7月3日(土)、降りしきる雨の中、付属中学生84名が「中池見 人と自然のふれあいの里」に集合しました。
バスを降りて集合場所に向かう生徒
集合場所の駐車場で点呼をとりました
ビジターセンター到着
雨具を脱いで中に入ります

活動オリエンテーション(筒井宏行学芸員)

今日は朝から雨が降っていますが、皆さんは観察会がこうして行われると思っていましたか?
今、手を挙げてもらいましたが、やると思った人、やらないと思った人は大体同じ数でしたね。やると思った人は、これまでにもこの中池見湿地での観察会に参加している上級生が多かったように思いますが、そういえば、昨年の11月の観察会も、雨が降っている中で行われましたよね。
ふつう観察会といえば、天気の良い日に行われます。このような雨の日にまで観察会をするなどということはあまりないことです。 ましてや、一つの学校がみんなで観察会をするなどというのは、日本中探しても皆さんの学校だけかも知れません。
逆に考えるならば、それだけ貴重な体験を今からしようとしていると言うことになります。
さて、今回の観察会のテーマは「もっとよく見てみよう」です。この活動も4年目を迎え、皆さんの中には、かなりの量の中池見湿地に関する情報が蓄えられてきていると思います。
そこで皆さんには、今日の観察会を迎えるに当たって、それぞれの班で観察テーマを絞ってもらいました。そして、そのテーマを元に観察指導員の方と相談して、内容を詰めていただきました。したがって、今日からの活動はこれまでの全体活動ではなく、班別行動になります。
皆さん一人一人が考えて決めてくれたテーマに沿った活動を行いますので、これまで以上に積極的な取り組みになるのではと期待しています。
そのスタートとなるこの日が、誰もあまり体験することのない雨の日に行われるというのは、本当に幸先の良いことなのかも知れません。普段体験することのない雨の日の中池見湿地を、じっくり、しっかり見てほしいと思います。

中池見を舞台に活動していること(笹木智恵子氏 モニタリングサイト1000調査員)

皆さん、こんにちは。今日の観察会は、ここにいる皆さんはそれぞれの班毎に別れて活動します。
そして、春の観察会では「タンポポさがし」という同じテーマで活動をしてもらいましたが、テーマもバラバラになります。いってみれば、これまでのように誰かに連れられて観察するというのではなく、皆さんが先頭に立って中池見湿地という場所を、それぞれの視点で調査することになったのです。
実は、こうした調査活動を私たちも行っています。
その一つとして、NPO法人ウェットランド中池見は、「モニタリングサイト1000」という環境省が行っている活動に参加しています。
ここでは、皆さんが行おうとしている植物や鳥の調査であったり水の調査といったことの他に、カヤネズミやチョウといったことも調べていますし、赤外線自動撮影装置を用いた動物の調査などといったことも行っており、「モニタリングサイト1000」で行おうとしている調査の内、この場所に該当する全ての調査を行っています。
実は、これだけの調査を行っている場所は他にはなく、この中池見湿地の調査区分は「里地・里山」になるのですが、全国の手本となるような調査地点であるということで「コア・サイト(中核調査地点)」になっています。
ですから、これから皆さんが行おうとしている調査は、「コア・サイト」の調査の一翼を担うことになる調査、あるいは新しく組み入れられる調査になるかも知れないという可能性を秘めた、非常に重要な活動なのです。皆さんには、このことをしっかり意識しておいてほしいと思います。
ところで、こうした調査活動にはどのような意味があるのでしょうか?実は今日、皆さんの前に出て話をするはずであった者は、東京に行っています。
なぜ、東京に行っているかというと、日本自然保護協会が主催する市民調査に関する全国大会に、発表者として指名されたからです。
私たちは、様々な調査活動を行っていますが、それはこの中池見湿地に何があるのかをハッキリさせたいだけではありません。その調査を元に、本来あるべき自然とはどういうものなのか、また、そうした自然の状態に近づけることで、生物たちがより豊かに生活できる環境を整えようとしているのです。
間もなく始まるであろう発表では、普段行われている調査の結果を、どのように活用して中池見湿地の整備を行っているのかということを述べるはずです。
皆さんも、ただテーマに沿って何かを調べるというのではなく、この中池見湿地をどのようにしたら、生き物がたくさん住める場所になるかを考えながら活動してもらえたらと思います。

ミーティング

この日は大雨ということで、携帯電話から雨雲情報を得ながら、活動開始時期を探りました。
時間調整もかねて、各班でミーティングをして、手際よく活動できるように役割分担の確認や、活動内容の打ち合わせを入念に行いました。
今日の班活動は・・・
記録係、活動開始
役割確認、ヨシ!

