活動オリエンテーション(小橋宏充学芸員)

中池見湿地を舞台にした活動もいよいよ4年目に入りました。
さて、今年の活動のキーワードとして、皆さんに「見る」という言葉を示したいと思います。身の回りを見渡すと、様々なものが私たちの目に飛び込んできます。
私の目に飛び込んできたもので、一番印象に残っているのは、皆さんが歩いてきた山道でクマを見かけたことです。見つけたときには驚きましたが、適当な距離を守って冷静に対応すれば色々なことが見えてくると思います。
そこで、今日皆さんに用意したのはタンポポ調べです。タンポポを調べることで、中池見湿地の今を見てみましょう。

タンポポを調べよう(上野山雅子氏 タンポポ調査・西日本2010福井県実行委員)

先程、校長先生から紹介していただいたように、NPO法人ウェットランド中池見のプロジェクト『いきもの不思議の国・中池見湿地』が、日本ユネスコ協会連盟が第1回プロジェクト未来遺産として選定した10のプロジェクトのうちの一つに選定されました。
プロジェクト未来遺産とは、100年後の子どもたちに長い歴史と伝統のもとで豊かに培われてきた地域の文化・自然遺産を伝えていきましょうというものです。
100年後のこども達にとっては、皆さんも立派なご先祖さまになるわけですから、子孫のこどもたちが、昔はこんないいところもあったのになぁ、なんて、3Dの映像でしか体験できないなんてことがないように、この中池見の豊かな自然をしっかりと手渡していく方法を、考えて欲しいと思います。
そこで今日は、そのための最初の一歩になりそうな、簡単で楽しいタンポポの調査を皆さんにしてもらいたいと思います。
今日やるタンポポ調査は、中池見のうしろ谷を除く全域を班ごとに手分けして、見つけたタンポポが、在来種か外来種か、それとも雑種かを調べて地図に記録したり、写真を撮ったりしてもらいます。
なぜ、こんな調査をするのかと言うと、タンポポを調べることで自然の豊かさが計れるのではないかと思うからです。植物は、ほかの花から虫などに運ばれた花粉がめしべにつく受粉によって実となり種になって、子孫を残すということを小学校の理科ですでに習ったと思います。
在来種のタンポポには、こうした増え方をするものがありますが、外来種のタンポポ違います。外来種は全て、受粉しないで種ができる、つまりクローンを作るわけですね。
だから、誰もいなくても、土さえあれば、自分1人で勝手にじゃんじゃん種を作って増えることができるというわけです。
こうした視点でみてみると、在来種は周囲に花粉を運んでくれる虫などがいる豊かな自然が残されている場所でなければ子孫が残せないのに対して、外来種は種一つだけで増えていけるので、豊かな自然が壊されてしまっても生き残れるということがわかります。
皆さんも気がつかないうちに、こうして在来種と外来種が入れ替わってしまっているかもしれません。さらに、やっかいなことに、そんな在来種に外来種の花粉がついてできた雑種ができること、そしてその数がとても多いことがわかってきました。
Click Enlarge『タンポポ調査・西日本2010』の調査資料より
では、在来種や外来種といったものを、どうやって見分けたらいいのでしょうか?今皆さんに配っているのは、現在行われている『タンポポ調査・西日本2010』の調査資料です。
今回の調査では、1を在来種、5を外来種として、その間の2~4を雑種というふうに分けたいと思います。それから、外来種もセイヨウタンポポとアカミタンポポがありますが、これを見分けるには、種の色をみないと、わかりませんので、もし種があれば、色をみてみてください。また、在来種も、いろいろな種類がありますので、資料の写真を見比べてみてください。
見分けるポイントは総苞外片の先の角状突起の様子や、総苞外片と内片の長さの割合や、総苞の形です。ただし、中池見の在来タンポポは、中間的な何とも判断しにくいものも多いので、基本的にはセイタカタンポポということになりますが、例えばシナノタンポポに近いとかという特徴をよく見て記録してくれるとベストです。
写真を撮る時も、このポイントを意識して撮ってください。
今日、皆さんで手分けして調べていただくことで、中池見湿地での在来種と外来種、そして雑種のタンポポが、どのように分布しているかがわかります。
中池見湿地は、自然が豊かな場所なんですが、去年の予備調査では、残念ながら外来種がはいっていることが分かっています。外来種のタンポポを見つけたら、どうしてここに生えたのか、周囲の様子などもいっしょに観察しながら、是非考えてみてください。
最後に、春はタンポポ以外にも黄色い花がたくさん咲きます。タンポポ調査としては、まず、それらとタンポポをちゃんと見分けてください。そして、タンポポじゃない春の花達も是非楽しんでください。

班別ミーティング

今年度から始められた取り組みです。
これまでの、観察指導員の後を追う活動ではなく、各班で決めた活動目的を達成するために観察指導員の方を利用しようということで、観察会を始める前に打ち合わせの時間を持つことにしました。
今回は初めてのことなので、今年の活動の抱負と、今日の活動テーマ「タンポポ調べ」の役割分担などを決めました。

