夏の観察会は、予定通り6月25日(土)快晴に恵まれて実施されました。
とはいっても、ここに至るまでには気をもむことがたくさんありました。
とりわけ天候については、梅雨時期ということで雨の心配をしていたのですが、天気予報では梅雨前線通過にともなう大雨の恐れがあり雷も予想されるということで、「中止」の二文字も頭から離れませんでした。
しかし、予報に反して天候が崩れる様子もなく、前日の昼過ぎから激しい雨が降り始めると予想されていたにもかかわらず雨の様子がなく、とりあえず決行の方針を固め野外活動については現地判断をするということにしました。
ところが、その日の夜には竜巻注意報が出されました。
これには、決断を誤ったかと冷や汗が流れました。
多分、参加する生徒達も明日はどうなるんだろうと心配していたのではないかと思います。
こうして迎えた観察会当日ですが、心配された雨も多少は降ったものの晴れ上がり、風のほうもおだやかな様子で何を心配する必要があったのかと思うほどの状況でした。
とはいえ、全てが万全ということではありませんでした。
観察会の準備に朝早くから入られた方から、湿度が異常に高い(28℃、83%)という報告をいただいたのです。
このままでは熱中症の危険があるということで、野外活動に関しては予定時間を30分短縮した11時までを目途とし、11時30分には集合場所に集まることが打ち合わせされました。
こうしてスタートした観察会ですが、喜ばしいことがありました。
支援品の双眼鏡(左)と
透視度計
それは、総合学習をサイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)に指定し支援いただいている独立行政法人・科学技術振興機構(JST)様から、観察会で活用してほしいということで双眼鏡(NikonトラベライトEX8X25CF、8台)と、水質調査に使う透視度計(1台)の提供を受けました。
そこで観察会に先立ち、支援品の披露贈呈式が行こなわれました。
まず、山内教頭より「皆さんの活動が多くの人に支えられているという象徴の品です。感謝の気持ちを持って、大切に使ってください」という言葉とともに、支援品が生徒代表に渡されました。
生徒代表からは、「いただいた品物を有意義に使って、私たちの活動を深めていきたい」という抱負が述べられました。

活動オリエンテーション(筒井宏行・学芸員)

皆さんは、ここに来て「暑い」と思いましたか、それとも「涼しい」と感じましたか、どちらでしょう。
今年は、電力不足という言葉をよく聞くようになり、ここでも節電対策ということで、今は冷房を止めていますが、ここに来るまで山道を歩いてきた皆さんにとっては、涼しいとまではいかないかも知れませんが過ごしやすい感じなのではないでしょうか。
ところで、この「暑い」とか「涼しい」というのは人間はどのようにして感じるのでしょうか。
まず思い浮かぶのは「温度」ですね。
しかし、それだけで「暑い」とか「涼しい」ということを感じているのでしょうか。
先程もいったように、ここには冷房がかかっていませんから、多分この中の気温と外の気温とは同じ状態なのではないかと思います、皆さんは外に比べたらこの中は快適だと感じたはずです。
何が違うのでしょうか。
この中と外の状態を「比べる」と、日光が当たっているかいないかという違いに気がつくのではないでしょうか。
つまり、「暑い」か「涼しい」かの違いを温度だけでなく光の当たり具合でも判断しているということです。
また、皆さんは湿度という言葉を知っていると思います。
この湿度によっても「暑い」か「涼しい」かの違いが生まれます。
私たちは暑くなると汗をかきますが、これは汗を出すことによって熱を外に出していると考えられます。さらに、風が吹けば汗が乾きますが、このとき汗は水蒸気に変化するときに身体から熱を奪っているのです。
ところが、湿度の高い状況では汗が水蒸気に変化することができなくなるのです。
ということは、本当ならば奪われるはずの熱が身体に残り「暑い」状態が続くことになります。
このような状況で起こるのが「熱中症」です。
この梅雨の晴れ間といわれる時期は、生物にとって一番活気あふれる時期です。
皆さんの目の前には本当にたくさんの生き物たちの姿が飛び込んでくるはずです。
本来ならば「そうした生き物の姿を真剣に見つめてください」とだけいいたいのですが、今日は「水分補給を忘れないで」という言葉をつけ加えたいと思います。
帽子をかぶり、胸元を少しゆったりとし、タオルで汗を拭くなどして熱中症にならないように気をつけて活動してください。

水の不思議(吉田一朗・自然観察指導員)

