シトシトと雨が降る中、ビジターセンターに到着
本年度最後の野外実習になります冬の観察会を、予定通り11月19日(土)に実施いたしました。
足下の水気を拭いて館内へ
おだやかな天気になることを期待したのですが、天気予報通り、前線通過にともなう大雨の中の観察会となってしまいました。
そこで8時30分からの指導者ミィーティングで、野外活動に関する打ち合わせを行い、集合場所に11時30分には集まることとし、生徒の体調管理に気を配りながら活動することを打ち合わせしました。

活動オリエンテーション(筒井宏行・学芸員)

今日は、中池見湿地最後の活動となります。
そこで、改めて中池見湿地を見直してみようと思います。今日は、本年度最後の観察会ということで、皆さんが活動しいる中池見湿地についてのお話をしたいと思います。
まず、皆さんが中池見湿地と聞いて思うことの一つに、生物多様性という言葉があると思います。
この言葉は、この観察会で何度も耳にしたことがあるからです。中池見湿地は、絶滅危惧種をはじめとする生物が多く生息す場所であり、それらを皆さんは目にしてきたと思います。こうた生物の多様性を支えているのが、すり鉢のような地形であり、そこに集まる水環境の多様性といことも忘れてはなりません。
そして、こうした要素をまとめて、生態系といいます。この生態系に支えられて私たちは生かされているわけですが、生態系から受ける様々な恩恵のこを「生態系サービス」といいます。例えば、私たちは農作業行うことによって作物を得ているわけですが、これも生態系らのサービスを受けてのことです。この他にも、自然に触れ心が落ち着くといった効果や二酸化炭素を吸収して酸素を放するといった働きもこれに入ります。
こうしたサービスを金額に換算すると、何千億円にもなるいう計算をした経済学者もいます。私たちは、こうしたサースを、使用料を払うこともなく受け取っていることになります。
さて、このように大きな恩恵を与えてくれる生態系を守ろという動きがあります。それは、生態系が大きく変わろうとているからです。生態系は、そもそも少しずつ変化しているわけですが、ここ何十年間の変化は急過ぎるということが心配されており、このままでは全ての生き物が絶えてしまうかも知れません。このように重要な生態系を守ろうという取り組みはいくつもありますが、中池見湿地のような生系を守る条約に「ラムサール条約」というものがあるということを皆さんも知っていると思います。ラムサール条約は、1971年にイランのラムサールで開催された「湿地及び水鳥の保全のため国際会議」において採択された条約で、正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地関する条約」で、環境を守る条約としては非常に先進的なものであるといえます。
中池見湿地を、2012年の6月にルーマニアで予定されている第11回締約国会議で、ラムサール条約に登録してもらおうという動きがあります。
ラムサール条約の登録を受けるには、水鳥やそれを支える生態系があること、稀少な生き物の生地であること、地形の希少性があること、などといった条件があります。
そして、こうした重要な場所を守るために二つの条件が課せられています。その一つが、国によって守られているということです。現在、中池見湿地は加賀越前海岸国定公園の一部に編入するという話が進んでいます。
もう一つの条件は、地元や地域の人から賛同を得ているかどうかということです。ここにいる皆さんは、まさに地元や地域の人であり、皆さんがこの中池見湿地を大切な場所でありここを守っていこうという気持ちを持っているのかということです。
皆さんの力で、この中池見湿地がラムサール条約に登録され、長くこの場所を保全していってほしいと思います。

*~*~*~*~*~*~*~*~* ラムサール条約について【補足】 *~*~*~*~*~*~*~*~*

ラムサール条約に登録されるには条件がありますが、登録された後にもすべきことがあります。
それが、次の三つです。
保全・再生

水鳥の生息地としてだけでなく、私たちの生活環境を支える重要な生態系として、幅広く湿地の保全・再生を呼びかけています。

賢明な利用

ラムサール条約では、産業や地域の人々の生活とバランスのとれた保全を進めるために、湿地の「賢明な利用(Wise Use:ワイズユース)を提唱しています。賢明な利用とは、湿地の生態系を維持しつつそこから得られる恵みを持続的に活用することです。

交流・学習

ラムサール条約では、湿地の保全や賢明な利用のために、人々の交流や情報交換、教育、参加、啓蒙活動を進めることを決議しています。
このことをCEPA(Communication, Education, Participation and Awareness)といいます。

参照:環境省(http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/1.html

自然は作れるのか(桑本順子・観察指導員)

