秋晴れに恵まれた9月19日(土)に、予定通り秋の観察会を行うことができました。
本校がある、福井県敦賀市でもインフルエンザの話題で持ちきりで、他校では学級閉鎖や学校閉鎖が行われるという事態に発展したところも出たほどです。
その様な状況にも関わらず、行事は目白押しでした。甲子園出場を決めた高校野球部の応援、学校祭の準備、本番では高校生に混じっての大活躍と、本当に目の回るような忙しさの中でも、誰一人体調を崩すことなく、この秋の観察会に参加するることができたのです。
こうしたことができたのも、日頃から体調管理に気をつけていただいているご家庭のご協力があったからに他なりません。この場をお借りして、深く感謝申し上げます。
その一方で、残念なこともありました。それは、講師として来ていただく予定だった福井大学の先生が大変ご多忙であり、どうしても日程の調整がつかないと言うことで、お迎えできなかったことです。
その代わりと言っては何ですが、普段目にすることのない調査の様子を見る機会を得ました。秋の観察会の様子を振り返ってみましょう。

活動オリエンテーション 筒井宏行 主任学芸員

今回のテーマは「里山」です。
「里山」という言葉は、春の観察会でお見えになった福井県海浜自然センターの多田所長さんのお話しにも登場しましたので当然知っていると思いますが、いつ頃から使われ出したのでしょうか?
調べてみると、250年程前の尾張藩(今の愛知県)で書かれた文献に、「家里近き山を里山という」と書かれているそうです。
一口に山と言っても、人が関わっている山もあれば、人が関わっていない山もあります。尾張藩の文献では、この点に注目して「里山」というものを定義したものと思われます。
では、人が関わっていない山を何と呼ぶのでしょうか。人が関わっていないというのは、その場所に行くまでの道のりが遠かったり、時には道すらないと言うことでしょう。そうした山は「奥山」と呼んでいたようです。
さて、話を「里山」に戻したいと思いますが、現在は「里地・里山」という呼び方で注目を集めている場所がどんな所かというと、この「ふれあいの里」の景観であると考えていただいてもいいと思います。なぜなら、人と自然がバランス良く関係し合っていたと思われる昭和40年頃の景観を保全することをコンセプトに運営されているのが、この「ふれあいの里」であるからです。
こうした「里地・里山」を保全しようという動きが活発になったのは、こうした場所には多くの生き物が生活し、その中には絶滅危惧種と言われるものが少なからず元気に生活しているからです。
言い換えれば、「里地・里山」では生物の多様性が保たれていると言うことになります。
次に、「里山」の利用について考えてみましょう。住居に近く利用しやすい場所にある「里山」は、縄文の頃から利用されていたと考えられています。
「里山」の利用方法として考えられるのは、まずは食料の調達です。春の山菜であるとか、秋の木の実などが思い浮かびますね。
次に住宅用の建材としての利用です。日本の多くの山に植えられ、今では花粉症を引き起こす悪者としてのイメージが強い杉の木も、かつては家を造るためには欠かせないものであったのです。
しかし、「里山」の利用目的で一番重要であったのは燃料の調達ということです。今は、電気やガスがありますから見向きもされませんが、それらがなかった時代には多くの需要があり、枯れ木や落ち葉を拾って利用していましたが、木を切って炭にして街に売りに行くと言うことも行われてきました。
こうした人間の活動によって、江戸時代には山の25%にあたる面積が「禿げ山」になったという記録も残っており、そのために保全のための命令が出されたこともあったようです。それ以降、過剰な利用と保全が繰り返されてきました。
明治維新頃は、社会の混乱似合わせるように木が切り出されて危機を迎えました。昭和に入り、第2次大戦が終わった頃は使えるものは何でも使おうということで、危機的状況に陥りました。
そして現代です。現代になると、山の利用価値、特に木の利用価値が極端に低下しました。このために、人との関わりがドンドン減ってきており、山は本来あるべき姿に近づいていると言う状態になりました。
このことを皆さんはどう思いますか?本来の姿に戻って良いと考えるか、先程の「里地・里山」の保全の立場で考えるかは皆さんの判断に任せたいと思います。
その判断をする材料として、かつての里山だった場所を今日は探検することにしました。
それでは、早速探検に行きたいと思いますが、その前にチョット寄り道をしてもらいたいと思います。何があるかはお楽しみです。
オリエンテーションの後は、各班の指導員の誘導に従って、移動を開始しました。
「寄り道」という言葉に刺激を受けたのでしょうか、誘導する指導員の方に、どこに行くのかをしきりに尋ねる姿も見えました。