皆さん、こんにちは。
今日は水の話しをしたいと思います。私はこの中池見湿地で鳥の調査を専門に行っています。
その私がなぜ水の話をするのかと不思議に思うかも知れませんが、実はこの写真に秘密があります。
これは見ての通り、冬の中池見湿地の全景を写した写真ですが、何か気がつくことはありませんか。そうですね。雪が積もっていないところがありますね。でも、チョットおかしくありませんか。池が見あたりませんよね。
普通ならば、川や池といったところにはあまり雪は積もらず、田んぼなんかには雪が積もっていますよね。
しかし、この写真を見ると、川や池のところにはしっかり雪が積もっていて、逆に雪が積もるはずの湿地の中に何本かの川のような筋が見えるのです。私はこれを見て、人が作った水の流れとは別の水の流れがあるのではないかという印象を持ちました。
こうした疑問を持っていた今年の2月に、敦賀市で環境省が行っている「モニタリングサイト1000」という環境調査の全国大会があり、そこにこられていた水環境の専門委員である名古屋女子大学の村上哲生先生に投げかけてみました。
すると、村上先生は水温を記録する装置を送るから調べてもらえないかという話になったのです。
水環境の調査については、ここにおられる笹木さんが中心となって毎月1回の調査を続けているのですが、それとは別に水温だけを調べる調査をすることになりました。
調査ポイント
標識
回収された水温記録装置
調査の方法は、私が気になっていた場所に水温を記録する装置を設置し、約1ヶ月間放置するというもので、春の観察会が終わった時にその装置を回収し、村上先生のところに送り返しました。
ところで皆さんは、たかが水のことで何を大騒ぎしているのだと思うかも知れません。
しかし、水はこの中池見湿地に生きる多くの生命を支えているものであり、この水環境が変化することで、そこに生きることができる生物までもが変化してしまうのだということを考えると、本当に重要なことなのです。
この中池見湿地では71種のトンボが確認されていますが、トンボのために何か手を加えたわけではない場所で、これだけ多くのトンボがいる場所は他にはありませんでしたし、このことはそれだけ多様な水環境が中池見湿地にはあったということを示しているのです。
現在は、残念ながら確認されているトンボの全てを見ることはできません。これは、かつて耕作が行われていた中池見湿地に人の手が入らなくなり、トンボが求める多様な水環境が少しずつ失われてきた結果だといえますし、多くの生き物が水によって支えられていることの証拠でもあります。
皆さんは、理科の時間に「食物連鎖」という話を聞くと思いますが、こうした昆虫の種類が変われば、それを食べる小動物の種類にも影響を及ぼし、さらにそれをエサとする例えば鳥などの種類も変わってしまうのです。
こうした「食物連鎖」を支えているのが「水」だということです。
ところで、こうした重要な働きがある水ですが、たかが水温を測ったくらいで何がわかるのかと思うかも知れませんが、そこからは色々なことが見えてきます。
水温の変化を示すグラフ
装置は、1日に何回も自動的に水温を測定してくれたのですが、そのデータを取り出してグラフにすると、周期的に変化していることが見て取れます。さらによく見てみると、水温の変化が激しい場所とあまり変化しない場所があることも分かりました。
この変化の原因について考えると、まず周期的な変化は気温の変化によるものだと考えられます。日中日差しが強くなり気温が上昇するにともなって水温も上昇するはずで、逆に日がかげり気温が下がると水温も下がるのではないかということです。
次に温度差についてですが、温度差が大きい場所は水の動きが乏しい場所ではないかと想像されます。水が溜まったような場所であれば、水温は気温の変化に応じて大きく変化すると考えられるからです。これに対して、温度差の変化が小さな場所は水の動きがある場所であったり、温度変化があまりない地下水がしみ出している場所ではないかと想像されます。
しかし、話はこれで終わったわけではありません。
一見すると、ほとんど同じように見えるのですが、温度差が大きい方と小さい方では周期がずれていて、水温のピークは気温が一番高くなる14時頃だと考えるのですが、温度差が小さい方の水温のピーク時間が22時だったということも記録されています。
どうしてこのようなズレが生じるのでしょうか。これは、分析に当たった村上先生も謎だとおっしゃっていました。また、同じように変化する温度差の大きい方のグラフも3日目に一方だけが異常に水温が低下しています。
このとき何が起こったのでしょうか。これもまた、謎です。調査を行うということで、何か一つの謎を解くことができるかも知れませんが、全ての謎を解くことはできません。
この水温調査のように、逆に新たな謎が突きつけられるものです。
こうした意味において調査活動というものにはきりがないということがいえると思いますが、きりがない調査活動を続けることで、今の私たちには分からない自然界のさまざまなつながりを一つ一つ見つけていくことができるのではないでしょうか。
これから行う皆さんの活動の中でも、一見無関係に思えるようなことであっても、自然界の中では何かしらのつながりがあるということを意識して活動してください。

