前線通過にともなう天候の悪化が心配された秋の観察会ですが、予定通り10月1日(土)に秋晴れの下で実施することができました。
元気よくビジターセンターに向かう生徒
到着した生徒から整列します

気がつきましたか?

ふれあいの里にきて、何か気がつきませんでしたか?そうです。茅葺き屋根が修理されていたのです。
この作業の様子については、http://blog.nakaikeminet.raindrop.jp/?day=20110909を見てください。
作業前の様子
作業終了後の様子

活動オリエンテーション(筒井宏行・学芸員)

前回も話したと思いますが、中池見湿地を舞台にした皆さんの活動は、「みる」・「比べる」・「伝える」というキーワードを意識してもらうように計画しており、今年は「比べる」ということにポイントを置いています。
「比べる」時には、比べたいものを並べることができれば良いのですが、何もかもを並べて比べるというわけにはいきません。その様なときに大切な力の一つに「想像力」、つまりイメージする力というものがあるのではないでしょうか!?
例えば、皆さんに今日はどんな天気ですかと聞いたとき、皆さんは何と答えますか?
そうですね、「さわやかな天気」、「少し肌寒い感じ」、「おだやかで気持ちがいい」、などいろいろな答えがありますね。
皆さんは、今感じていることを、そのまま口にしただけのように思うかも知れませんが、多分心のどこかで「一昨日や昨日は曇り空で雨も降ったりしていたけれど、今日は秋晴れの乾いた風が吹いていているから」さわやかな天気だと思ったり、「そういえば、今年の夏は暑かったけれど、今日は長そでを着ていても平気なくらい」の寒さになっていると感じているのではないでしょうか!?
今日本では地震や台風による災害が発生し、その復興に向けた努力が行われていますが、このような、災害を未然に防ぐという意味で古くからの「言い伝え」などが見直されています。
今の皆さんにとってはどうでもいいと思うことかも知れませんが、何かで体験したことを記憶に止めておく、あるいは記録に残しておくということは、非常に大事なことではないでしょうか!?
そうした記憶の一つとして、この前の台風の時の中池見湿地の状態を皆さんに話しておきたいと思います。まず、その日の降水量ですが200㎜だったそうです。本当にひどい雨の降り方で、目の前の田んぼの水位も、みるみる増えていくという状態でした。風もおさまった頃に中池見湿地を見て回ると、江に流れる水もあふれんばかりでした。そして、皆さんがここからシボラ道に向かうときに渡る三つ叉の橋は、水の浮力で浮き上がった状態でした。
その橋は、今日も通っていくと思いますが、そのときに今の話を想像しながら渡ってください。
さて今日の観察会ですが、それぞれの班別活動の他に二つのことに挑戦してください。
一つ目は、農作業体験です。

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7班の皆さんは、この前の田んぼで米作りを行っており、2週間程前に稲刈りをすませました。今日は、脱穀をやろうということで昔使われていた足踏み式の脱穀機と唐箕という道具を準備しています。
現在は、こうした作業をコンバインによって行っているわけですが、実はこうした昔からの道具の智恵を生かしてできているのです。
このことを理解してもらうために、少し古い型のコンバインも準備してあります。これらをよく見比べてほしいと思います。
二つ目は、「赤とんぼ」探しです。
各班毎に、中池見湿地でよく観察される「赤とんぼ」7種類ほどをまとめたものを用意しました。
私たちが「赤とんぼ」といっているのは、からだの色が赤いトンボをさして言っているだけで、実際にはこのようにたくさんの種類があるのです。
中池見湿地で確認されているトンボの数は70種を超え、からだが赤いトンボだけでも20種近くいますが、それが全部見られるわけではなく、よく見かけるもので見分けがつきやすいものを選んだというわけです。
皆さんの活動の合間にトンボを見かけたら、少しよく見てみましょう。
この観察用の資料は、「中池見湿地のトンボ -観察ガイドブック-」(中池見湿地トラスト 編集)を参考にして、本校で作成したものです。

中池見湿地に関する伝承(笹木進・自然観察指導員)

