活動オリエンテーション(筒井宏行・学芸員)

中池見湿地を舞台にしたこの活動は、「みる」・「比べる」・「伝える」という三つの柱を立てて、その一つを活動のキーワードとして皆さんに活動してもらっているのですが、6年目を迎えた今年キーワードは「伝える」です。
さて、「伝える」とは、どういうことでしょうか。2年生と3年生の人は、今年1月に帝京科学大学の小林先生から、色々お話をうかがっていると思いますが、大切なことは心を動かされる体験をするということではないでしょうか。そのために必要な心構えは何かというと、素直な心を持つということだと思います。素直な心を持つというのは、口で言うのは簡単ですが、いざやってみようとするとなかなか思うようにいかないものの一つです。
例えば、皆さんは地下から湧き出てくる水の中に何か生き物がいると思いますか。確かに、この中池見湿地では泥炭層があるので何かいそうな気もしますが、それでもクモクモ仙人の泉の水を見れば非常にきれいな水で、そこに何か生き物がいるとは思いません。
でも、本当にそうなのでしょうか。
実は、私たちはその水を何も調べていないから何も知らないだけなのかも知れません。
何故、このような話しをするのかというと、先週の土曜日(4月21日)に「日本の湿地を守ろう」というシンポジュウムが敦賀で行われ、そこで京都大学大学院の加藤真教授(生態学)のお話を聞いたからです。
講演される加藤教授
中でも一番おどろいたのは、体長が1㎜しかないハイバラムカシゲンゴロウ(榛原昔源五郎?)という生き物がいるということです。この生き物は、昨年に新種記載されたばかりの地下水生のゲンゴロウで、静岡県大井川の伏流水のくみ上げ水から見つかったそうです。

Click Enlarge

地下水にすむ生物
(加藤教授のスライドより)
ムカシゲンゴロウの仲間は日本固有の種であり、その名前のとおり原始的で極めて小型の地下水性甲虫のことで、地下水の中で生活していますから目は退化し、泳ぐ能力もありません。
現在は、上水道の整備などで見つけることが困難な生き物ですが、ヒョッとすると、中池見湿地にもムカシゲンゴロウがいるかもしれないと思うとワクワクしませんか。
そして、ここには何もいないだろうとか、そこはこんな場所だからといった先入観をもって接したら、こんな発見はなかったとは思いませんか。
この活動も6年目を迎え、ここにいる皆さんは中池見湿地のことについておおよそのことが分かってきたのではないかと思いますが、今一度初心に返って、先入観のない目で中池見湿地を見つめ直してください。
そうすれば、今までにはない驚きも見つかるはずで、それを伝えなくてはという気持ちも強くなるのではないでしょうか。

タンポポを調べよう(田代美津子氏・自然観察指導員)

皆さん、こんにちは。
昨年も、ここでタンポポ調査を行いましたが、今年もいくつかの班に協力してもらい中池見湿地全域のタンポポ調査を行いたいと思います。
皆さんは、今年の2月に行われた課題研究の発表会でタンポポ調査のことを発表しましたが、その他にも、ここにある調査報告書にも皆さんのデータが生かされています。後の人は見えないかも知れませんが、これは「タンポポ調査・2010西日本」という調査の報告書です。
このように、皆さんの活動というのは、単に皆さんの活動だけに止まらず、専門家を巻き込んだ大きな調査の一環でもあるのです。この意味において、皆さんに行ってもらうタンポポ調査には、今年新たな意味が付け加わるのではないかと思います。
それは、この中池見湿地がラムサール条約の登録湿地の国内候補地の指定を受けるかも知れないからです。もし、国内候補地になれば、7月にルーマニアで行われるラムサール条約の締結国会議(COP11)において、ラムサール条約の登録湿地になる可能性もあります。
このことは、中池見湿地が国際的に見ても貴重な自然が残る湿地であるということが認められるということです。
と同時に、私たちには国際的にも貴重な湿地環境を保全し守っていくという責任が科せられということでもあります。
そこで、一番の問題となるのは外来種の侵入です。特に、今日皆さんに調査してもらうタンポポなどは、在来種と簡単に交雑して雑種のタンポポを作るというやっかいな外来種です。
皆さんが行ってもらう活動は、在来種のタンポポ、外来種のタンポポ、そして雑種のタンポポがどこに生育しているのかを調べることと、見つけた在来種以外のタンポポを駆除するということです。
さて、調査のやり方は昨年と同じなのですが、今年が初めてだという人もいますので、簡単な説明をしておきたいと思います。
まず、タンポポの見分け方ですが、タンポポの花の下の部分を見てみましょう。サクラの花でいえばガクに相当する部分をタンポポでは総苞(そうほう)といいます。二重になっているタンポポの総苞の外側、これを総苞外片(そうほうがいへん)といいますが、これが内側とピッタリくっついているものが在来種タンポポです。
これに対して、総苞外片が180°反りかえっているのが外来種タンポポです。そして、雑種タンポポですが、本当は遺伝子を調べないと分からないのですが、ここではその様な分析はできませんから、在来種と外来種の中間の開き方をしているもののことだと理解してください。
総苞の違いに注目しよう(左:在来種 右:外来種)