班別ミーティングが終わり、早速観察会スタート。
さっそく、班毎に決められた場所に向かい、調査を行いました。
先陣を切るのは子どもたち。 今年の観察会を象徴する風景です。
ここは調査ポイントじゃないのですが、タンポポ調べということで、タンポポが咲いていると、立ち止まってしまいます。
観察に夢中。勝手知ったる中池見。少々遅れても平気です。
見つけたものを、しっかり記録しておこう。
タンポポみっけ!総苞はどんな感じかな?資料と見比べよう!
ここはどのあたりだ?タンポポのあった場所をマッピングしておこう。
ごっついタンポポ発見!
つぼみが親指ほどもあります。
資料にあった「オオクシバタンポポ(仮称)」のようですが、チョット正体不明です。
ヨシの中にもはいってみよう。タンポポありません!!
ないことを確認するのも調査だよ!
こっちいってみる?ここ初めてだよな。いってみよっか!
これなんだろう?・・・・どれどれ
黄色い花はあるけど・・・
タンポポがあってもよさそうなのに
それぞれの班が頑張って、それぞれの班のタンポポ地図ができあがりつつあります。
普段なら行かないような場所も調査しました。
山の中にはタンポポないよな?
ここはどこ?こんなのあり?
水たまり?水浸し?
山の北側だからタンポポ見つかりません!!
調査はチャンとやってるみたいでが、興味は調査だけに止まりません。
タンポポ以外にも興味の対象はドンドン広がっていきます。
タンポポ探しが、食べられる野草探しになっちゃいました。
走り出したと思ったら
観察しているみんなの様子も記録していました。
どこ見てんだ?上の方にはタンポポなんかないはずなんだけど・・・鳥でも見つけたのかな?
水場にも興味津々
何してるの?
見ていたのは、イチョウウキゴケです
ハートマークがかわいいね
こちらは日向ぼっこ中。
風の通り道となっている日の当たらない山陰を調査していた班です。
かじかんだ手に日の光を当てて、気持ちいい!!
集まってきた仲間も
観察の対象です
楽しかったかい?
観察が終わって、あっちで座り込み、そこでは覗きこみ、こちらではガヤガヤと話し込みながらの観察会。
それぞれの班が集合場所に集まってきました。

春の観察会のまとめ(上野山 氏)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか?
今日の観察会は、本当に内容が盛りだくさんの観察会になったと思います。
ヒキガエルの卵塊を観察していた班もありましたね。
今日の観察会で、どのようなことができたのかを発表してもらいましょう。

1班

オオクシバタンポポかもしれないタンポポを見つけました。

2班

キビタキを見つけたので写真に撮りました。

3班

仮設道路を調査しました。外来種かもしれない小さな白い花を見つけました。

4班

北斜面の山際の道だったのでタンポポが見つかりませんでした。でも、食べられる野草を見つけました。

5班

中江道を歩きました。水が多くてタンポポは咲いていませんでした。イノシシが歩いたあとを歩けておもしろかったです。

6班

タンポポは咲いていましたが、日が当たらなかったのでとても寒かったです。

7班

外来種はなく、セイタカタンポポばかりでした。セイタカタンポポにも、形が違うものが色々あると思いました。

8班

ほとんどがセイタカタンポポで、数えたら170本あることがわかりました。鳥がたくさんいて楽しかったです。
はい、ありがとうございました。
各班それぞれに有意義な活動になったのではないかと思います。
今日皆さんが調べた結果は、学校に帰ってまとめてください。
そのデータは、100年後の子どもたちに残す中池見湿地の貴重なデータとなるはずです。
また、この中池見湿地にどうして外来種があるのか、そしてその外来種をどうしたらいいのかを考えてみてください。
さらに、皆さんの家の近くにタンポポを見つけたら、今日のことを振り返って自分たちの住んでいる場所がどのようなところなのかを考えてみましょう。
できれば、その時のタンポポを「タンポポ調査・西日本2010」のデータとしてまとめて報告してもらえるとうれしいです。

活動のまとめ(小橋学芸員)

自然の豊かさの尺度として「多様性」という言葉が使われます。
そう言えば聞いたことがあるという人もいるのではないかと思います。
どうも、自然には多様性があることがのぞまれているようで、今年の秋には名古屋で、生物多様性条約締結国会議2010(略称はCPO10)が開かれます。
皆さんは、満員電車に乗ったことはないと思いますが、満員電車の中は非常に熱くなっています。このことからもわかるように、多くのものが一つの空間を共有するということは、そこに大きなエネルギーがあるということだと思います。
ところで、この「多様性」という言葉の対義語とに「単一性」という言葉があります。私たちが食料を調達するために行われる農業では、「多様性」ではなく「単一性」が求められているように思います。
では、私たち人間にとって「多様性」と「単一性」のどちらが大切なのでしょうか?。
多分どちらも大切であり、どちらも必要なことだと思いますが、一番大切なことは、どうしてかという理由ではないでしょうか?特に「多様性」が必要であるという理由です。皆さんにとっての、この答えを今年の活動の中から見つけてもらえたらうれしいと思います。

観察会、その後・・・

タンポポ調査の指導をしていただいた観察指導員の上野山さんの提案通り、学校に帰り各班のデータを持ち寄り地図の上にプロットしてみました。
これまで、中池見全域についてタンポポの一斉調査を行ったことがありませんでしたので、本当に貴重なデータができました。
観察指導員を務めていただいているNPO法人ウェットランド中池見の皆さんは、長年中池見湿地に足を運んでおられ、自然状況も良く把握されておられますが、今まであまり気づかなかったことも地図から読み取れると、高い評価をいただきました。

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