活動オリエンテーション(小橋宏充学芸員)

皆さん、こんにちは!
中池見湿地を舞台にした活動もいよいよ3年目に入りました。当然3年生にとっては体験済みの風景が広がっていると思いますが、2年生にとっては初めての春の風景であり、1年生にとっては全てが初めてとなる風景だと思います。
さて、今年の活動のキーワードとして、皆さんに「伝える」と言う言葉を示したいと思います。身の回りを見渡すと、様々なものが私たちに自然の息吹を伝えてくれていることがわかります。
この図柄は?
例えば、この手ぬぐいですが、ここに描かれている図柄がわかりますか。少し遠目ですから、わかりにくいかも知れませんね。答えを漢字で書くとこうなります。
「目高」、そう「メダカ」です。カタカナで書かれるとすぐに思いつくのですが、漢字で書かれると何だかわからなくなりますよね。でも本当にそうなのでしょうか。
答えはこちら
今、中池見湿地ではたくさんのメダカを見ることができます。それと同時に、ギンブナも見ることができます。これを昨年度のテーマではないですが、よく見比べてみてください。
注目すべきポイントは目の位置です。そうすると、昔の人が「目高」と書いた意味が良くわかります。
確かに、メダカという魚を見たことがあって、その魚の名前を知っているならば、カタカナで書かれた方が読みやすいですよね。
しかし、その魚を見たことのない人であったり、その魚の名前を知らない人であるならば、カタカナで書くより漢字で書いた方が、その魚の様子がよくわかりませんか!?今年のテーマである「伝える」という観点から見ると、同じ魚の名前を書いても、これだけの違いがあるのです。
ところで、今日の観察テーマは「タンポポさがし」としたいと思います。一見すると、同じように見えるタンポポですが、実はたくさんの種類があります。この違いを見比べながら、どのようにこのことを伝えたらよいかを考えてみてください。

春の観察会に向けて  福井県海浜自然センター 多田雅充 館長

今日は、本当によい日和になりました。
巡ってみたい場所は・・・
私がつとめる福井県海浜自然センターは、若狭湾に面した風光明媚な場所に建ち、近くには、ラムサール条約に登録されている三方五湖もあります。
さて、私事になりますが、この4月から敦賀に住むことになりました。私にとって5番目の居住地であり、5番目のふるさとにしたいと思い、敦賀の良いところをあちこち巡ってみたいと考えています。皆さんの手元に資料があると思いますが、そこに書いてある場所が、その候補です。当然、この中池見湿地も入っています。
中池見湿地の素晴らしさは、皆さんがこれまでに学習されてきたことなので、この素晴らしい中池見湿地の自然を守る活動に焦点を当てて話をしたいと思います。
今、環境保護というと、皆さんが目の前にしている環境に大きな注目が集まっています。こうした場所を「里地・里山」という呼び方をしています。
かつては、尾瀬であったり、白山や立山と言った、人が手をつけていない場所を守ろうという運動が活発でした。こうした活動のおかげで、そうした場所を無闇に開発しようなどと考える人が、今はいなくなったからです。
その一方で、皆さんの目の前に広がる風景がどんどん減ってきています。里地・里山を守る事の難しさの第1の要因は、放っておくと変化すると言うことです。
変化する里地・里山
尾瀬や白山・立山の自然は放っておいてもあまり変化しませんが、水田であった場所も放っておくと、2~3年で草原になり、やがてはヨシ原へと変化していきます。さらに時間が経つと、そこにもありますが、ヤナギの木などが生えてきます。 第2の要因としては、こうした里地・里山を守るという仕事が、収入に結びつかないと言うこともあります。つまり、里地・里山を守るためには、自然を守るボランティアの存在が必要だと言うことです。
総合学習の今年度のテーマは「伝える」と言うことだそうですが、生物の多様性にあふれた、かけがえのない里地・里山の自然を、自分の子どもや孫に残すと言うこともまた「伝える」と言うことであり、こうした取り組みを考えられた先生方は、皆さんに自然を守り伝える人になってほしいという願いがあったのではないでしょうか。
そこで皆さんに課題を出したいと思います。それは、「違いのわかる人」になってほしいと言うことです。単なる草、単なる木という認識では、こうした里地・里山の自然の素晴らしさは伝わりません。外来種と在来種の違い、人工林と自然林の違い、普通種と稀少種の違いを感じてほしいと思います。
そして、自然の中で過ごすことの楽しさを感じてください。私の話はこれで終えて、皆さんには十分に観察をしてもらいたいと思います。