班別ミーティング

班毎に別れ、観察指導員(TA)の方の指導で今日の活動についての確認が行われました。

班別ミーティングが終わり、早速観察会スタート。
さっそく、班毎に決められた場所に向かい、調査を行いました。
水田雑草を調査する3班
樹木調査に向かう2班
最初の小手調べは杉林
最後は野性に目覚めました
4班はどこへ行くのかな?
4班の活動は食べること
今食べているのはヘビイチゴです。
色々な色のクワの実!!さて、一番おいしいのはどれでしょう~か?答えは、食べたら分かります。
6班は水の調査と
鳥の観察をしました。
いただいた双眼鏡を使った、簡単デジスコにも挑戦!!
「涼しくって気持ちいい~!」
寝っ転がっているのは7班のメンバー
でも、遊んでいるんじゃありませんよ。園内にある民家の環境調べをしているところです。
実は、この民家3階建てです。知ってましたか?
ハシゴをかけて
屋根裏も探検して、気がつきました。
民家の探検が終わり、向かった先は中池見湿地の中央を横切る「中江」という水路です。
ここで、「江ざらい」という作業を体験しました。
涼しくもあり暑くもあり
本当に大変な作業でした。
作業中に校長先生が見えられ、みんなを激励してくださいました。
観察が終わり、あっちで座り込み、そこでは覗きこみ、こちらではガヤガヤと話し込みながらの観察会。
気温も湿度も高く、最後の方は少しグロッキー気味だったのかな。それでも、集合場所に集まってきた顔は少し誇らしげでした。

夏の観察会のまとめ(筒井宏行・学芸員)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか?
今日の観察会は、本当に内容が盛りだくさんの観察会になったと思います。
今日の観察会で、どのようなことができたのかを発表してもらいましょう。

1班

シュレーゲルアオガエルを捕まえました。

2班

胸高周囲が2mを越える大きな木がたくさんありました。

3班

今日は晴れていたので、35種類の花を見つけることができました。

4班

ヘビイチゴの実を食べました。毒はないけど、味もありませんでした。

5班

中池見湿地に繁殖しているブタナの花摘みをしました。買い物袋一杯にとれました。

6班(鳥班)

今日はカイツブリを見つけ、写真に撮ることができました。

6班(水班)

池の水のpHを測定したら、9.6というアルカリ性を示したのでビックリしました。

7班

中江の江ざらいをしました。暑くて大変でした。

8班

田んぼの中など、湿地らしい場所を探しながら歩きました。
はい、ありがとうございました。
各班それぞれに有意義な活動になったのではないかと思います。
さて、観察会もこれで終了なのですが、今皆さんは「暑い」と感じている人は手を挙げてください。
では、「涼しい」と感じている人は手を挙げてください。
おおよそ半々ですね。
今日の活動では、7班が「環境メーター」という機械を使って温度・湿度・照度といったデータをとってもらいました。
そのデータによると、観察会が始まった頃は気温が35℃で湿度が75%でした。
確かに暑いはずです。
その後、風が吹いてきて涼しいと感じた人も多かったのではないでしょうか。
ところが、その時の気温は37℃になっていました。
それでも涼しいと感じたのはなぜでしょう。
最初に話をしたとおり湿度の影響で、この次点では50%に下がっていたのです。
皆さんも知っているように、日本は細長い国土をしており北から南まで気候は土地ごとによって違っています。
しかし、そうした大きな違いの他にも、この中池見湿地という場所に限っても、場所によって気象データは異なります。
こうした違いを「小気候」というのですが、この中池見湿地には小気候が異なる場所が本当にたくさんあると考えられます。
こうした違いがあるからこそ、中池見湿地という場所には生物の多様性が保たれているのだと思います。
今日は、こうしたことを体感できた一日であったのではないかと思います。
最後に、指導員の方にお礼を述べて観察会を終了しました。

余談(その1) 伝統農法による田植えを体験!!

田植えに関する説明を聞く生徒
夏の観察会を前にした5月28日(土)に、「中池見人と自然のふれあいの里」の民家前の田んぼで、7班の有志による田植えを行いました。
「株踏み」をする生徒
最初に行ったのは株踏みです。現在は客土などを入れて左の写真のような深さの水田ですが、本来のここは非常に深い湿田でした。
そこで、「田起こし」は行わず「株踏み」をして耕作面をつくっていました。
整地がすんだら、一般の水田同様に田植えを行いました。ただし植え幅は、一般の水田では20㎝程ですが、ここでは少し広めの30㎝程で植えました。
株踏みを済ませ整地された水田
田植えをする生徒
田植えをした水田
(観察会の時に撮影)

余談(その2) 龍谷大学の先生が来られました!!

観察会が行われた6月25日ですが、観察会の指導をお願いしているNPO法人「ウェットランド中池見」の方に、もう一つの依頼が舞い込んでいました。
それは、龍谷大学・里山学研究センターの副センター長である法学部・教授の牛尾洋也先生とそのゼミの皆さんが中池見湿地の現状を見てみたいというものです。
自然観察などというと、「理科」の勉強かと思ってしまうのですが、この日来られた皆さんは法学部ということですから「社会」の勉強の一環として中池見湿地に来られたことになります。
そして、付属中学校の皆さんが行ったように笹木さん達の案内で中池見湿地を見て回られました。
皆さんがやっていることは、このように将来大きな広がりを持つ取り組みなのだということを感じてほしいと思いました。