「野鳥の標識調査」見学

みんなが案内された場所は、観察会で指導員を務めていただいている方の多くがメンバーとなっている、NPO法人ウェットランド中池見の活動拠点の一つとなっている小屋の前にある駐車場、通称「トラスト広場」と言われる場所です。
全員が集合したのを見計らって、指導員の吉田さんから講師の紹介が行われました。

【講師紹介】

皆さん、おはようございます。
現在、この中池見湿地では、私が中心になって野鳥の標識調査を行っています。
昨年も野鳥の標識調査のことを話しましたので、覚えている人もいるかもしれません。また、この中には網場の後片付けを手伝ってもらった人もいるのではないかと思います。
網場の後片付けも注意が必要で「しんどかった」という感想を持ったかもしれませんが、実は網場をつくること、その網場を見回ることがもっと大変なことなのです。
当然一人ではできる仕事ではありません。今回の調査では、ここにおられる杉林さんが、ボランティアとして参加していただいています。
どうして、こうした活動をされるようになったか、そして、環境調査を行うことの意味について、杉林さんの話をお聞きしたいと思います。

標識調査を行うわけ 環境調査員 杉林 氏

皆さん、始めまして。
何か大変な紹介を受けてしまいましたので、急にプレッシャーを感じてしまいました。
何から話していいかわかりませんので、とりあえず今の仕事に関わるようになった経緯から話し始めたいと思います。
今ほど紹介にあったとおり、私は大阪の高槻というところで育ちました。今ほどビルもなく自然も残っていたので、とにかく外遊びが好きな少年時代を過ごしました。
その後、高校生になって進学のことを考える時期が来ました。そんなとき、今はもうなくなってしまったのですが、動物植物専門学校という文字が飛び込んできました。このことが今につながるとは思っても見ませんでしたが、この学校で鳥に興味を持つようになりました。
調査用品の郵送に使われた箱
さて、話は標識調査のことに移りたいと思います。
標識調査は、野鳥の行動を調べるために行われる調査です。だからといって、誰でも自由に行えるかというと、そう言うわけではありません。
この調査に関する道具は、このような箱に入って山階鳥類研究所から送られてきたものを使っており、実際に網を張るにあたっては地元の警察などから許可をもらうなどして行っています。当然こうした手続きを一般の人が行うと言うわけにはいきませんから、私やここにおられる吉田さんのように、標識調査員という特別の資格を持った者しか携わることは出来ません。
こうした手間のかかる調査をここで行う理由は「ノジコ」という鳥の生態を知るためです。「ノジコ」という鳥は、日本で繁殖していると考えられる渡り鳥なのですが、その渡りのルートなどがはっきりしていない鳥でもあります。
長年標識調査員として活動されている方でも、「ノジコ」の標識をつけた人というのは全国を探しても数えるほどだと思います。
その「ノジコ」ですが、来月に行う予定の標識調査では、例年大量に捕獲されています。つまり、中池見湿地は「ノジコ」の渡りにとって、非常に大切な場所であると言うことです。
しかし、本当にそう考えていいのでしょうか?皆さんの左手に見えるヨシ原には、たくさんの野鳥がいますが、その姿を見ることもできませんし、今は声も聞こえませんね。でも、確かにいるのです。それを知るためにも捕まえることが必要で、標識調査をする意味は、そこにもあります。
今回の調査では、今のところ予想通り「ノジコ」は捕まっていませんから、今の時期の中池見湿地には「ノジコ」がいないと言うことが証明されたのです。言い換えれば、繁殖などのために中池見湿地に住み着いているというわけではないと言うことが、今回の調査では言えることになります。
このことと来月の調査を合わせると、間違いなく「ノジコ」はどこからか中池見湿地にやって来たと言うことがハッキリするわけです。
さらにこうした調査を続けていけば、中池見湿地にはいつ頃「ノジコ」来て、いつ頃越冬地に渡るのかと言うこともハッキリするでしょう。そして、足輪のデータから、どこから来てどこへ行くのかと言うことも見えてくるはずですし、具体的な渡りのルートも確定するはずです。
こうしたことがわかった日には、中池見湿地の重要性というものが再認識される可能性もあります。
全国の「ノジコ」の確認例からいって、この中池見湿地が、渡りを行う前の集合場所になっていると考えられなくもないからです。こうしたことを想像すると、この中池見湿地は、単に地元にとって大切な場所と言うばかりではなく、日本にとって貴重な場所だと言うことになります。
さて、夢みたいな話はこれ位でおくとして、今回の調査に話を戻します。これまでに説明したとおり、今回の調査は成果が出ない(目的とする「ノジコ」が捕まらない)ことを期待しての調査です。
皆さんにとっては、どうせ成果が出ないことがわかっているのに、なぜそんな無駄なことをするのかという思いもあるかもしれませんが、決して無駄なことをしているわけではないのです。
無駄なことのように思えても、それに取り組んだという事実が大切なのです。どんなことであれ、何かに挑戦したという事実は、必ず次につながるものなのです。今回の調査が、来月の調査の調査結果と合わせることによって、今までは想像の域を出なかったことが事実として認知されるようにです。
今年度の皆さんの活動テーマは「伝える」と言うことだと聞いています。皆さんの生活を考えると、様々な研究や開発の恩恵を受けて成り立っています。言うまでもなく、多くの研究開発には時間がかかり、一朝一夕で出来るものではありません。
特に、私たちが行っている環境調査というのは、自然が相手の調査ですから1年に1回しか調査できません。そうですよね。今行っている標識調査は年に何回も行われていますが、先程説明したように、9月のこの時期のデータと言うのは、今回しか得られないものなのです。
「自然界には無駄なものは何一つとしてない」という言葉は、環境を考える上でよく言い交わされる言葉ですが、「体験する」とか「経験する」と言ったことにも、当てはまる言葉だと思います。皆さんの、こうした活動もこれからもずっと続けてほしいと思います。