皆さんは、ラムサール条約という言葉を聞いたことがありますか。
今失われつつある湿地などの水生生態系を守り、伝えていこうという目的でつくられた国際的な約束です。
そして、特に貴重な場所については登録して大切にしようという取り組みが行われています。
皆さんも活動しているこの中池見湿地ですが、私たちはこのラムサール条約に登録されるべき場所だと考えています。そして、この考えは日本国内ばかりではなく、国外の研究者からも賛成の意見が寄せられており、敦賀市も河瀬市長を始めラムサール条約登録に向けて、積極的に活動されています。
ところで、このラムサール条約ですが、水辺に生息する貴重な動植物を守るためだけの条約であると思っていませんでしょうか。
実は、2000年にスペインのバルセロナで行われた第8回締約国会議で、「湿地の文化的価値としての位置づけ」という画期的な決議が行われています。この中で27項目の指導原則というものが示されているのですが、その中のいくつか紹介すると次のようなものがあります。 この決議を受けてというわけではありませんが、私たちもこの中池見湿地を管理していた方々からいろいろな話をうかがって、それをまとめるということを行っています。
そうした話の中から、今日は二つの話を皆さんに紹介したいと思います。
まずは、「伝統的方法に学ぶ」ということに関して「江掘り」の話をします。

中池見では田んぼの水の確保、調整に大変苦労した。田んぼはみんな平らで同じように見えるんやけど、一枚一枚微妙に高さがちがうんや。1~2センチも違うと田んぼの水管理も変わる。中池見では「江」と呼ぶ水路掃除も大切な行事だった。年3回、村中総出で「江掘り」をした。「江掘り」いうんは、川底にたまった泥や水路に生えたヨシやマコモなどをさらえ上げることや。これをやらんと水が流れなくなって、田に水がひけんようになる。そこで、田植えの前、梅雨明けの頃、そして、お盆の頃と3回やった。橋の所が一番深くって、昔は元気な若い衆が褌一丁になって入り、村からは褒美にさけを出したものだ。

先ほどの話にもあったように、ここはすぐに水が溜まるような場所ですから、その水をいかに排水するかということが重要であったということがわかります。
次に、「歴史的構造物」ということに関して「江尻の水門」の話をしたいと思います。
この水門の近くが、この春の大雨で崩れてしまいました。どうしたらいいものかと思い悩んでいたところ、ふくいユネスコ協会の方が聞きつけてボランティアを申し出ていただきました。
現在は、そのおかげもあって水が流れる状態にはなっています。
さて、この水門ですが、深い沼地だった所の水を抜くと同時に水位調節をするためのもので、こうした開発は1600年代の中頃から始まったと考えられ、寛文3年(1663年)の池見新田改では25石4斗あまりの収穫があったと記録されています。
さらに「敦賀郡東郷村誌」には、次のような記載があります。

江戸の酒井藩邸(当時敦賀は、小浜・若狭を所領した酒井家の地籍となっていた)へ中間奉公にいった樫曲の者がいた。江戸を前に箱根の関所を通るとき、役所の番人から名前と住所の他、土地の名物は何だと問われた。その男は、「五百石、水門一つ。畦に松茸出てござる」と答えたところ、役人は「何と素晴らしい在所に住まいする者か」といっておどろいたという。

この男がいった「水門」が「江尻の水門」であると考えられ、この水門による水位の調整ができるようになったことで500石といいますから、おおよそ90t(90,000㎏)の米の収穫がこの中池見湿地であったと考えられます。
さらに、山に囲まれた中池見湿地ですから、その畦には松茸が生えることもあったということですから、今から考えてもおどろくばかりです。
以上で、中池見に伝わる伝承に関する話を終えたいと思いますが、今話したようなことが行われていた場所がこの中池見湿地であるということを、良くおぼえておいてほしいと思います。

班別ミーティング

班毎に別れ、観察指導員(TA)の方の指導で今日の活動についての確認が行われました。

班別ミーティングが終わり、早速観察会スタート。
さっそく、向かった先は茅葺きの民家です。
ここで、7班が昔ながらの足踏み脱穀機を使った作業を行っていましたので、その見学をしました。
農業指導を行っていただいた中池見会の山本さん
これが足踏み脱穀機
山本さんから使い方の指導を受けました
続いて、唐箕を使った選別にも挑戦しました
唐箕と呼ばれる風を使った選別機
唐箕を使って選別しているところ
前からワラクズが飛び出しているのが分かりますか
近くには、コンバインも置かれていました。
普段見ることのできない場所もカバーを開けていただき、見ることができました。
そしてここでは、コンバインとしての四つの働きが、全て昔から伝わる技術を上手に使っているということを解説していただきました。
ちなみに、コンバインとしての四つの働きというのは次のことです。

