11月15日(土)に、予定通り冬の観察会を実施しました。
冬前のこの時期は、時に大荒れの天気になることがありますので少し心配しましたが、曇り空の下での活動となりました。前日は小春日和で、少しあせばむほどでしたので、この日の気温は少し寒く感じられたかもしれません。
ところで中池見湿地での観察会は、この日が今年度最後と言うことで、「中池見・ふれあいの里」入り口に集合した後、学校長より激励の言葉を頂きました。

激励の言葉

激励の言葉を掛ける学校長
皆さんが取り組んでいる総合学習「ふるさと敦賀塾」は、『楽しむ』という言葉をキーワードにして活動しています。しかし、ただ楽しめばよいのかというとそうではないはずです。
この取り組みが、総合学習としてふさわしいものかどうかは、皆さんがこの1年間に何を得たと感じられるかにかかっています。
「たくさん学べて楽しかった」というのであれば来年も続ける必要がありますが、「何をしていたのか解らない」というのであれば来年は止めてもいいですよね。
今日は、中池見湿地最後の実習です。悔いの残らないような一日にしてください。

ビブス着用

色とりどりのビブス
さて、今回から工夫したことに、各班おそろいのビブスを着ることがあります。
これは、観察指導員の方からの「担当している生徒をわかりやすくしてほしい」という要望を受けて、実施されたものです。
今年度は、観察指導員の方からいろいろな要望が寄せられるようになりました。これは、活動が二年目を迎え、それぞれの持ち分が明確化したことによるものだと思います。また同時に、学校担当者と観察指導員の方々とが気安く話し合える雰囲気になってきたからでもあります。
継続することの良さが、少しずつ現れてきたように感じています。

活動オリエンテーション(小橋宏充学芸員)

4月に始まった観察会も、今日で4回目となり、今年度最後の観察会です。今年は「比べる」ことをテーマとして様々な活動に挑戦していただきました。
私の後ろの景色も、ずいぶん変わりましたね。もうすぐ降る雪に向けて、植物たちは茶色や黒と言った、寂しい感じの彩りになり、動物たちの動きも少なくなってきます。
でも、全てのものがジッとしているのではありません。それぞれが、春に向けた準備を行っているのです。皆さんが、この1年間学んできた伝統的な農作業においてもそうです。
この後ここにあるものが何かを説明していただくのですが、こうしたものを作るという作業を農作業が出来ない冬の間に行われていたのです。
このような、春に向けた冬の営みというものを、今日は五感を十分に働かせて観察していきたいと思います。そこで今年も、皆さんが中池見の様々な様子を比べて見えてきたことを、五・七・五の言葉でまとめてみましょう。
そう、俳句の形ですね。去年も質問しましたが、この敦賀の地に訪れた有名な俳人は誰ですか。
そう、松尾芭蕉ですね。気比神宮で詠まれたのは

「月清し遊行の持てる砂の上」

気比の松原での月見を楽しみにしていた芭蕉さんが、あいにくの雨となって詠まれたのが

「名月や北国日和定なき」

そして舟で渡った色浜で詠まれた

「波の間や小貝にまじる萩の塵」

など、たくさんの句が残されていますね。
俳句というのは、世界で最も短い表現(詩でありエッセイ)です。この俳句の魅力は、言葉自体の味わいというものも大切なのですが、言葉にならないことも感じる、あるいは感じられるという点も大切なポイントではないでしょうか。
つまり、俳句を楽しむためには、表現に使われる言葉によって描き出される情景を想像する力が必要なわけです。これは、自然を「みる」ときにも大切なことです。
花や緑は少なくなっていますが、それでも花がなくなったわけではありません。緑が少なくなりましたが、紅葉が見事ですし、ドングリなどの木の実を見つけることも出来るはずです。
また、イノシシの踏み荒らした後など、動物が何か行動することによって生じた変化というものも見つけることが出来るはずです。こうして目に入るものに対して、そこにはどのようなメッセージがあるのかを想像してみましょう。そうすれば、きっと芭蕉さんに負けないような、おもしろい俳句が出来ると思います。

冬の農作業(高木 健 会長)