観察ミーティング

今回は、平日に行われたということもあって、全ての観察指導員の方に来ていただくことがかないませんでしたので、とりあえず今日の活動についての確認が行われました。
今回見えられた観察指導員の方
打ち合わせに耳を傾ける生徒

観察ミーティングが終わり、早速観察会スタート。
班毎に決められた場所に向かい、活動を始めました。
先陣を切るのは子供たち
何か見つけたのでしょうか?
後から来られる講師の方を待つ生徒

1班 水生生物の調査をしました

泥の中を網ですくいます
小川に入って活動する生徒
網ですくったり、小石をどけてみたりと
何をしているのかな?
何がいたか、確認しているところでした
ヤゴに、エビに、・・・
たくさんの生き物を見つけることができました

2班 水質調査を行いました

元気一杯!、やる気満々!!
水温は何度?
水質調査では、伝導度(左)、pHなども調べます
日当たり良好!!のんびり寝転がっているわけではありませんよ
透明度を測っているところです
楽な場所もあれば
大変な場所もあります

7班 伝統的農業文化の調査ということで、園内にある古民家の調査を行いました。

民家の良さは「明」と「暗」。このコントラストが際立っている点でしょうか
その後は、民家周辺のタンポポ調査を行いました
雑種や外来種のタンポポは抜き取ります
そんなに広い場所ではないのですが、かなりの量を除草しました
まさに春の一コマ。
やるべきことはたくさんありますが、時にはのんびりと風景を見ることも必要です

8班 湿地環境の調査と保全活動をテーマに頑張ります。

ということでやって来たのは、ヒメオドリコソウが繁殖している場所です。
これがヒメオドリコソウ
名前や雰囲気はかわいいのですが
男子グループは
水たまりで何か生き物を見つけたようです

草本調査を行う3班と外来種調査を行う5班のメンバーが核になって、4班と6班も一緒になって中池見湿地のタンポポ調査を行いました。

上級生は慣れたものです。
指定された分担場所にサッサと向かいました。
遅れてついて行くのは、1年生。あたりをキョロキョロしながらついて行きます。
最後尾は観察指導員と引率教員です。
目的地に着く頃はすでに何かを見つけて観察指導員を待ちかまえています
手分けしてタンポポを観察する生徒と調べたタンポポを記録する生徒
タンポポがあった場所をマッピングしたのは昨年も使った地図です
タンポポがあった場所をマッピングしたのは昨年も使った地図です
カゴワナを調べていました。まぁこれも調査の一環でしょう
外来種や雑種のタンポポを除草したので
もっている袋も、だんだん重くなります
「あっ!!」叫び声が上がりました。
指さす方向を見ると
サギが飛び立っていました
はじめは嫌そうな素振りもありましたが
探し始めると、止まりません
ドンドンあたりを探し回り始めました
除草の方も真剣です。
こちらも、やり出したら止まりません
先にいこうと声をかける観察指導員の方の声も耳には届いていないかのようです
ちょっと一休み
(トトロの木にて)
「お~い!危ないぞ!!」
思わず声をかけたくなりますが、ここは水没している仮設道路です。
ただし、トラロープの向こう側は池で深くなっているので立ち入り禁止です。
「足が~~!!」
観察指導員の方の多くが女性です。
そうしたこともあってか女の子たちも積極的に活動しています
上級生たちにつられ1年生たちも色々質問しています