--------脱穀をする前に--------

米作りの作業に関しては、これまでに報告しているとおり、7班の有志によって5月には田植えを、7月には草取りを行ってきました。
そして、観察会に脱穀をするために9月17日(土)に稲刈りに挑戦しました。
稲刈り前の田んぼ
稲刈り開始
稲刈り後
ミズアオイ
ヒエ(赤丸)とイネ
無農薬での栽培でしたので、刈り取り後には絶滅危惧種のミズアオイやオモダカを始めとした、多くの植物が生育していました。
ところで、水田雑草として、一番の嫌われ者なのがヒエです。
ヒエはイネと見分けがつきにくいのですが、農家の方は手際よく抜き取っていきます。
どうして見分けているのかというと、「分けつ」の仕方です。
イネの根本
ヒエの根本
イネは株が別れてもそれぞれが真っ直ぐに伸びていくのですが、ヒエは株別れするとそれぞれ別の方向に伸びていきます。
農作業をするときは、単に雑草を見分けるというだけでなく、どのように生育していくのかといったことも知った上で作業が進められるということなのです。
ところで、刈り取られたイネはどうしたかというと・・・乾燥させるためハサバに持っていき、ハサ掛けをしました。
畦に置かれた稲
一輪車でイネを運ぶ生徒
二人組でハサ掛けをする生徒
作業後の様子(緑の部分が稲刈りをしてハサ掛けしたものです)

農作業体験の後は、民家の構造についての話を聞きました。

いろりについての話を聞く生徒
雪対策が施された窓
板がはめ込めるようにしてあります
その頃、他の班はというと
それぞれの場所で、調査を始めたようです。
標識調査についての説明を聞いているところ
その中でも、今回は鳥の「標識調査」が行われているということで、その様子を見ようと、いつもの鳥班の他に2班と8班も行動をともにしました。
しかしながら、この日は風が強くて網にかかる鳥がいませんでした。
そこで、標識調査で何を行っているかということと、網場の様子を見学した後、水鳥の観察を行いました。
途中、ぬかるんだ場所もありましたが、これは序の口。
完全に水没した場所も歩きましたから
鳥はどこかな~?
双眼鏡で捕らえたダイサギ
1班は今日も川の中に入って、生き物探しです。
4班は「椿油」しぼりに挑戦です。
実を割って
種を取り出し
紙の上にのせ
木槌でたたくと
確かに、油が
しみ出しています
6班の活動は水調査です。
透明度計で透明度を
測っているところ
何か話し合っているみたいですが
赤とんぼの種類についてでしょうか
観察を終えてあっちで座り込み、そこでは覗きこみ、こちらではガヤガヤと話し込みながらの観察会。
それぞれの班が集合場所に集まってきました。
小さな写真をクリックすると拡大表示します。力作をご覧下さい。

秋の観察会のまとめ(筒井宏行・学芸員)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか?
今日の観察会は、本当に内容が盛りだくさんの観察会になったと思います。
今日の観察会で、どのようなことができたのかを発表してもらいましょう。

1班

いつものように、後ろ谷の方で水生生物の調査をしました。アブラボテやメダカの他にモクズガニなどを捕まえました。

2班

僕たちの班は、いつもの樹木調査の他に、鳥の調査の見学などを行いました。

3班

稲刈りの終わった田んぼに入って植物調査をしました。そして、どうして水田に絶滅危惧種が多いのかという宿題が出ました。

4班

今日は、ツバキの実から椿油をとることに挑戦したり、栗おこわを食べさせてもらったりしました。

5班

南米原産の外来種を見つけました。手に持っているのがニシキグサとオオニシキグサです。この他に、コニシキグサもあります。

6班(鳥班)

いつもは二人で調査していましたが、今日は2班と8班も一緒に調査できたので楽しかったです。

6班(水班)

