活動オリエンテーション(筒井宏行・学芸員)

中池見湿地を舞台にしたこの活動は、「みる」・「比べる」・「伝える」という三つの柱を立てて、その一つを活動のキーワードとして皆さんに意識してもらうようにしてきました。
というわけで、今年皆さんに意識してほしいことは「比べる」ということです。
さて、「比べる」ということはどういうことでしょうか?例えば、メダカとナマズを比べてみましょう。
そうすると、最初に気づくことは大きさであったり、色であったり、形であったりします。こうしたことをまとめて「形態」といいます。
さらに比べていくと、生活する場所であったり、食べるものであったり、といったことにも目が向いてくるはずです。こうしたことをまとめて「生態」といいます。
このように「比べる」ことによって「形態」と「生態」という二つのことがわかるのですが、これら二つは決して別々のものではありません。実は互いに深くつながっているのです。
例えば、メダカはその名前のとおり目が上向きであり、よく見ると口も上の方を向いています。これは、メダカが水面近くを見ているということであり、水面近くにあるエサを食べているということに都合よい形になっています。
逆に、ナマズは平べったく口は下向きになっていますが、ナマズが川底に住み泥の中などにいるエサを食べるには都合の良い形であるといえます。
このように、一見別々に思えることも実は一つのことを理解するためは重要な意味があります。
今年もまた、皆さんは8班に分かれて活動することになりましたが、これは決して別々の活動を行っているのではありません。中池見湿地というものをよりよく理解するために行っていることです。
そのためにも、それぞれの班の目的に従って中池見湿地のことをしっかり調査してください。

タンポポを調べよう(上野山雅子氏・自然観察指導員)

皆さん、こんにちは。
昨年も、ここでタンポポ調査を行いましたが、今年もいくつかの班に協力してもらい中池見湿地全域のタンポポ調査を行いたいと思います。やり方は昨年と同じなのですが、今年が初めてだという人がたくさんいますので、簡単な説明をしておきたいと思います。
まずタンポポには、在来種と外来種があります。
中池見湿地には在来種のタンポポがたくさん咲いています。これらのタンポポは、「虫媒花」といって虫によって花粉が運ばれ、受粉することによって種を作る性質があります。
これに対して、外来種のタンポポの特徴は、受粉しなくても種を作れるということです。
このことが何を意味するのかというと、在来種のタンポポは虫など豊かな自然が残る場所でないと生育できませんが、外来種タンポポはどんな場所でも生育できるということです。
ここに、去年皆さんが作っていただいた中池見湿地のタンポポ地図がありますが、実はここにそのことがハッキリと現れています。
中池見湿地の中で外来種がある場所は、この地図を見ると仮設道路とこのふれあいの里周辺です。そして、この場所に共通することは、人間の影響が大きいということです。いいかえれば、もともとあった自然に人の手が加えられた場所に外来種のタンポポが増えているということです。
こうした場所の一つに、「こもれびの道」があります。
今日皆さんが歩いてきた時に、タンポポがたくさん抜いてあるのに気づいた人もいるのではないかと思いますが、「こもれびの道」を昨年整備したことによって外来種のタンポポが侵入してきたために、これを抜いて中池見湿地の中に入らないようにしようとして行ったことなのです。
総苞の違い(左:外来種 中央:雑種 右:在来種)
さて、在来種と外来種のタンポポを、どうやって見分けたらいいのでしょうか。
それは、サクラの花でいえばガクに相当する部分をタンポポでは総苞(そうほう)といいます。二重になっているタンポポの総苞の外側、これを総苞外片(そうほうがいへん)といいますが、これが内側とピッタリくっついているものが在来種です。これに対して、総苞外片が180°反りかえっているのが外来種です。
葉の形状にも注目しよう
今日は、皆さんで手分けして中池見湿地での在来種と外来種のタンポポの分布を調べていただきますが、今話した在来種や外来種とは違う総苞の開き方をするタンポポがあることに気がつくと思います。
これが「雑種タンポポ」です。よく外来種を持ち込まないでほしいといわれますが、この理由の一つは在来種と外来種がかけ合わさって別のものができてしまう危険があるからで、「遺伝子のかく乱が起こる」といわれたりもします。
今日の調査では、こうした「遺伝子のかく乱」にも気がつく目を持ってほしいと思います。

班別ミーティング

班毎に別れ、観察指導員(TA)の方の指導で今日の活動についての確認が行われました。
今回は、今年最初の活動であり互いの自己紹介の後、班活動の目的が生徒から観察指導員の方に改めて伝えられました。
それぞれの場所に別れて、観察指導員の方と打ち合わせをしました。
1班
2班
3班
4班
5班
6班
7班
8班