前回、皆さんには稲刈りとハサ掛けを体験してもらいました。その後、脱穀、籾すりをして、今はお米に仕上がっています。
皆さんの学校にも、こうして出来たお米を「中池見・人と自然のふれあいの里」の方から、少しだけお分けできると思いますので、楽しみにしていて下さい。
さて、出来上がったお米は、今も昔も米俵に入れて運ばれます。現在は、運搬が楽なように、30sで1袋になっていますが、その前は1俵は60sでした。
一升枡で10杯で一斗
すり切れにして4斗で1俵
その前はと言うと、一般の家にハカリと言うものがありませんでしたので、升を使って量を決めていました。これが一升枡で、これで10杯の米をすくい取ると、この一斗枡がいっぱいになります。それを、この棒を用いてすり切りいっぱいにして、4杯入れると1俵になります。
さて、米を入れる袋ですが、今は売られているものを使いますが、こうした枡を使っていた時代には、自分で作らないと手に入りません。その材料となるのが、籾を採った残りの稲ワラです。これは、主に農家の女性の仕事だったのですが、槌と呼ばれる道具で稲ワラをたたいて柔らかくして、それを編んで俵を作っていました。稲ワラで作られたものはこの他にもたくさんあります。
蓑にも種類がある
現在は機械化が進んで農作業も楽になり、天気が悪い日まで農作業を行うこともなくなりましたが、機会がない時代は天気にかかわらず、その日のうちにやるべきことはやり遂げなくてはなりませんでした。当然雨の日もあるので、その時に使う蓑と呼ばれるものも作り、ボッチ笠と呼ばれる笠をかぶって仕事をしました。
蓑の着方
後ろ姿
タマゴ
これに似たものに、タマゴがあります。これは、山に薪を取りに行ったときなど、背中に荷物を担ぐときに使うものです。
木肌引き
こうした山仕事は男の仕事であり、炭を焼いたり、木を切り出したりもしました。切り出した杉の皮をむくときには、台所にある皮むき器を大きくしたような、ここにある道具を使っていました。
今でも使うものには、カゴがありますが、このようにリュックサックのようにして使えるものもあります。
いろいろなワラ細工
さて、今も使われているものと言えば、ゾウリがあります。
このゾウリと時代劇などで見かけるワラジの区別がつかないという人がいるのではないかと思いますので、ここに持ってきました。
ゾウリ(右)とワラジ
ゾウリは鼻緒に足をつっかけて履くものです。
ずいぶん昔の話になりますが、私たちが小学校に行くときに履いていました。遠足に松原まで行くと言うときには、傷むと困るからと言うので、換えのゾウリを持って歩いていったものです。
これに対して、ワラジの方は、足に密着するようになっており、長い距離を歩くときや山仕事など重労働をするときに、簡単に足が脱げないようになっています。今日は、冬の農作業と言うことで話をしました。
冬の農作業は、外に出て何かするわけではありませんが、冬にしかできない、次の季節、さらにその次の季節を見据えた仕事がを行う時期であったわけです。
こうした準備には、身近にあるものは何でも利用しました。当然、普段の生活の中でも、使えないからと言って簡単にゴミにしてしまうと言うことはなく、何かに使えないかを考えながら生活していたのです。
今、こうした農家の生活というのを見直す時期に来ているのではないでしょうか。
開講式の後は、冬枯れした「中池見・人と自然のふれあいの里」の園内を、もう一つの講習場所に向けて班毎に移動しました。

野鳥の標識調査について(吉田一朗 指導員)