観察すんで

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか。
非常に天気もよく、まさに観察会日和だったのではないでしょうか。
当然、それぞれの班の活動も順調に行え、それぞれの成果を得られたのではないかと思います。
そこで、今日の観察会でどのようなことができたのか、班毎に今日の活動の振り返りをしましょう。
ビジターセンターに戻ってきた生徒たち
今日写した写真のチェック
指示に従って、記録をまとめ直す生徒
その傍らでは水槽ながめ

春の観察会のまとめ(筒井宏行・学芸員)

はい、皆さんご苦労様でした。
各班それぞれに有意義な活動を行ったのではないかと思います。
さて、今回はビジターセンターがスタートとゴールになっていましたので、多くの班が中池見湿地をグルッと一回りしたのではないかと思いますが、印象はどうですか。
いつもは片道だけだったので、随分広い場所だと思っていた人もいると思いますが、実際に一回りしてみると、大して広い場所ではないということに気がついたのではないかと思います。
そして、多くの班でタンポポ調査を行ったわけですが、先ほどまとめた地図を見ると、調べた場所によって、それぞれに特徴があるということに気がつきませんでしたか。
どうしてこのような特徴が生まれてきたのかということはわかりませんが、一つの要因に「人的インパクト」、つまり、人間が活動することによって何かしらの影響を自然に与えた結果だということが考えられます。
最初に、皆さんには「伝える」ためには「驚き」が必要であり、「驚き」を体験するには先入観のない「素直な心」が必要だということを話しました。
私は、今回7班に帯同して活動のようすを見てきましたが、先入観があったら大変な失敗をする場面に遭遇しました。
7班は、そこに見える民家の周辺でタンポポ調査を行っていたのですが、調べてみると全部が外来種のタンポポでした。そこで、手当たり次第にタンポポを抜いていたのですが、ビックリしたことに、一株だけ在来種のタンポポがあったのです。
これと同じように、自分たちが調べたデータだけで「中池見湿地はこのようなものだ」と思いこんでいたらどうなるでしょうか。
ましてや自然は常に変化するもので、今年調べたとおりのデータが、来年も同じように得られる保証はどこにもないのです。
今日調べたこと、あるいはこれまで皆さんが調べてきたことが全てだという先入観をもって何かに取り組んだとすると、大きな勘違いをして、ヒョッとすると取り返しのつかない失敗をすることだって考えられます。
今日の取り組みを通して、先入観をもたず素直な心で自然を見ること、そして、自分たちのデータだけではなくデータに接することの大切さを感じてもらえたらと思います。

タンポポ調査の結果について

タンポポ調査を行ってくれた各班のデータを地図の上にプロットしました。
これまでに行った調査と同じ様な結果になったところもありますが、これまでとは違う結果も出てきました。
これから、生徒がどのように分析するのか、楽しみです。

Click Enlarge


観察会、その後・・・

これまでは、4月の第3土曜日を活動日として春の観察会を実施してきましたが、今回初めての取り組みとして、午前中に観察会を行い、午後からは遠足研修という計画のもと実施されました。
理由は、次の希望を叶えるためです。
これまで、こうした取り組みを行ってこなかったのは、天候に合わせての実施となると、活動を予定している期間の分だけ観察指導員の方に予定を明けていただく必要があること、さらに、土曜日(当然、日曜日も不都合なので)平日の実施となり、観察指導員の方が集まりにくいなどの理由があったからです。
また、学校の授業をどうするかということも問題としてありました。
最終的には、やはり観察指導員の方の予定がつかないという問題も残ったのですが、春の遠足研修と組み合わせることで、ハードルをクリアして実施の運びとなりました。
というわけで、観察会終了後は、「中池見 人と自然のふれあいの里」の観察エリア内で昼食をとり、一休みしたところで学校に向けて歩いて帰りました。

思い思いの場所で、昼食をとる生徒

昼食後、学校に向けて歩き出す生徒
田植え前の「水鏡」がきれいです。