オリエンテーションが終わり、早速観察会スタート。
園路周辺には、たくさんのタンポポが咲いていましたので、思い思いに観察していきました。
タンポポの花
手の上にあるこれが一つの花です
在来種と外来種の違いは?
見出すと止まりません
やっぱりこう言うのも見つけ出しました

中池見湿地でよく見かけるタンポポは

セイタカタンポポ
シナノタンポポ
クシバタンポポ
カンサイタンポポ
ふと気がつくと、湿地に分け入り、水たまりをのぞき込む姿がありました。
オオコオイムシを見つけたようです
小さなエビもゲット
これをきっかけに、みんなの視線は水の方に向かいました。
アメンボの足は細いのに影が大きい
メダカ発見
カラスガイも登場
スペシャルゲスト登場
あれ? あそこで何かやってる
メダカを捕ってる
もう一度網ですくって
より分けて
のぞき込んだぞ
何をしてるんですか?
私たちは、メダカの研究をしています
オスとメスで、こんなに違いますよ
どれ、どれ
背中の太い線

メダカの特徴は・・・

メダカは水面近くを群れで泳ぐ、日本で一番小さな淡水魚です。大きな目が特徴で、体を見ると、背中が平らで口が上を向いています。上から見ると背中に金色の太い線があります。
メダカのオスとメスを見比べてみましょう。
オス
メス
背びれに切れ込みがある
背びれの形
背びれに切れ込みがない
しりびれが平行四辺形で大きい
しりびれの形
しりびれの後ろの方が
せまくなっている
スマートな形
体型
腹に丸みがある

もう少し、メダカの説明をしましょう

メダカは、青森から沖縄にかけて分布しています。
私たちは新潟から来たのですが、私たちが良く目にする北にすんでいるメダカは、あまりカラフルではなく、どちらかと言えば白っぽい感じがします。
それに対して、南の方にすむメダカはカラフルで、オレンジ色が目立ちます。
メダカは、地域によって姿形が違っていて、この中池見湿地にいるメダカは、どちらかと言えば南の方に住むメダカの仲間と言うことになります。

こちらの皆さんは、新潟大学大学院自然科学系環境共生科学系列の院生の木曽晋也さん、鈴木雄也さん、中田翼さんの3人です。(五十音順)
皆さんは、新潟大学の山平寿智(やまひら・かずのり)准教授が行っておられる「地球温暖化に対するメダカの応答に関する研究」の一環として、この中池見湿地に調査・最終に来られていました。
この研究の内容を簡単に説明すると、次のようになります。外界の温度に従って体温が変化する生物を変温動物と言いますが、こうした生物は、温暖化に対して敏感に変化するのではないかと考えられました。そこで、野生のメダカをモデルとして、日本各地のメダカの様子を観察調査することにより、気候の変化に対してメダカの姿形がどのように変わるのか(北と南のメダカの比較)、姿形が異なるメダカの遺伝子などを調べることによって、本当に気候の変化によって姿形が変わってきたのか、そして現在もどのように変化しているのかを解明していこうとなされています。