標識調査で行っていること 吉田一朗 指導員

網場から戻る杉林さん
実は、皆さんがここに来る前にも、こちらの杉林さんが網場を見回っておられました。
その時、網に捕獲された「オオヨシキリ」と言う鳥がここにいますので、標識調査で何を行っているかを簡単に説明したいと思います。
皆さんには、これから網場の横を通っていただきますが、網にかかった鳥は速やかにはずし、白い袋に入れます。鳥にとっては迷惑な話ですが、袋の中に入れておくと比較的静かにしています。
袋から取り出した鳥は、羽の状態や目の様子などを参考にして性別や幼鳥か成鳥かを判断し、このように足輪をつけます。足輪にはそれぞれ番号が振ってあり、その番号を調べれば、どこの国のどこの場所でいつ頃捕獲された鳥かがわかるようになっています。
本来は、すぐに放鳥すべきですが、今回は皆さんにお見せするために居残ってもらいました。しかし、あまりストレスを与えてもいけませんので、今すぐに放鳥したいと思います。
本当なら、ヨシ原の中に真っ直ぐに飛んでいく所なのですが、パニックになっていたのか、林の方に飛んでいきましたね。でも、落ち着いたらヨシ原の中に戻っていくのではないかと思います。
ところで、今放鳥された「オオヨシキリ」ですが、既に足輪がついていました。番号を調べてみると、昨日ここで捕獲して足輪をつけていたのです。
「オオヨシキリ」は羽が抜け替わる鳥で、羽がぬけて飛べないときはヨシ原に隠れて生活しています。
こうしたことを考え合わせると、放鳥した「オオヨシキリ」は少なくとも昨日から今日にかけて中池見湿地で過ごしていたと言うことであり、中池見湿地のヨシ原の中で羽が抜け替わる時期を過ごしていたのではないかということが想像できます。
一つの標識調査からでも、多くのことが分かるものなのです。
実は・・・今回、講師をお願いした杉林さんからは、私たちの活動の延長線上にあるようなお仕事をされている方の、貴重なお話を聞けたのではないでしょうか?
さて、吉田さんの仲介で講師役を依頼させていただいた杉林さんですが、「何を話したらよいのかわからない」と少し消極的になっておられました。
しかし、前日18日(金)の夕方に直接お会いして、総合学習の目的や講習の中で話していただきたい内容を詰めさせていただく中で、「それでは引き受けましょう」と快諾していただき、今回の取り組みとなりました。
実は、その間も標識調査が行われており、忙しい合間を縫ってのお願いでした。本当にありがとうございました。