皆さん、こんにちは。
いま、中池見湿地のこれからの話がありましたが、私からは中池見湿地の昔はどうだったかを話したいと思います。
私は、この中池見湿地に関わりを持ってから、皆さんがデジタルカメラを用いて、この中池見湿地で何を見てきたのかを記録しているように、いろいろな場面をビデオに撮影してきました。
こうした記録を残すということは、様々な意味を持っていると思いますが、人と自然の関わり方についていろいろなことを考えさせてくれます。これを自然の側からいうと「人的インパクト」という言葉になります。
ところで、皆さんは何歳ですか?3年生は・・・15歳ですか!?
実は、私が中池見湿地を記録し始めたのは15年前からですから、ちょうど皆さんと同じ位の年月に渡って、ここで記録をとっていることになるわけす。
そこで、今日は私が撮ったビデオを編集して、「自然はつくれるか?」という約20分の作品を作ってきましたので見てください。
最初に映し出されたのは15年前の観察会の様子です
観察ルートになっているシボラ道の様子
柿の木があるあたりです
サワオグルマやオオニガナが咲いているあたりです
田んぼにはこんな光景が
今いるこの場所も15年前は建物も藁葺きの家も何もなかった
開発計画が持ち上がり、貴重な植物は移植して残そうとしたのだが
現在はというと
移植した場所の現在の様子
本当に絶滅しそうな絶滅危惧種
人の手が加わらなくなった現在の様子
貴重な植物が守れなかった理由は地下に
こうしてできあがった、スポンジのような土地が中池見湿地
熱心にビデオに見入る生徒たち
皆さん、どうでしたか?今見てもらったように、この中池見湿地は15年間で大きく変わってきました。
一時期、人の手で何でもできるというおごりから貴重な植物を移植することも行われましたが、水を選んで生活する植物たちにとって、それは大変な苦しみだったようです。
一方で、中池見湿地という場所は、農作業という人の手によって守られていた環境だったということも見逃せません。少なくとも15年前には、人と自然が互いを尊重して思いやることが行われていたということを忘れてはならないと思います。そして、ここにいる皆さんたちが、自然との豊かな関係を作っていってほしいと願っています。

班別ミーティング

班毎に別れ、観察指導員(TA)の方の指導で今日の活動についての確認が行われました。
1班
2班
4班

班別ミーティングが終わり、早速観察会スタート。
さっそく、班毎に決められた場所に向かい、調査を行いました。
こちらは、3班です
今日はなにやら顕微鏡を使って観察する模様です
雨が降りしきる中、外に出て何やら採取を始めました
採ってきたのはデンジソウ
デンジソウの胞子嚢をプレパラートにのせて
さあ、観察です
見えたのは
こちらは6班。今日も水調査に出発です。
今年4回目の調査。
役割を決めて、テキパキと調査しています。
こちらは7班の様子です。
まずは、火をつけることからです。燃えやすいワラといってもなかなか火がつきません。
中池見会の山本さんから、「ワラをかためるように置きなさい」と、早速アドバイスが飛びます
こちらは、米をといでいるところ
中池見会の高木さん藤本さんに指導していただきました
こちらは炊き込み御飯の具材を準備です
いろりで火をたいているので、煙がもうもうです
準備の合間に、茅葺きの家の環境調査もチャンとしました
いろりの向こうでは
炊き込み御飯が炊きあがるまでの時間を使って、ワラ縄を作ることに挑戦しました
個性あふれるワラ縄が完成しました
手早くコツをつかんだ生徒は、ワラジづくりにも挑戦しました
観察が終わり帰りを急ぐ生徒たち
山陰の雨に当たらない道を選んで集合場所に向かいました
水没した道も、何のその
本当ならば、あっちこっちで座り込んだり、ガヤガヤと話し込みながらの観察会なのですが、今日ばかりは足早に歩くしかありませんでした。
観察指導員の方も、天気と時間を見計らいながら、それぞれの班の活動を後押しして頂きました。

今回は雨の影響もあって、デジタルカメラを使えた班が、4つしかありませんでした。
それでも、カメラの撮影総数は、なんと159枚!!力作をご覧下さい。
小さな写真をクリックすると拡大表示します。

冬の観察会のまとめ(筒井宏行・学芸員)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか?
途中激しい雨が降って、思い通りの活動ができなかった班もあると思いますが、今日の観察会で、どのようなことができたのかを発表してもらいましょう。