山平先生の研究に関しては、新潟大学のホームページに紹介されていますので見てください。

http://www.sc.niigata-u.ac.jp/sc/highschool/seminar/YAMAHIRA.html

メダカに関してもう少し詳しく知りたい人は、「愛知のメダカの学校調査」のサイトが参考になると思います。

http://www.cbr.mlit.go.jp/chugi/topics/medaka/final/index.htm


説明を聞き終わった班の
後ろで、また説明が
始まりました
100人近い生徒が、入れ替わり立ち替わりしながら、説明を聞きました。本当ならば、メダカの調査で忙しく、説明する暇も惜しかったのではないかと思いますが、嫌な顔一つせず、生徒達に優しくメダカについて解説していただきました。
生徒達が真剣に聞き入る姿や、メダカをマジマジとのぞき込む様を見ると、大いに刺激を受けたことがうかがえます。解説にあたっていただいた大学院生の方々はもちろんですが、こうした機会を提供していただいた新潟大学の山平先生にも、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
さあ、班別学習の再スタートです。
何を見ているのかな?
ミズユキノシタでした
今年の調べ学習のテーマです
みんな集まり出しました
どうしたんでしょう?
ちょっとビックリ!マムシグサが生え始めていました
いつもの、トトロの木です
葉の季節はこれからです
こちらは、キンランの芽吹きです。キンランも調べ学習のテーマでした。見つけることができましたか?
みんな集まり出しました
どうしたんでしょう?
こちらでは、食べています。春のこの季節は、食べられる野草がたくさんあります。皆はおっかなびっくり。でも、食べるとわかることもありますよね。
地面にうずくまって何してるの?
こちらは、何かを探し始めました。
こちらは目の前にあるサワオグルマを無視!興味は、木肌に向いたようです。

観察すんで・・・

あっちで座り込み、そこでは覗きこみ、こちらではガヤガヤと、少しも予定通りには進みません。
指導員の方が誘う声、同行した教員が急がせる声、聞こえていたのでしょうか。

春の観察会のまとめ(小橋学芸員)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか?今日の観察会は、本当に内容が盛りだくさんの観察会になったと思います。オタマジャクシを観察されていた班もありましたね。
今年は、トノサマガエルやヒキガエルの卵塊を、まだ見ることができませんでしたから、アカガエルのオタマジャクシに違いありません。
また、そろそろトンボが出る時期になってきましたから、若いシオカラトンボやシオヤトンボを見つけてカメラに収めていた班もあったようです。
でも、多くの人の目がいったのは、黄色い花であったように思います。タンポポに注目して観察しましょうと言ったので、タンポポに目がいったのは当然だと思いますが、その後は、サワオグルマやウマノアシガタと言ったものを見ていた人が多かったのではないでしょうか。さらに、ミツバツチグリという花を教えてもらっていた班もあったようですね。
ところで、最初に福井県立海浜自然センターの多田館長から、違いのわかる人になって下さいというアドバイスがありましたね。違いがわかれば、それを他の人に「伝える」ことができます。「伝える」と言うことは、「自慢できる」ことであり、「自信を持てる」と言うことでもあるのではないでしょうか。
その一方で、「伝える」と言うことは、大変むずかしいことでもあります。例えば「外来種」についてですが、皆さんも気づいたようにヒメオドリコソウがたくさん生えています。また、今は気がつかなかったかも知れませんが、秋になるとセイタカアワダチソウが黄色い花を咲かせます。こうした外来種を抜きながら観察会を行っていただいた班もありましたね。
でも、どうして外来種が問題なのでしょうか?外来種が進入すると、今ある生態系は壊されるかも知れませんが、また新しい生態系ができるはずです。このことのどこに問題があるのでしょうか?
「伝える」ためには、ただ聞いたことばかりではなく、どうしてそうなのかと深く考えることも必要だと思います。そしてこのことは、決して理科だけの知識で解決できるというものではないと思います。時には、哲学などと言った高等な学問が必要になるかも知れません。
とは言っても、皆さんが無理をする必要はありません。一人一人が持てる力を使って考えてみましょう。そうすることによって、「伝える」と言うことが何かが見えてくるのではないかと思います。