オリエンテーションが終わり、早速観察会スタート。
最初な観察ポイントは、通称「クモクモ仙人の泉」と言われている場所です。
指導員をされている皆さんの環境整備活動が実り、絶滅危惧種と言われている「ミズユキノシタ」、「デンジソウ」、「オオアカウキクサ」生育している場所です。
四つ葉のクローバーではありません。これが「デンジソウ」です。
赤く広がっているのは「オオアカウキクサ」
しゃがみ込んでいる子は、湧き水を試飲中!
興味津々。
説明を聞いた後は、しっかりデジカメに記録です。
名残惜しそうに次の観察ポイントへ
次の観察ポイントは、NPO法人「中池見ねっと」の皆さんが、生物の多様性保全のために水田化して、かつての水田雑草だった稀少種の復活に取り組んだ「研究田」です。
この日は稲刈りも終わり、稲の間に生育していた「ミズアオイ」や「コナギ」といった絶滅危惧種が顔を出し、可憐な花を咲かせていました。

私たちも協力しています!!

夏にもお伝えしたように、NPO法人「中池見ねっと」の皆さんが取り組んでおられる、現在は稀少種となってしまった、かつての水田雑草を復活するための水田耕作ですが、私たちも協力しています。
今回の観察会の一週間前の9月13日(日)には、稲刈りが行われましたので、これに参加させていただいたのです。
水田雑草と格闘しながらの稲刈りは大変重労働で、刈り取った稲も大きくは生育していませんでした。
農業という観点から見れば、十分な作物がとれなかった「不作」という評価かもしれませんが、こうした結果も研究の成果と言えるのではないでしょうか。

誰よりも早く研究田に現れて、稲刈りの取り組んだ生徒
(後ろに見える方が、稲刈りの指導をしていただいた増田さん)

三々五々集まった「稲刈り隊」と共に作業している様子。
第3の観察ポイントはヤブの中。
ここに何があるかというと、標識調査のための網場です。
偶然でしたが、先程話をしていただいた杉林さんが網場の見回りに来られました。
標識調査では、網にかかった鳥に過剰なストレスを与えないように、常に巡回して確認を行っていると言うことです。
ちなみに、手前に見える赤い旗のようなものが標識調査を行っているときに掲げられるものです。
これがない場合は、密猟者によって張られた網だと考えられます。
いつものように、やって来たトトロの木。
でも、何だかいつもと違う雰囲気でした。
その訳はと言うと・・・・
いつの間にか、里山の利用体験が始まっていたからです。
目の前に伸びた木の枝についた赤い実の試食会。
「うまい!」「変な味がする!」
一体どっちだい?
「始め酸っぱいけど、後から甘い感じがする。」
そう言ってもらえると伝わるよ。
「ここにあるのなんですか?」
それはイヌビエだよ。
「食べられますか?」
食べて食べられないことはないと思うけど。
「じゃ、食べてみようか」
チョット待って。それは何に似ている。
そうだね。お米に似ているよね。
お米は生で食べるかい?
「そうか。止めておくか。」
と、こんなことがあって、いよいよ里山探検です。
真っ先にやることと言ったら、木登りですよね。
その後は樹間を縫って、尾根道に向かいます。
今度の観察ポイントはここです。
何があるのかな?
この付近には、池見と言われる場所が、3カ所ありました。その中心にあるのが中池見です。
南側には余座池見と言うところがありましたが、現在は住宅地になっています。北側には内池見と言う場所があります。
一部変電所として使われているのですが、ここではかつての中池見と同様に、今でも耕作が行われています。
かつての中池見は、このような感じだったのでしょう。