1班

今日は、雨が降っていたので、ふれあいの里で飼育していたホトケドジョウの放流を行いました。

2班

今日の活動は、木の実を集めることでした。
これだけの種類の木の実を見つけました。

3班

顕微鏡を使って、デンジソウの胞子嚢の観察をしました。
何ともいえない形をしていました。

4班

ムカゴやドングリなどの木の実を見つけて、その実を割って中がどうなっているのかを見てみました。

5班

今日は、湿地の中に生えているセイタカアワダチソウを抜く作業をしました。2000本くらい抜けました。

6班(鳥班)

今日は雨が降っていたので、鳥の声を聞きながらどんな鳥がいるか調査しました。

6班(水班)

今日は、雨が降っていたので、酸性になっている場所が多かったです。

7班

今日は、いろりで火をたいて、炊き込み御飯を作りました。
また、待っている時間を使って縄ないにも挑戦しました。

8班

ビデオにうつっていた場所を歩いて、15年前はどうだったのかを詳しく教えてもらいました。

はい、ありがとうございました。
皆さん、今日は雨の中の活動でしたが、どうでしたか?
私は、雨が降ってくれてよかったなと思いました。どうしてだか、わかりますか?
もし、雨が降らなかったら、どうなっていたでしょうか。たぶん昨日のように、本当に寒い一日になっていたと思います。さらに、風が吹いたりしたら、寒くてからだが動かなくなっていたかも知れません。
どうして、その様なことがいえるのかというと、水は熱を運ぶという大事な役目をはたしているからです。皆さんは、この中池見湿地という場所で様々な体験をしてきました。楽しかったこともあれば、嫌なこと苦しいこともあったと思います。
そして、その体験一つ一つには大切な意味があるのです。その意味が何なのかを考えながら、発表会に向けてまとめていってほしいと思います。

これで中池見湿地での活動を終わるということで、指導していただいた方々に生徒会長から感謝の言葉を述べました。

こうして、本年度の中池見湿地での活動を終えました。

自然相手は大変です!

「上手に習え、下手はうつる」
古典芸能の世界には、物事を学ぶ際の戒めに、このような言葉があるそうです。
この言葉には二つの意味があって、一つ目の意味は、物事の本質を見極めることが大切で、表面をなぞっていただけでは上達しないということです。
そして、もう一つの意味は、どうせ習うなら一流の人に習わなくてはならない。そうでないと、中途半端なことしか身に付かないということです。
この後者の意味を考えると、学ぶ側ではなく、教える側の問題として心に刺さる戒めの言葉だともいえますが、この話は別の機会に譲ることとして話を先に進めます。
この総合学習「ふるさと敦賀塾」の取り組みはというと、中池見湿地という本物の自然が残る場所での学びであり、まさに「上手」に教えを受けているわけです。
しかし、自然というのは気まぐれです。今回の活動も、大雨の中の活動となってしまいました。
この総合学習「ふるさと敦賀塾」という活動においては、それもまた自然の厳しさを体験する場であると捉え、雷鳴がとどろいていたり警報が発令されるなど、相当の危険が予想される場合を除き、順延や中止といった対応を執らない方針で臨んでいます。
なぜなら、こうした体験は、今年3月に起こった東日本大震災のような災害に見舞われた時、いま何ができるのか、そして、これからどのようなことを準備しておけば自らの安全が確保できるかといったことを素早く判断する力になってくれると思っているからです。そして、今回の活動でも雨具を持たずに活動に参加した生徒がいたのを見ると、危険回避や危機管理といった感覚を養うためにも、このような不快感や苦しさをともなうような自然体験を今後も続ける必要性を感じました。
とはいえ、活動する生徒の安全や健康に対する配慮は絶対に必要です。今回もそうですが、活動開始の2時間以上前から担当者の方が現地入りして、観察場所となるであろうコースの下見や準備を行っています。また、携帯電話の天気情報サイトをチェックして、時々刻々と変化する情報の収集に努めています。
そして、万が一の場合を考えて、活動内容の変更(屋内でできる活動は屋内で、野外での活動は雨宿りできる場所へ移動など)や観察ルートの判断(山ぎわの道など風雨を避けられるルートへ)などを各班の指導員にお願いし、臨機応変の対応をとっていただきました。
こうしたサポートのお陰で、全ての野外活動を無事に終了することができたのです。

【ちょっと余談ですが・・・】
今回の観察会は、下の天気図を見ての通り、停滞前線の到来前に終わることできました。
ですから、観察会終了後に中学のサッカー大会が行われる予定でしたが、こちらの方は大雨の影響で中止になりました。

http://weather.yahoo.co.jp/weather/chart/ より)