夏の観察会は、予定通り6月23日(土)に実施されました。
今回は、この観察会に先立ちSPPによる支援品の披露贈呈式を行いました。

支援品披露(森川教頭)

皆さんも承知しているとおり、本校の総合学習「ふるさと敦賀塾」の活動は、本年度もサイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)に採択されています。
始めて申請し、採択を受けてから6年連続となりますが、今年度もSPPを運営されている独立行政法人・科学技術振興機構(JST)様から、活動に役立ててほしいということで、双眼鏡(NikonトラベライトEX8X25CF、5台)、土壌酸湿度計(1台)、そして観察に使っているデジタルカメラのための充電式乾電池(エネループ単3・40本)と充電装置(チャージステーション1台)の提供を受けました。
こうした支援が受けられるということは、それだけ皆さんの活動が充実しているということであると同時に、より充実した内容の成果を期待されているということに他なりません。
ここにいる一人一人が、今日ここで何をやるべきかをしっかりと考えて、中池見湿地で思いっきり活動してください。
双眼鏡
土壌酸湿度計
充電式乾電池と充電器

お礼の言葉(生徒会長)

私たちは、中池見湿地でいろいろな活動に挑戦していきたいと考えています。
そして、この場所で活動したことを、多くの人に伝えたいと思います。
いただいた品物を大切に使って、充実した発表ができるよう頑張ります。

活動オリエンテーション(筒井宏行・学芸員)

天候が心配されましたが、今日は薄曇りで観察会を行うにはちょうど良い気候ではないかと思います。
今日は皆さんには、二つのことをお話ししたいと思います。
一つ目は、観察は気持ちによって深くなるということです。
今敦賀市では、「ふるさと学習」ということで、地元敦賀について今まで以上に学ぶ機会を増やしていこうという取り組みが行われています。ある小学校では、これまでは2年生がここ中池見湿地を訪れ、豊かな自然に触れるという取り組みをしていましたが、今年からは3年生も中池見湿地に来ることになったそうです。
そこで、担当の先生方と話し合いがあったのですが、私は「こちらで何かを用意して、レールの上を走るような感じで観察をすすめるだけでは、良くないですよね」という提案をしました。
皆さんは、この提案をどう思いますか。準備されたものを次々見ていく方が楽じゃないかと思いませんか。
しかし、楽であるということは「何も考えない」ということでもあります。
ここに集まった皆さんは、目的と具体的な活動計画を持ってここに集まってきているわけですが、これからの活動を通して、目的を達成できたら良い観察会で、できなかったら悪い観察会だったという評価をしてよいのでしょうか。多分、観察会の評価は別のところで決まってくると思います。それは、例え思い通りの結果を得られなくても、どうしてうまくいかなかったのか、うまくいくためにはどうすればいいのか、さらには、どんな準備をしておけばよかったのかなどといったことを考えたならば、次の観察会ではこうしようという次につながるアイディアが生まれ、そのことによって次に行われる観察会ではワンランク上の活動ができると思いませんか。
もし、こうした活動ができたのなら思い通りの結果が得られなかった観察会も、実は非常に大切な活動が行われたということになります。
準備したことを淡々とこなしていくというのも観察会の形ですが、見せられたものをただ見るのではなく注意深く見ようという気持ち、見られなかったのならどうしたらよく見えるだろうかと工夫する気持ち、さらには、どうしてこれを見る必要があるのかといった意味やつながりを探る気持ちを持つことで、同じことをしても全く価値が異なる経験となるはずです。
今日の観察会では、今あげた気持ちを持って活動し、これまで以上の成果を上げてほしいと思います。
さて、二つ目の話題ですが、皆さんも既に承知していると思いますが、この中池見湿地は5月10日に、国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約の新たな登録候補地に選ばれました。
7月には国際会議が開かれ、正式に登録が決定されるのではないかと思われますが、ここで確認しておきたいことは、登録されるということも名誉な

