京大に向けて一条通を歩く生徒
秋晴れの10月26日(水)に、1・2年生による京都大学総合博物館研修を行いました。
京都大学 到着

まず目に飛び込んできたのは、いうまでもなく時計台記念館と楠です。

「でっか~い!!」
歓声を上げて楠にかけよる生徒
楠は本校のシンボルツリーですが、京都大学のシンボルツリーでもあります。
何か不思議なつながりを感じさせてくれます。
ということで、この楠の前で集合写真を撮ることにしました。

1年
2年

京都大学総合博物館

はじめに
河野先生は、本年度の開講式を報告したレポートの最後で紹介させていただいた通り、「中池見の自然を楽しもう」という講座がスタートして以来、いろいろとサポートしていただいている先生です。
今回の京都大学総合博物館の見学に関しても、「秋季遠足研修で京都に行くようになったのですが・・・」とお伝えしたところ、「是非とも博物館を見学しなさい。私がガイドするから!」と、何とも気軽にお引き受けいただき、博物館見学のコーディネートをしていただきました。
ちなみに、河野先生は今年開館10周年を迎える京都大学総合博物館の構想を練り、資金調達に奔走された方です。当然、その功績を称えて初代館長に就任されたのはいうまでもありませんが、まさにこの博物館の「生みの親」といってもおかしくない方です。
河野先生のご活躍のほんの一端をここに紹介するとともに、今回のご尽力に対し、この場をお借りして深く御礼申し上げます。
さらに、今回の見学に際しましては京都大学総合博物館の現館長である大野照文教授も、ご多忙にもかかわらず公務の合間を縫って後に紹介します通り、ご挨拶を頂きました。
さらには、研究者のみが閲覧を許可される地下収蔵庫の見学も快諾いただきました。
まさに「特別待遇」といっていい配慮を頂きましたことを、大野館長はじめ博物館の関係者の皆様に、この場をお借りして深く感謝申し上げます。

京都大学総合博物館につくと、今日の見学ガイドをお願いしていた京都大学名誉教授の河野昭一先生がすでにお待ちでした。
これが京都大学総合博物館です
今回お世話になる河野先生
入館手続きを済ませ、早速館内の見学を行いました。

■地球の鼓動

断層
まず、このパネルを見てみましょう。ここに赤い線で示してあるのが「断層」です。
皆さんも断層という言葉は知っていると思いますが、実際にどのようになっているかというと、この下に展示してあるようになっています。
断層の説明をされる河野先生
これは、皆さんがいるこの場所と、すぐ裏手に見える吉田山の間で見つかったものを発掘し、はぎ取ってきたものです。
日本には、このような断層がいたるところにあり、これによる地震がたくさん起こっています。
3月に起こった東日本大震災の例を出すまでもなく、わたしたちは日頃から、地震などの災害に備えることが大切だと言うことがよくわかるのではないかと思います。

■化石から見た進化

さあ、ここにあるのが何か解りますか?
そう化石ですね。昔の生き物が土の中に埋まって、柔らかい部分は腐り、かたい部分だけが残って石となったものです。
ここには二枚貝、特にカキの進化について紹介をしているコーナーです。
これを見てわかることは、皆さんが普段何気なく見ているものが、はじめからそうなっていたというわけではないということです。
二枚貝は5億年前から地球上に生息するといわれていますが、この長い長い時間をかけて、環境に合わせて生き残るために、体の仕組みを変えてきたのだということです。
さあ、こちらにはゾウの化石が展示してあります。
ゾウの化石といっても、日本にはゾウなんていなかったんじゃないかと思う人がいるかもしれませんが、1万年ほど前までは日本にもゾウがいたことがわかっています。
ここにあるのは、岐阜県の瑞浪で発見されたゾウの化石で、こうしたゾウは「ナウマンゾウ」と呼ばれています。
ナウマンゾウの背までの高さは約2m前後で、アフリカゾウ、アジアゾウよりも体は少し小さかったようですが、ここにあるナウマンゾウの牙の化石を見ると、ナウマンゾウは、アジアゾウなどと比べ、とても大きな牙を持っていたと考えられます。
生徒の視点は不思議です。展示されていた標本の下に書いてある英文に興味を持ったようです
Trumpet if you like elephants ! さて、どういう意味なんでしょうか。

■京大が生み出した霊長類学

京都大学の研究スタイルの特徴として、実際に野外に出て活動するという伝統がありこうした研究の成果のひとつにサルとかゴリラ、チンパンジーの研究をする霊長類学とう分野を確立したことがあげられます。
このテレビ画面では、京都大学霊長類研究所で暮らしている天才チンパンジーのアイゃんの様子が映し出されています。
チンパンジーは非常に賢い動物で、棒をアリの巣に突っ込み、その棒にくっついてくアリを食べるといった具合に道具を使うことも知られていますが、アイちゃんはこのよな知能トレーニングをしています。
それを体験できるのが、ここにあるテレビ画面です。
さっそく生徒たちも挑戦しました