雨の状態を見て、三々五々スタートしました。
班活動の様子をのぞいてみましょう。

3班は、保全活動の一環として「江ざらい」に挑戦です

「江」というのは、中池見湿地を流れる水路のことです。
中にはいると相当深いので、用意していただいた「ウェダー(胴長)」に着替えます。
作業場所の川下に当たる橋のたもとに網を張ります。
水路に茂るマコモを取り除く最初の仕事は「根切り」です。
縦横に張った地下茎を、長柄の大鎌で切って、マコモを引き抜きやすくします。
「根切り」がすんだら、クワを使ってマコモを引き抜きます
最初は怖々やっていた作業も、だんだん熱を帯び、最後は胸まで浸かっての大活躍です。
引き上げられたマコモの根
先の方ノ皮をむき
かじってみると、少し甘味がありました
作業が終わり網を引き上げてみると、期待に反して入っていたのはフナが1匹とザリガニが2匹だけでした
網にかかっていたフナ
フナは観察した後は放流。
一方、生態系を乱す恐れのあるアメリカザリガニは処分しました
2時間足らずの作業でしたが、水路(江)を少しばかり元の状態に戻すことができました。
ご苦労様でした。
作業前の様子
作業後の様子

5班は樹木調査を行いました

めぼしい木を見つけて、まずは幹周りを測定します。
どの木を調べたかがわかるように、標識をつけていきました。
雨の中、地道な作業を続けました。

7班は水調査を行いました

水温を測っている様子
あらかじめ決めておいたポイントや「ここはおもしろそう」と感じたポイントにつくと、まずは気温と水温、そして地面の温度を測りました。
チョット見にくいですがデジタル温度計で地面の温度を測っている様子。黄色い矢印の先に見えるのがコード、赤い○の中にあるのが測定端子。
次に行ったのは、透明度の測定です。
透明の塩ビ管の底にセッキ・ディスクと呼ばれる十字線が入った白い板を置いた測定器具で測りました。
上から採取した水を入れて、底にある十字線がどれくらいの深さまで見えるかを調べます。
きれいな水のようですが、測定してみると意外なほど透明でないことがわかりました。
最後に測定したのは、「pH」と「電気伝導度」です。「pH」というのは、酸性やアルカリ性といった性質を見るための値です。pH=7の時が中性で、その値が7より小さいと酸性であることがわかり、逆に7より大きいとアルカリ性であるということがわかります。
一般に、泥炭層がある湿地のpHは酸性であることが多いのですが、中池見湿地を取り囲む山の一つからは石灰岩(これが水に溶け出るとアルカリ性になる)が産出しており、どのような結果になるか楽しみです。
調査地点の水を採取しているところ
一方、「電気伝導度」というのは、電気の通りやすさを示す値です。一般に、不純物が少ないと電気は流れにくく、不純物が多く含まれると電気は流れやすくなります。つまり、電気伝導度を調べることで、その水の中に含まれている不純物が多いか少ないかということをがわかります。
ただし、ここでいう不純物というのは、水に溶かしたときに電気が流れるような物質のことです。
ここで採取される水には、草が腐ったもの(有機物)が多く含まれていますが、これは電気を流す性質を持っていませんから、ここでいう不純物には当たりません。
「電気伝導時計」
水の電気伝導度を測ります
「pHメーター」
水のpHを測るものです
ところが、中池見湿地の西側には国道8号線が走っており、ここで生じた物質の中には、水に溶けて電気を流す性質があるものがあります。
ということで、「電気伝導度」を調べるというのは、人間がどれくらい自然に影響を与えているかを調べることにつながります。
これらの値の測定は、専用の測定器具を浸かって調べました。
みんなが歩いたその横に・・・
中池見湿地には、このような白いボックスがいくつか設置されています。オリエンテーションの時、講師の笹木さんが話されたように、中池見湿地では色々な方が調査に訪れています。そうした調査方法の一つとして、今回行った水調査などを機械が自動的に行う装置を設置し、後でそのデータを回収してまわるという方法があります。
皆さんが調査した場所のすぐ横にあった白いボックスは、そうした調査のために置かれていたものです。

8班が行ったのは、鳥の調査です

そして顔を動かないようにして、眼の前に双眼鏡を置く感じで双眼鏡をかざします
双眼鏡の使い方は、まず、見たいものをしっかり見つめます
鳥を調査するときに必要なものは何でしょうか?
そうです。「双眼鏡」ですね。
というわけで、8班は外に出る前に双眼鏡の使い方から勉強しました。
といっても、学校に双眼鏡はありませんから、日本野鳥の会福井県支部からお借りしてきました。
外では、フィールドスコープも使い、「デジスコ」にも挑戦です。

今回は雨の中、しかも、それぞれの班で課題を持った活動をするといううことで、NikonのS10とCANONのS5の2台体制で行いました。
とはいえ、カメラの撮影総数は、574枚!!力作をご覧下さい。

夏の観察会のまとめ(筒井学芸員)