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「ラムサール条約湿地のワイズユース」
(環境省自然環境局野生生物課)より
ことですが、それをどのように生かしていくのかということが大切なことだということです。
実は、ラムサール条約には「三つの柱」というものがあります。
その一つは「保全と再生」であり、今ある豊かさを失わないように守ること、さらにはより豊かな状態にすることが求められています。
次にあげられるのが「ワイズ・ユース(賢明な利用)」で、簡単にいうと、豊かな自然をを身近に感じ、触れる機会を作りなさいということです。
そして、三つ目は「交流と学習(CEPA;Communication,Education,ParticipationandAwareness)」であり、先に紹介した図にあるように、「保全と再生」と「ワイズ・ユーズ」の活動を下支えするための人材を確保するための人づくりや事業を進めていくために力を合わせる協同体をつくるといったことが必要だとされています。

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ここで、問題になるのは「保全と再生」と「ワイズ・ユーズ」が、時として対立する関係にあるということです。
例えば、先頃世界遺産に登録された小笠原諸島では、世界遺産を目玉として観光を推進していこうということが計画されていますが、その一方で、島を訪れる人の増加は外来種の持ち込みを増加させることにもつながり、「東洋のガラパゴス」と形容される小笠原諸島固有の生態系を破壊するのではないかと心配されています。
私たちは、これから保全することと利用することのバランスをどのようにとって、中池見湿地をよりよい状態にすることが求められているということです。
今日の観察会を通して、保全と利用のバランスということも考えてほしいと思います。

中池見から世界を考えよう(笹木 進 自然観察指導員)

皆さん、こんにちは。
今、ラムサール条約の話が出ましたので、そのことに関する話を紹介したいと思います。
環境のことを考える場面などでよく使われる言葉に「Thinkglobally,actlocally(Thinkglobal,actlocal)」というものがあります。
自然はさまざまなつながりがあり、何か一つのことを解決しようとするときには地球全体で考えることが重要であるが、具体的な行動をとるときには、世界中の人が一斉に何かをするというのは無理だから、自分たちの足元から始めよう、といった意味でしょうか。
このことを真剣に考えて、世界中の国々が協力しようとして最初にできた条約が、ラムサール条約だといえるのではないでしょうか。
そもそもラムサール条約というのは、渡り鳥の生息環境を守ろうというのが発端です。
渡り鳥は季節によって移動する鳥のことです。移動する距離は鳥の種類によって異なりますが、中には地球を半周するものもいます。
シギ・チドリの渡り「シベリア~オーストラリア」ルート
「谷津干潟自然観察センター」のホームページより