みんなが見上げているのは鉄塔です。
写真では何と言うことはありませんが、強い風が吹いていたので先端が大きく揺れていました。
それを見ていると、船に乗っているような感じで酔ってきそうです。
皆さん、ここをどう思いますか。
「ジャングル!」
「ちょっと怖い感じがする。」
これが、放置された「里山」です。
今はこんなにヤブにおおわれてしまいました。
昔は、必要な木は残し、不要な木は伐採していました。
木は何もしゃべりませんが、1本1本の木をよく見ると、どのようにここまで育ったのかを話しかけてくれますよ。

最後の観察ポイントは、順路とは反対側のヤブの中にあります。
「何があるの?」
「見てのお楽しみ!」
そこにあったのは、自動撮影カメラです。
NPO法人ウェットランド中池見の皆さんが委託を受けて行っておられる環境省の「モニタリングサイト1000」の調査の一つ、動物調査のために使われているものです。
全部で5台の自動撮影カメラを使って調査が行われていますが、この場所にあるカメラが最もたくさんの動物を写しているカメラです。
夜になると、皆さんが立っている場所を、たくさんの動物が通っていると言うことです。
里山探検も終わり、ようやくいつもの道へ。
道辺にはヒガンバナが
山の中という緊張感から解放されてか、笑顔も見えます。
不測の事態がないようにと、早め早めの進行だったこともあり、予定より30分ほど早く集合場所に着きました。
退屈してるかと思いきや、生徒の手には、どこで捕まえたのかカブトムシが1匹。
生徒達は、こちらが思う以上に自分たちで楽しみを見つけているようです。
観察が終わって・・・
今回は「里山探検」と言うことで、あまり多くの器材を待たせない方がよいのではないか、また、スズメバチが活性化する季節でもあり身軽に行動させたい、と言うわけでNikonのS10とCANONのS5の2台体制で行いました。
カメラの撮影総数は、642枚!!力作をご覧下さい。

観察会のまとめ 笹木 進 指導員

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか?
本来ならば、「ふれあいの里」の筒井さんがまとめを行うところですが、今日は「ふれあいの里」への来訪者が多く、その対応にあたらなくてはならないと言うことで、今日は私がまとめを行いたいと思います。
さて、今私が持っているこの植物が何かわかりますか?赤いきれいな花が咲いています。花のにおいを嗅いでみませんか?どうですか?何も感じませんか?そうですか。私には、甘い香りがするのですが、皆さんには感じないのかもしれません。
考えてみれば、皆さんの生活の場には芳香剤とか整髪料、香水と言ったにおいの強いものがたくさんあり、ほのかな香りを嗅ぐ機会というものが減っているのかもしれません。
考えてみると「里山」の放置と同じで、私たちが持っている「五感」の内、見ることや聞くことにとらわれて、その他の感覚を放置している証拠なのかもしれません。
今日の観察会では見ると言うことよりも、「感じる」ことを中心に活動しました。
観察コースのあちこちには様々な香りがあり、木の実やミョウガを口にした人もいますね。また、尾根道に上がって風も感じたのではないでしょうか。風は肌に触れて髪を乱すだけでなく、「ゴー」という音や揺れる鉄塔でも感じられたのではないのでしょうか!?
自然観察というのは、こうした「五感」をフルに使うこと、感覚を鋭敏にすることでもあります。こうしたことが、今日の観察会で一つでも体験できたでしょうか?
さて、話は「クズ」のことに戻しましょう。「クズ」は「秋の七草」の一つに数えられ、日本人にとっては非常になじみの深い植物の一つです。また、マメ科の植物で、生命力が強く荒れ地であっても勢いよく育ちます。このことに注目し、壁面緑化に使って温暖化防止に役立てないかということにも研究されています。
しかし、ツル性の植物ですから、草や木にからまって成長するわけで、これによって木の生長が妨げられ、時には木を枯らしてしまうと言うことで、厄介者でもあります。
ここでカヤネズミの調査を行っている人も、そうですよね。
「そうなんです。今持ってもらっている人形ほどの大きさのカヤネズミですが、ヨシやマコモでソフトボール台の巣を作るネズミでもあります。そのカヤネズミは、どうしたわけか、クズが入り込んだ辺りでは巣を作らないようです。私たちの調査では、そうした場所でカヤネズミの巣を見つけたことがないからです。」と言うことです。
でも皆さんが食べる「くず餅」の原料になったり、風邪をひいたときに飲む「葛根湯(かっこんとう)」と言う薬の原料でもあります。それは、地上にあるツルの方ではなく、根を使います。
このように、日本人とは深い関わりを持っているクズですが、その生命力の強さに注目して土壌保全のためにアメリカに持ち込まれました。すると、アッと言う間に広がって在来植物を駆逐してしまったのです。この話を聞くと、ブラックバスやブルーギルと言った魚のことを思い浮かべる人がいるかもしれませんが、アメリカでは日本から持ち込まれた鯉がそうなっています。
一般に、本来生息しないはずの生物でありながら、人間の活動によって持ち込まれた生物のことを外来生物と言いますが、その中でも爆発的に生息域を広げ、在来種に大きな影響を与えるものを侵略的外来生物と呼ばれます。
悪気はなかったのかもしれませんが、おもしろそうな園芸植物だからとか、かわいいペットだからと言って持ち込んだものが、人間の手を離れることによって侵略的外来生物と言われるものになってしまうことがあります。
皆さんの普段の生活の中にも、こうした環境破壊の芽が隠されていると言うことを知ってもらいたいと思います。