■芦生の森の花と昆虫の共生系

私の研究の基礎を築いた場所の一つは、アメリカの東海岸です。
ここにある写真を見ればわかりますが、日本の森と非常に似た景観をしています。そして、日本で見かけたことがある植物をたくさん見ることができます。
例えば、春に咲くカタクリの花ですが、日本には1種類しかありませんが、アメリカの東海岸にはこんなにたくさんの種類があります。
このように、よく似た景観を持つ場所を世界中で調べて見ると、まん中の地図のように分布しているということがわかりました。そして、これらの植物が氷河期を生き残った植物であるということを突き止めたのです。
さて、皆さんの家や学校の近くにも山や森などがあると思います。そこではたくさんの昆虫を見かけると思いますが、その昆虫たちは森の植物たちと深い関わりを持って生活しています。
例えば、花粉を運んだり、ボディーガードのようにからだを守ってもらったりというふうにです。そのかわりに、植物たちは昆虫にミツを提供しています。このミツを昆虫に見つけてもらうために、植物たちはある工夫をしています。
ここに、同じ花を写した2枚の白黒写真がありますが、右側の方は花の中心が黒くうつっています。これは何をしたのかというと、ヒトの目には見えない紫外線も見られるように撮影したのです。
実は、昆虫たちはヒトには見えない紫外線を見ることができます。植物は、ヒトには見えないけれど昆虫には見える色を使って、ミツがある場所のサインを送っているということなのです。

歓迎の言葉

河野先生に芦生の森の解説をしていただいている時に、公務の合間を縫って京都大学総合博物館の大野照文館長がお見えになり、お言葉を頂戴しました。

大野館長
皆さん、こんにちは。
皆さんはこの博物館にどれ位の資料があるかわかりますか?エッ、30万点ですか。
かなりいい線ですね。京都大学ができて110年くらいになりますが、その間に集まった学術標本や資料が、想像してくれた数の約10倍程がおさめられています。これは、大学の施設としては国内最大級のものです。
さて、皆さんがいるここは、自然科学関係の資料が展示してある場所ですが、この他にも文化史や技術史に関する展示も行っています。また、特別展としてエジプト考古学の展示もしています。
京都大学では分野が異なる研究者であっても、互いに協力し合って研究を行うということが良くあるのですが、こうしたスタイルが、この博物館にも見られると思います。
時間が許すかぎりゆっくりと見て回り、京都大学の魅力を感じてください。そして、ここの見学の後には河野先生の案内で地下収蔵庫も見学することになっていますが、初代館長の河野先生の案内で見学をしている皆さんですから、将来はこの京都大学に入学してくれることを期待しています。

■熱帯雨林の生物多様性と共生系~ランビルの森の自然~

ここは、マレーシアのボルネオ島にある「ランビル国立公園」の熱帯雨林を再現した場所です。
ここにとても大きな木がありますが、これは実際に生えている木の型を取ってつくった模型です。
幹を支えるようにしているついたてのような部分は「板根」という根が発達したものです。
また、皆さんが聞いている音は、実際に現地で録音した音で、1日に1回降る大雨(スコール)の様子も穂刈と音で再現しているんですよ。
さて、京都大学の研究者たちは、こうした地面から観察するばかりではなく、木の上に縄ばしごを張り巡らして林冠部といわれる場所の調査を行っており、その様子は2階に再現してあります。
さて、2階には現地で採取された昆虫標本も展示されています。ここには、君達が好きそうなカブトムシやクワガタから、嫌われ者のゴキブリまで非常にたくさんの標本を展示してありますからよく見ていってください。
全ての標本に採取された日時や場所、そして採取されたものの名前が細かく書かれています。むこうにあるアリの標本につけられたラベルは、本当に細かな字で書かれていてビックリしますよ。

■地下収蔵庫見学

一通りの見学を終えた後、三つのグループに分かれて地下収蔵庫を見学させていただきました。
本来ならば、ここで目を輝かせていた生徒の様子をお見せしたいところですが、写真撮影等が禁止されている場所でもありますので、文章だけでお伝えします。