いつものように、水の調査を行いました。いつも歩いていた道の草刈りがしてあったし、天気も良かったので気分良く調査ができました。

7班

中池見会の山本さんから民家の暮らしということで、いろり横の貯蔵庫のこと、窓の羽目板のこと、戸袋のことなどを教えてもらうことができました。

8班

僕たちの班も鳥の観察をしながら、いろいろ歩き回りました。カイツブリやダイサギが見られて楽しかったです。
はい、ありがとうございました。
各班それぞれに有意義な活動になったのではないかと思います。
今日の活動ではしっかりと見るということの他にイメージするということにも挑戦してもらいました。
もうこれは「死語の世界」に入るのかも知れませんが「KY」という言葉を皆さんは知っていると思います。
そうですね。
「空気を読めない」人のことを言うのですね。
この言葉を聞いて、自分のことじゃないよなと思った人もいると思いますが、この中に「空気を読める人」は本当にいるのでしょうか。
確かに、私たち人間同士が出し合っているサインというか合図というか雰囲気といったものを感じることができる人はいると思いますが、サインとか合図といったものを出しているのは何も人間だけではありませんよね。
例えば、今日は時に気をつけて見てほしいといった「赤とんぼ」というのは、秋になったぞという自然からのメッセージではないでしょうか。
この意味において、3班の皆さんが観察した花というのも同じような意味を持っていると思います。
こうした何気ないことに気づくと言うことは非常に難しいことであり、ほとんどの人は無視して通り過ぎてしまいます。ということは、自分じゃそんなことはないと思っているだけで、ほとんどの人は空気を読めない「KY」な人だということ何じゃないでしょうか。
ですから、皆さんにはもっと空気の読める人になってほしいと思います。
そこで、もう一度「赤とんぼ」の話に戻りたいと思いますが、「赤とんぼ」は春に中池見湿地のような場所で羽化して、夏の間は高い山の上で暑さをしのぎ、涼しくなった秋になるとここに戻ってきます。
でも、誰がそのことを調べたのでしょうか。
実は、これまで誰も調べたことがなかったのです。
偉い人が言うから間違いないだろうと思っていただけなのです。
ところが今年の夏、この問題を解決した人がいます。
勝山市の環境保全コーディネーターの前園泰徳さんがその人で、前園さんが7月に「赤とんぼ」を捕まえて羽に印をつけて放した「赤とんぼ」を、8月に法恩寺山に登り調査を行っていた東邦大学理学部生命圏環境科学科3年の菅原みわさんが捕まえたのです。
これによって、それまで言われてきたことは間違いのないことだと言うことが、やっと証明されたというわけです。
こうしたことは、多分皆さんが学校で習っていることにもあるのではないかと思います。
学校で学ぶことは、まず身につけるように努力すべきですが、身につける時に「どうしてだろう」と思うことがあったなら、そのことをしっかりおぼえておくと良いと思います。
そのことを深く調べる機会が持てたとしたら、そのことで何か大発見をすることができるかも知れません。
皆さんの身の回りには、そうした大発見の種がたくさん散らばっているということを感じてほしいと思います。

勝山市におけるトンボ調査に関すること、および写真(図1)については、次のサイト資料を引用しました。

http://www.city.katsuyama.fukui.jp/docs/uploads/data/4478_data_lib_data_110805135911.pdf#search='赤とんぼ 勝山市 白山'赤トンボの移動初確認 勝山の豊かな自然後世に


補足情報

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機会あるごとにお伝えすることですが、本校の総合学習「ふるさと敦賀塾」は多くの皆さんに支えられて活動させていただいています。
今回はこのことに関して、皆さんのみには全く触れることのない活動を一つ紹介したいと思います。
さて、笹木さんの話の中で登場した「江尻の水門」ですが、中池見湿地にとっては非常に重要な歴史的遺産といえるでしょう。
その水門を少し下流に下がった場所ですが、この春の大雨で土砂の崩壊が起こり、水が流れにくい状態になってしまいました。
このことに気がついたNPO法人ウェットランド中池見の皆さんは、水が流れるように土砂をかき出す作業を行われましたが、いかんせん人手不足で思うように作業が行えませんでした。
このことを聞きつけられたのが、中池見湿地を「ユネスコ未来遺産」に推薦し後押ししてくださった「ふくいユネスコ協会」の皆さんでした。
暑い日が差す7月17日(日)に、「ふくいユネスコ協会」の皆さんも協力していただいた作業が行われ、今の状態に戻すことができたのです。
今回、足下の心配をすることなく観察会を行えたのには、このようなことがあったのだということを知ってもらうと同時に、こうした活動を続けていただいている多くの皆さんに感謝の気持ちを持ってもらえたらと思います。