今から、鳥の標識調査について話をしたいと思うのですが、その前に、皆さん、目を閉じて静かに耳を澄ましてみてください。どうですか。
一見すると、どこにも鳥はいないように思うヨシ原ですが、いろいろな鳥の声が聞こえたと思います。何種類くらい聞こえましたか。
3種類くらい聞き分けられた人は、才能があります。私と一緒に鳥の調査に加わってほしいくらいです。
鳥は、茂みに隠れていますから、直接見ることができませんから、その声で鳥の種類を判断する必要があります。
まず、「ヒー、ヒー」という声が聞こえたのではないかと思いますが、どうでしたか。この声の持ち主は「ベニマシコ」という鳥です。
ベニマシコは15センチとスズメよりもやや大きくて尾が長く、日本では北海道や下北半島でも繁殖しているそうです。ここ中池見湿地には冬によく見られ、ヨシ原で赤い鳥を見たといえばベニマシコのオスと言うことになります。これに対して、メスはほんとうに地味でスズメのようです。
次に、「チッ、チッ」という声が聞こえた人がいると思いますが、どうですか。こうした声は良く耳にし、この鳴き声はなんという鳥ですかと良く聞かれたりしますが、鳴き声だけで言うと、カワラヒワ、ツグミ、セキレイなどなど、いくつかの鳥の名前が浮かび特定しづらいものの一つです。
しかし、この状況から判断すると、「ウグイス」ではないかと思われます。ウグイスと言えば「ホーホケキョ」というさえずりが有名ですが、普段は「チッ、チッ」と地鳴きという鳴き方をしています。
春になって「ホーホケキョ」というさえずりを聞いて、ウグイスがやってきたという人がいますが、実は、身近なところにウグイスは生活しているのです。
さて、三つめは「ジィー、ジィー」と言う声が聞こえたのではないかと思います。残念ながら、この声の持ち主の候補もたくさんあり、この状況から判断するのも困難です。ですから、この鳴き声の主がどんな鳥かは、実際に鳴いている鳥を見つける必要があります。しかし、鳥は動き回る生き物であり、中には遠くまで移動することだってあります。
こうした行動力のある動物の生態を知る調査の方法には、「標識調査」という方法があります。
これは、動物を一度捕獲し、何か目印になるものや発振器をつけて再び放すという方法です。目印がついた動物が再捕獲されたときの日時や場所のデータなどから、その動物の行動を推測しようというわけです。
ここで皆さんに注意したいことは、日本の法律では、ほ乳類や鳥類の捕獲は原則禁止されていると言うことです。皆さんが、こうした調査を行いたければ、専門の調査員の指導を受けながら行う必要があります。
中池見湿地は、渡りの中継地点として重要な場所ではないかと言うことで、鳥類の標識調査を行ってきました。標識調査を行うためにはたくさんの人出がかかります。
せっかく捕まえた鳥を殺してしまったのでは目的を達成できませんから、1時間に1回は網場の見回りをしなくてはなりません。また捕まえた鳥は、1羽1羽袋に入れて調査基地に持ち帰り、それぞれの鳥について、種類や特徴を調べた後、足輪をつけて放鳥します。
調査のための道具類
足輪
鳥の体重計
ところが福井県には、私を含めても、鳥の標識調査員の資格を持っている人が4人しかいません。そのために、ここにおられる観察指導員の方の力を借りたりしているのですが、実際の調査にあたっては、県外の方にも声を掛け、普段はお金をもらって標識調査をされている人にもボランティアで調査の協力を御願いしたりしています。
しかし、大変なのはそれだけではありません。先程、ほ乳類や鳥類の捕獲は原則禁止されていると言いましたが、鳥を捕まえるためにはこのような網を張る必要があります。
取り扱い注意の「カスミ網」
私は鳥類の標識調査員の資格があるので、こうした捕獲用のカスミ網を張ることが出来るのですが、この網は「カスミ網」と言いますが、この網は一般の人は持っているだけで逮捕されてしまいます。
この網を張るためには様々な手続きが必要です。まず、環境省に調査の申請を行わなくてはなりません。次に、標識調査を取りまとめている山階鳥類研究所から、カスミ網などの調査用具を借りなくてはなりません。
そして、調査を行う場所の地権者、中池見湿地であれば敦賀市の許可を受けて、地元の警察にはカスミ網を張ることを届け出て調査しているのです。
このように手間のかかることをしてまで、なぜ「標識調査」をしなくてはならないのかというと、鳥の生態を知ることも大切なのですが、この中池見湿地というものの価値を知るためでもあると思います。
今年も10月上旬に大がかりな調査がここで行われました。この調査を通して捕獲された鳥の数は700羽に達しましたが、その内の500羽は「ノジコ」という鳥でした。
このような話を聞くと、中池見湿地はノジコだらけで、ノジコという鳥はそんなにたいしたことがない鳥なのかというと、そうではありません。
中池見湿地のあちこちに咲いているオオニガナが絶滅危惧種であるように、ノジコという鳥も実は準絶滅危惧種に指定されている鳥なのです。
これまでの調査では、この他にも「マキノセンニュウ」という鳥が捕獲されています。
これまでは、福井県にいるかもしれないけれど、本当にいるかどうか解らない鳥として扱われていました。しかし、ここでの調査で何度か捕獲されていますので、福井県にいる鳥として扱われることになるでしょう。
捕獲されたマキノセンニュウ
そうなれば、福井県の絶滅危惧種に指定されるのは間違いないと思われます。
レッドデータブックという言葉を聞いたことがあると思いますが、ここに指定されている絶滅危惧種と言われるもの達は、自然の全てを我々が理解して決められたものではなく、我々が理解した中でしか決められなかったものです。
中池見湿地では、この他にも赤外線カメラによる動物の調査を行っていますが、そこにはマミチャジナイが写っていたり、カモの行進が記録されたりしています。
私は、鳥の専門家としてこの場に立っているのですが、実際に調査を続けているこの中池見湿地についてさえも、ほんの一部しか見られていないような気がします。皆さんには、皆さんの視点でこの中池見湿地の素晴らしさを観察してほしいと思います。