オリエンテーションの時のひどい雨も過ぎて、降ったり止んだりの中の観察会でしたがどうでしたか?
今日の観察会は辛かったなと思った人は手を挙げてください。
全員の手が挙がるかも知れないと思っていたのですが、そうでもないようで、チョット安心しました。
観察会の最初にもいいましたが、雨の日に観察会を行うというのはあまりないことなので、皆さんにとっては貴重な体験ができたのではないかと思います。
考えてみれば、晴れた日でさえ塾に行ったりテレビゲームをしたりと家の中で過ごすことが多いのですから、雨の日に外に出るなどというのは、日常生活では余程のことがない限りあり得ないことになってしまったのが現代の私たちの生活スタイルですよね。
ところで、2年生や3年生の人は去年の夏の観察会がどうだったかを覚えていますか?
去年の夏は「粘菌」を探してシボラ道を歩いていたわけですが、晴れていたとはいえ雨上がりで、暑さと湿気で相当疲れたことを覚えていませんか?
そう考えると、雨の日というのは決して悪くはないですよね。
雨に濡れたり、カッパを着ているので汗がたまってベタつきはしますが、晴れた日のように体力が奪われるというような感じはありませんよね。
皆さんは、それぞれの班でテーマを決めて活動しましたが、それとは別にこうした体験でえた感じというものもきちんと記憶しておいてほしいと思います。

調べるって何だろう(笹木観察指導員)

各班に別れての活動、ご苦労様でした。
今年の活動は、各班が別れて行動しますから、班が違うと何をしているか気になるところです。
ですから、皆さんはこれから帰って、それぞれの班で調べたことをしっかりとまとめてください。
そして、その結果を互いに見ながら、今日の中池見湿地がどのような状態にあったのか確かめ合ってほしいと思います。そうすることで、これまで見えなかったことも見えるでしょうし、それぞれの班の活動にどのような意味があるのかということも、別の視点から見えたりもします。
ところで、この中池見湿地はユネスコの「未来遺産」に登録されています。中池見湿地が「未来遺産」として登録されたのは、いうまでもなく多様性にあふれた豊かな自然が残されていることに他なりませんが、そうした自然が残された理由として、つい20年前まで続けられていた農業文化のたまものであり、そうした農業文化の継承も今ならばできるのではないかという観点も「未来遺産」登録の一因なのです。
さて、今日の班活動ですが、3班はもちろんですが、それ以外の班でも3班の活動の様子を見た班があると思います。実は、3班が行ってくれた活動というのは、「未来遺産」として後世に残すために行わなくてはならない活動の一つなのです。
中池見湿地という水が豊富なところで稲作を行おうとするとき、この場所から水を適度に排出するということが重要です。そのために作られた水路が「江」であり、これを常に水が流れる状態にしておくということを、かつてここでは行われていたのです。残念なことに、こうした活動が現在は十分に行えず、水路にマコモやショウブあるいはヨシといったものが生い茂った状態になっています。
2年生の皆さんは、中池見湿地の稀少種調べを行っているということを聞いていますが、何年か前までは確かに生育していた植物も、「江」が放置されてしまった影響で環境が変化し、今は見ることができなくなってしまったというのが現状です。こうした植物の生育環境を復元し、保全することにも皆さんが興味を抱いていただく、できればこうした活動に参加してくれることを期待します。

見えないものを見る力(吉田観察指導員)

今日は雨が降っていましたので、鳥の観察をしようにもうまくいきませんでした。
本当のことをいえば、雨のせいばかりではなく、夏場という時期の問題や観察する時間帯にも大きな問題があったのです。
まず夏場というのは、鳥がいなくなるわけではないのですが、非常に確認しづらい時期なのです。もし確認しようとするなら、早朝に観察に向かうべきです。
私は、この場所の鳥のモニタリング調査を行っていますが、朝の5時前にここに来て調査をすることもあります。とはいえ、皆さんにその時間に出てきなさいというのは無理なので、この時間帯に行ったわけですが、条件が悪い中で、しかも短い時間ではありましたが、13種の鳥を確認できたのではないかと思います。
いくつかの鳥は、双眼鏡やフィールドスコープを使って直接眼で見て確認しましたが、そうして確認できる鳥は少ないのです。多くの鳥は、木の陰であったり草原の中などに隠れてこちらの様子をうかがっており、こちらが見つけ、見ようと思ってレンズを向けても、すぐに飛び去ってしまいます。
では、どのように確認したのかというと、主に鳴き声でした。鳥にはそれぞれ独特の鳴き声がありますから、その鳴き声を聞くと姿は見えなくてもそこにどんな鳥がいるのかがわかるということです。その他にも痕跡、例えばここにある羽のようなものが落ちていると、その持ち主がここに来たことがわかります。
ちなみにこの羽は、どのような鳥の羽かわかりますか?
そうですね、黒い色をしているので「カラス」だということがわかります。ちなみに、この羽の臭いを嗅いでみると油臭い臭いがします。どうして油臭い臭いがするのかはわからないのですが、この臭いもカラスである証拠の一つです。
これから取り組む皆さんの観察会においては、「見えないからわからない」と思わず、見えないなら「どうすればわかるようになるのか」ということも考えながら活動できると、より一層大きな成果が得られると思います。
観察会を締めくくるに当たって、生徒代表から講師の皆さんに感謝の言葉を述べました。

ご支援、ありがとうございます!
これまでも報告しているとおり、本校の活動はSPPの講座型学習活動に採択していただいております。
これにともない本年度も事業主体である日本科学技術振興機構(JST)様より、水生生物観察セットを支援していただきましたのでその贈与式を行いました。
山内教頭から支援品に関する説明
生徒代表が支援品を受け取り観察の抱負を述べました
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