットランド中池見の方々の協力を仰ぎながら、万全の注意を払って活動を続けたいと考えています。