自動カメラが教えてくれるもの 田代美津子 指導員

自動カメラは、動物の体温に感知してシャッターが切られる仕組みになっています。ですから、自動カメラの撮影対象は、キツネやタヌキ、ウサギと言った森に住む動物、つまりほ乳類と言うことになります。
中池見にある自動カメラに最もよく写っているのはイノシシで、大型の動物としては、この他にクマやシカと言ったものが写っています。
そして、珍しいものとしては、カモシカがあります。カモシカは人があまりいない山奥の方に生活している動物です。撮影した動物写真の分析を行っている専門家の方も、尾根を越えると市街地となるような場所で撮影されるのは驚きだとおっしゃった一枚です。
また、珍しいと言えば鳥の写真があります。ここにあるのはオシドリの写真ですが、オシドリは水辺に住むカモの仲間であるにもかかわらず、木の洞などに巣を作るという変わった鳥です。そのオシドリが隊列を作って山の中を歩いているというわけですからおもしろいですよね。
鳥の調査をされている吉田さんに、こうした鳥の写真を見てもらったところ、自動カメラで山の中の鳥を調査をする話は聞いたことがないけれど、やってみると意外な鳥の生態が記録できるのではないかと興奮されていました。
また、自動カメラの記録を時間で並べてみると、食べるものと食べるものが入れ替わり立ち替わり通過していることがわかります。つまり、私たちが獣道だと思っているところは、命のつながりの道でもあるのかもしれません。
しかし、楽しい記録ばかりが残っているばかりではありません。この写真はアライグマですが、この他にもハクビシンなど、ちょっと困った動物の記録も残されています。先程の笹木さんの話にも出た外来種です。
外見やイメージなどで判断し、その生態を知らずにペットとしたことによる犠牲者と言えるかもしれません。
私たちの身近なところにも、分かっていそうで分からないことがたくさんあります。自然に接することの意味は、分からないことがたくさんあるということに気づくことにあるのかもしれません。
話が終わった頃に・・・
おくれて登場したのは、10班です。
今回も水生生物の調査のために単独行動でした。
何をしていたかというと・・・