さあ、これから地下の収蔵庫を案内します。
普段この場所は、許可をもらった研究者しか入れません。入るときは、ここにある大きなノートに、名前と何を調べたかを書くことになっています。
最初のページを見てみると、1995年に北村四郎先生と村田源先生が最初に来られたということがわかります。
皆さんにとっては知らない人かも知れませんが、日本にあるたくさんの植物を調べられて、新しく見つかった植物の名前を数多くつけられた、とってもすごい先生方なのです。
どれ程すごいかを見てみましょうか。
ここには、このようにたくさんのキャビネットがあります。たくさんの資料を保管するためですが、少しでも場所を有効に使うために、このように電動で動く仕組みになっています。
チョットここを空けてみましょう。ここには、これだけの標本が保管されていますが、何か気がつくことはありませんか。そうですね。
この中には、いくつか赤い色がついた袋がありますよね。これは何だと思いますか。
これは正基準標本(タイプ標本)と言って、人類の知識上に初めて登場した最初の標本であり、人間で言うところの戸籍原本に当たるものです。
さて、ここにある赤い帯の入った袋の標本を見てみましょう。
ここにはシナノと書いてありますから長野県で採取されたものでしょう。ラベルを見ると、1933年(昭和8年)8月26日に飛田さんという人が採取した標本だということがわかります。そして、先程紹介した北村先生が、Saussureakirigaminensisと名付けられて、はじめてこのような植物があるということになった標本だということです。
ちなみに、キリガミネンシス(kirigaminensis)と名付けられたということは、霧ヶ峰で見つけられたのだということなのでしょう。
田川基二氏採集のキノクニスズカケの正基準標本
Veronicastrum tagawae (holotype)
せん苔地衣類タイプ標本
Lecanora melanocheila (Hue) Miyawaki
このようにして、京都大学総合博物館では、研究者達が持ち帰った貴重な標本を資料として大切に保管しているのですが、中でもこうした赤い印がついたタイプ標本が多いということは、この博物館が非常に貴重なものを保管しているという証拠で、博物館の格付けをするときの基準になっています。
しかし、こうしたタイプ標本だけが大事かというとそういうわけでもありません。
こうして皆さんの顔を見ると一人一人違いますが、植物だって育った場所の違いなどによっていろいろな個性が表れてきます。ですから、皆さんが丁寧に標本をつくってこちらに送ってきてくれたら、それはそれで重複標本という貴重な資料になるのです。そうした標本は、例えば別の博物館にはない資料だとすると、そうした博物館に提供されたり、こちらにない資料と交換してもらったりするという具合に利用されたりもします。

■見学のまとめ

今日は少しかけ足で見学してもらいました。
皆さんの中には、もう少しゆっくりと見たいと思った人もいると思いますが、今度またここを訪れてください。
今の皆さんは、少しお金を払っていただかないと入れないのですが、京都大学の学生さんになるとタダで入れますから、大野先生が言われたように京都大学に入学できるように頑張ってください。

授業の合間を縫って本校の卒業生で、京都大学に今年入学した石橋君が来てくれました。

皆さん、こんにちは。
石橋といいます。
ちょっとレベルの高い大学に入ってしまったので、授業について行くのが大変かなと思っていますが、京都大学は本当に楽しいところです。
これ位の大学しか行けないかななどと考えずに、少し上を見て頑張ってみてください。
大学に入ってみると、大学の本当の良さを実感できますよ。
皆さんの活動を、遠くからですけれども、応援したいと思います。
こうして、2時間を超える博物館見学を終了しました。
この後は、京都大学構内の見学を続ける班、平安神宮に参拝する班、京都動物園まで足を伸ばす班に分かれて行動しました。
集合場所は、京都大学の学生食堂「ルネ」としました。
ここでは、ちょっと背伸びをして大学生気分で昼食をとってもらおうという企画です。

■京都大学 出発

しっかりとお土産も買って、バスを待つ生徒たち
全員が昼食を済ませたところで、隣にある京都大学総合体育館前の階段に集合して、帰りのバスを待ちました。
大学の博物館見学や班別の自由行動など、普段はしないことばかりで少しお疲れ気味の様子でしたが、どこからとなく充実感が漂ってきました。

謝 辞
今回の企画に関しましては、文中に紹介させていただきました京都大学名誉教授の河野昭一先生、京都大学総合博物館館長の大野照文教授、他博物館職員の皆様のご支援をいただきました。
この他にも、学生食堂「ルネ」を利用するに当たりましては、関係者の皆様から多くのアドバイス(13時くらいまでは学生で混雑するので利用をその後の方がゆっくりとできるだろう等)を頂戴し、生徒が混乱することなく食事をとるように計画することができました。
また、当日は迷っている様子の生徒に暖かく声をかけていただき、どのように注文をしたり精算すればよいかを教えていただきました。このような様々な配慮を頂いたことに対して、この場をお借りして関係者の皆様に、深く感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。