指導員の方を中心に、いよいよ中池見吟遊がスタートしました。
最初に訪れたのは、標識調査を行ったときの網場の跡です。
足跡発見
タヌキの足跡でしょうか
いつも通りシボラ道を歩きましたが、途中湿地の中へも入りました。もう少し早い時期であれば、オオニガナや、キセルアザミの花で満開だったのですが、この日は、みんな綿毛をつけていました。
さらに先に進むと・・・
緑の葉っぱの中に赤色発見
みんなが一斉に群がりました
フユイチゴです
当然、試食しました
この木何の木?
よ〜く見て
これだ!!
用意していたチャートを参考に調べました。
切られた枝からキノコが
女の子の方が元気かも
葉っぱの草笛にも挑戦
ビブスが保護色になっています
指導員の方が誘う声、同行した教員が急がせる声、聞こえていたのでしょうか。
あっちで座り込み、そこでは覗きこみ、こちらではガヤガヤと、少しも予定通りには進みませんでした。
気がつくとカメラの撮影総数は846枚!!今回はちょっと少ないかな。イエイエ、俳句(?)も作りましたからね。
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俳句をひねろう

集合場所に着いた班から、俳句の清書をしてもらいました。
考え中
このイメージなんだけど・・・

お披露目

それぞれの班の代表者が出来上がった歌を披露してくれました。

冬の観察会のまとめ(小橋学芸員)

今発表していただいた歌を聞いていて、皆さんそれぞれが、楽しい中池見の観察ができたのではないかと感じました。
私たちは「春夏秋冬」という表現をします。すると、どうしても春が最初に来て、冬でお終いだなという感じになってしまいます。
ですが、今日の観察会で何を感じましたか。今はまだ冬と言うには早すぎるのかもしれませんが、それでも様々な営みを感じてもらえたと思います。
冬は決して終わりの季節ではなく、何かを準備する季節なのではないでしょうか。
例えば、アカガエルたちは2月になると雪をかき分けて産卵にやってきますし、農作業もそうでした。
今年度の自然観察活動はこれで終わります。しかし中池見湿地は、これからも何かしら変化し続けていきます。
皆さんも、この冬の季節に何かしら成長してほしいと思います。そして、この中池見湿地でまたお会いしたいと思います。

実習を終えるにあたって

本年度の総合学習はこれからも続きますが、中池見湿地での観察実習は本日が最後となります。ここで、この1年間お世話になった学芸員の方々と指導員の皆さんにお礼を述べたいと思います。
皆さん、本当にありがとうございました。
そして、最後に一番お世話になった方、そう中池見湿地さんにも挨拶しましょう。
1年間ありがとうございました。ご指導ありがとうございました。
挨拶後も、名残惜しそうに中池見湿地を見つめる目がいくつかありました。
学校では得難い貴重な経験が、生徒達に何かを感じさせたのではないかと思います。
本当に、1年間お世話になりました。

観察指導員の皆さん、ありがとうございました。

本校の活動に対しては、多くの方々の協力があることは、何度も紹介しているところです。
すぐさま、新しい木道を
設置し直して頂きました
網場跡の木道の上に足跡発見
「中池見・人と自然のふれあいの里」の学芸員の方には、岐阜県立森林文化アカデミーの小林毅教授はじめインタープリテーション研究室の方々と連絡を取り合い、より良い観察会にするための企画運営にあたっていただきました。
その一方で、観察指導員の方々には、観察会が始まる2時間前から会場入りしていただき、観察コースの下見や準備をしていただきました。

今回の目玉の一つ「カスミ網」の設置

はじめはこのようなヤブ
カヤを踏んで地ならし
最後に網を張って準備完了
こうした目に見えない下支えがあっての観察会でした。
その成果でしょうか。昨年までは気持ち悪くて写真を撮るのも嫌がっていたものにも、2年生や3年生がリードするようにして、記録に残してくれました。
今回の観察会の途中で生徒が見つけたのはモズのハヤニエでした。
各班が激写したハヤニエ
10月30日(木)に東京新聞(中日新聞東京本社)の竹上記者から、『東京新聞の日曜版「サンデー版」に「大図解」というコーナーがあり、11月16日付のテーマを「子どもも大人も科学と仲良く!」として、「理科・科学離れ」とその対応策などを紹介する予定している。その中でサイエンス・パートナーシップ・プログラムについても取り上げる予定であり、本校の活動の様子を写した写真を新聞掲載用に貸していただきたい。』という内容のメールを頂きました。
この申し出は願ってもないことでしたので、お引き受けしたところ、上のような記事として紹介していただきました。

当然こちらでは、中日新聞の日曜版として見ることができました。