班別ミーティングが終わり、早速観察会スタート。
班毎に決められた場所に向かい、調査を行いました。
先陣を切るのは子どもたち。
タンポポみつけた!
総苞はどんな感じかな?
タンポポのあった場所をマッピングしておこう。ここはどのあたりだ?
タンポポ調査は昨年も使った地図を使いました。
採ってます。撮ってます。気になったものは、写真を写したり、標本を採ったりしました。
昔ここにはね、炭焼き窯がありました。痕跡しか残っていませんが、どんな形か想像してみましょう。
上から垂れ下がった太いツル。生徒にかかれば、自然のブランコです。
大丈夫かい?倒木などを利用して架けられた橋です。おっかなびっくり、チョットした冒険気分です。
ふれあいの里で作業をする生徒達
仕掛けてあったカゴ網を引き上げ
生き物調査を行っているところです
カゴの中にはアブラボテなどの魚やサワガニなどが入っていました。
その後、一旦ビジターセンターに戻りました。
稀少種保全のため飼育されていたホトケドジョウを放流するためです。
水槽の中
容器の中
生息場所での放流の様子
湿原の中を歩く生徒達。彼らは、水の調査と・・・
次の調査地点に向かう生徒達。まわりは水浸し!!
水質調査では、水温や
伝導度、pHなどを調べています。
鳥の調査を行っています。
道の脇に生えている木の上に見つけたカラスの巣
フィールドスコープで捕らえたダイサギ
しばらくすると、飛んで逃げてしまいました

春の観察会のまとめ(筒井宏行・学芸員)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか?
今日の観察会は、各班で決めていた活動だけをした班もありましたが、それと並行してタンポポ調査をしてくれた班もあります。
それぞれの班で、内容が盛りだくさんの観察会になったと思います。
最初にも言いましたが、それぞれの班の活動は違っても、中池見湿地がどのようなところなのかを理解するために行っている活動ですから、他の班の活動を少しだけでも知っておくことは大切なことです。
そこで、今日の観察会でどのようなことができたのかを、順番に発表してもらいたいと思います。

1班

今日一番の活動は、ふれあいの里で飼育していたホトケドジョウを生息地に放流したことです。

2班

今日はツバキの花を比べることを中心に活動しましたが、このような花も見つけることができました。

3班

気温が高くないので、あまり花は咲いていませんでしたが、いくつかきれいな花を見つけました。

4班

今日は、色々なものを食べてみました。そして、ゼンマイやコゴミなどがあったので採ってきました。

5班

僕たちは、外来種とタンポポを調べていましたが、途中でこのヘビの抜け殻を見つけました。

6班

僕たちの班は、水質調査と鳥の観察を行ってきました。水質調査は、調査ポイントを少し増やすことにしました。

7班

タンポポ調査をしましたが、僕が見つけたタンポポは、在来種は少なく、外来種のものが多かったです。

8班

僕たちの班もタンポポ調査をしましたが、見つかったのはほとんどが在来種のタンポポでした。
はい、ありがとうございました。
各班それぞれに有意義な活動を行ったのではないかと思います。
そこで皆さんには、それぞれの班の活動に集中して取り組むことも大切ですが、他の班の活動も横目で見るくらいの余裕を持ってほしいということを伝えたいと思います。
このことを説明するよい例が、先ほどの7班と8班の発表です。この二つの班は、同じ様な場所で同じ調査をしましたが、全く異なる結果が出てきました。
ここで重要なことは、どちらが正しいのかということではなく、さまざまな情報が得られたということです。
タンポポ調査については、この後学校に持ち帰って、昨年と同じように中池見湿地のタンポポ地図が出来上がると思いますが、そこからは自分たちがどういう場所を調査したのか、調査した場所は去年との違いがあるのかなど、「比べる」ことがたくさん見つかると思います。
さまざまな視点で「比べる」ことは、理解を深めることにつながると思いますし、さらに深い理解を得るためには次にどのようなことをすべきなのかといった今後の活動計画も立てられるのではないでしょうか。
各班の活動内容は、今日のように何か共通したことがあるとは限りませんが、同じものを別の視点で観察する機会はあるはずです。他の班がどのような活動をしているかということを知っていれば、自分たちの活動に関わりはなくとも気づくことが増えます。
こうした「気づき」を増やすということは、当然そのことに興味を持って活動している班にとっては貴重な情報になるのですが、自分たちの活動においても必要とする情報を敏感に感じ取る力を伸ばすことにつながります。
ですから各班で、あるいは各学年で今日何をしたのか、そして何を見たのかをじっくり話し合ってみましょう。チョットした雑談の中で、何か大きな成果につながるものが見えてくると思います。

観察会、その後・・・

タンポポ調査を行ってくれた各班のデータは、学校に帰り全てを地図の上にプロットしてみました。
昨年行った調査と同じ様な結果になったところもありますが、去年と違う結果も出てきました。

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