最後に、指導員の方に生徒の代表がお礼を述べて観察会を終了しました。

秋の観察会を前にして

9月8日(火)に、山形大学農学部生物環境学科の林田光祐教授が中池見湿地の視察に見えられました。
【鶴岡市のホームページより】
林田先生は森林生態保全学がご専門ですが、単に保全という範疇におさまることなく、森林が持つ環境教育の機能をより充実させるには、どのような森林にすればよいのかと言う「環境教育のための森づくり」にも目を向けられ、小学校の学校林を対象に、生態学的な手法で、多様な生き物が共存できる森づくりの実線をされている先生です。
また一般教育科目として、安全で快適な野外活動を行うために必要な知識や技術を学ぶことを目的に、農学部附属演習林というフィールドで実際に体験しながら学ぶ野外講義「フィールド科学のテクニック」と言う授業に取り組まれていたり、大学がある地元の鶴岡市にあるラムサール条約湿地「大山上池・下池」の保全や、下池に隣接する都沢湿地も含めての、人々の身近な水辺空間としても親しまれような「賢明な利用(ワイズユース)」のあり方に関する調査・研究・助言をされている先生だとお聞きしています。
こうした活動は、まさに本校が行う「総合学習」に通じるものがあり、ぜひとも先生のお話をうかがいたいと、午前中だけではありましたが帯同させていただきました。
中池見に到着された林田先生は、早速後ろ谷で行われている「ホタル水路復活作業」の現場から視察を始められました。
その後、トラスト広場にて笹木さんより現在の中池見の概要説明を聞かれ、総合学習でも通るシボラ道へと足を進められました。
あまり多くのことを質問させていただきことは出来ませんでしたが、「環境教育はフィールドが行う」という考え方、そして、この中池見湿地には環境教育を行うことができるポテンシャルが十分にあると言うお言葉を聞き、本校が取り組んでいる「総合学習」での活動に少し自信が持てたような気がしました。
さらに中池見湿地での活動の様子、特に女性が元気に活動していること、若い人を巻き込むように学習活動が行われている(これは、ラムサール条約が登録湿地に求める「保全」「賢明な利用」「交流・学習」と言う3本の柱の内の一つである)ことに強い関心を持たれ、地元の取り組みにも生かしたいと述べておられました。
後日、林田先生からは小学校での森づくりの実践をまとめられた論文他を頂きました。
林田先生のアドバイスや資料を参考に、先生の取り組みに一歩でも近づく実践を本校の「総合学習」でも行いたいと考えています。

これからに向けた取り組み

9月27日(日)に、『中池見・人と自然のふれあいの里』で収穫された餅米を使った「餅つき会」をかねて、今後の観察計画と次年度以降の観察会に向けた環境整備のあり方に関する勉強会を行いました。
午前中は、秋の観察会で歩いた観察路近くにある枯れ木(倒木の危険があるもの)の伐採作業や、イノシシによって崩された畦や法面の修復、冬の観察会に向けた観察ポイントの草刈りなどを行いました。
さて、左右の写真は、次回の冬の観察会でオオニガナの観察を行う予定の場所です。一面にヨシが生育していた場所ですが、畦筋を意識した草刈りを行い、刈った草を畦に積むことによって畦としての機能を高めると言う配慮を行った整備をしています。
また、草刈り後には畦にそって簡単な水路を掘り、水の流れをつくることにより、水生生物の移動を容易にするなど、生物の多様性を生み出すと言う工夫もしています。
さらに、畦によって囲まれた場所の草は、背の高いヨシを透くようにな草刈りが行われています。これは、現在成育中のオオニガナをより観察しやすくするために行われている手段です。
こうした観察路整備は、少人数で広大な場所の整備をしたいと言う思いで行われている方法であり、言ってみれば『中池見方式』の観察路整備と言えると思います。
本校の総合学習「ふるさと敦賀塾」の活動成果の裏には、こうしたボランティア活動があることを、忘れてはならないと思います。
こうした活動の一方で、お昼近くからは有志による「餅つき会」が始まりました。右の写真からも分かるとおり、昼食はつきたても餅を賞味させていただきました。
さて、できたての餅で腹がいっぱいになった頃、誰が言い出すということなく今後の環境整備のあり方についての話し合いとなりました。
そこで、山形大学の林田先生から送られてきた資料の読み合わせが行われ、それぞれの意見が交わされました。現在の中池見湿地は遷移が進み、望ましい里地・里山というわけではありません。かつては、澄んだ水が湧き出ていたところも土砂に埋まり、見るも無惨な状態になっています。こうした場所にも手を加えれば、元の状態に近づけることは可能です。
しかし、短時間での回復は不可能です。
左の写真は、秋の観察会終了後に観察指導員の方が、かつての湧水地を掘りかえしているところです。その日は乾いたままだったのですが、1週間後のこの日は、このように水が溜まっていました。
今後どのように変化するかを見ながら、時間をかけた整備が続けられるわけです。