http://yatsuhigata.jp/world/index.html
日本を通過する渡り鳥でいうと、シギ・チドリ類はシベリアで繁殖して、冬場になるとオーストラリアに向けて移動します。また、オーストラリアで越冬したシギ・チドリ類は、繁殖の時期を迎えると逆のコースをたどりシベリアへと向かいます。
こうした渡り鳥の移動を考えると、当然飛び立ったその日のうちに目的地に着くわけはありませんから、どこかでエサを食べて休みながら移動を続けるということになります。こうした場所を「中継地」と呼ぶわけですが、それはまるで日本庭園などで人が歩く目印として置かれている「飛び石」のようなものです。
人が置いた「飛び石」は、人の歩幅に合わせてうまく配置されています。同様に、渡り鳥にとって世界各地に点在する湿地は、移動を続けるためには欠くべからざる場所だということです。ですから、一つでも「飛び石」の石をとってしまったら(あるべきはずの湿地がなくなったら)、目的地に行きたくても行けなくなってしまうのです。
ラムサール条約というのは、渡り鳥のとってなくてはならない、この「飛び石」のようにある湿地を国際的に守っていこうといういう考えでスタートしたのです。)
京都・出町柳の飛び石
賀茂川と高野川が合流し、鴨川と名前が変わる場所には、両岸へ渡るための飛び石が置かれている。
もし、一つでも石がなくなったら・・・濡れずに川を渡れるだろうか?
このように考えると、私たちの身近にある自然というものは、何らかの形で世界とつながっており、私たちが身近にある自然を大切にするということは、何らかの形で世界の自然環境をよくしているということになるのではないでしょうか。
先に紹介されたように、皆さんが活動しているこの中池見湿地も、7月にはラムサール条約の登録湿地になることでしょう。この中池見湿地は、世界的な見地から見ても、非常に重要で、価値のある場所だということです。
そこで、皆さんに考えて欲しいことは、このように重要な中池見湿地を、これからどのようにしていったらいいのかということです。
私たちNPO法人ウェットランド中池見は、この中池見湿地にいる生物の多様性と稀少性に気づき、この場所を守ろうと考えました。そして、その方法の一つとしてラムサール条約の登録湿地にできないかと考えたわけです。
始めは夢のような話でしたが、今年になってこの夢が現実のものになろうとしています。
さて、次の10年後や20年後、さらにその先では、この中池見湿地にどのようなことが起こっているのでしょうか。そして、その時がんばっている人は誰なのでしょうか。
それは、皆さんのはずです。皆さんが行う観察会の意味は、中池見湿地の本当の価値を知るということです。このことは、中池見湿地に関わっている多くの生き物たちの営みを知ることであり、こうした生き物たちを守り助けることにつながっていくと思います。そして、こうした生き物たちの働きによって、皆さんは本当の豊かさを手に入れることになるのではないかと考えます。
さて、今日の話は少しスケールの大きな話になってしまいましたので、最後に今日の活動という足元を見てみましょう。これまでの観察会でも話されたことですが、一見無関係に思えるようなことであっても、自然界の中では何かしらのつながりがあります。今から行う皆さんの活動の中でも、こうした生き物たちのつながりを意識できたらよいのではないかと思います。

観察ミーティング

班毎に別れて、今日の活動についての確認が行われ観察指導員(TA)の方の指導で準備が進められました。

班別ミーティングが終わり、早速観察会スタート。
さっそく、班毎に決められた場所に向かい、調査を行いました。
トラックの荷台に載って観察場所に向かう生徒
このような体験も普通の場所ではできないことです
向かった先は、研究田
3班の生徒は、水田雑草といわれた植物調査をしました
ヒツジグサとオオアカウキクサ
ヒメビシ
一方、7班の生徒たちは、指導員の方に教わりながら
水田雑草をとっていきました
しばらくすると、この通り。
手際よく水田雑草を抜き取っています
ビジターセンターに用意されていた田靴
(水田に入るにはそれなりの準備が必要です。)
活動が終わったら、再び普通の長靴に履き替えて
もう一度ビジターセンターに戻り、
かつて使われていた回転式草取り機
使い方はこんな感じです
こちらは、エンジンつきの最新型。
手作業で草取りをした後だけにこれらの機械の便利さがよくわかります
水質調査を行っているのは、2班です
支援してただいた「土壌酸湿度計」を早速使ってみました
今回の調査だけでは何も分かりませんが、色々な所を調べ続けていくことで何か発見できることがあるかも知れません。
いつもの調査は、手慣れたもの
水温などの調査
透明度の測定をする生徒
pH計を使うのも上手なものです
4班は、植物調査です。
見つけた植物が薬草であったり、 虫などの食草になっていないかを調べながら観察をすすめました
これは、オオバコです。
薬の名前としては「車前草」で咳止めや下痢止めとして利用され利尿効果もあります。
モリアオガエルの卵塊です
1班の活動は、水生生物調査
今回のターゲットは、ヤゴです
とはいえ、網の中にはいろいろ入っています
こちらは、たくさんのアメリカザリガニ。実はこれ、5班が行った外来種調査です
仕掛けられたカゴワナ
こんな大物も入っていました
8班が何をしているかというと
外来植物の分布調査と抜き取りです
調査対象は外来タンポポと
そのロゼット
ブタナと
そのロゼットと
綿毛
ニワゼキショウ
オオニワゼキショウ
引き抜き作業に使ったレジャーナイフ
回収された外来植物。一番多かったのはブタナ。二番目は外来タンポポ
6班は、鳥の調査です
双眼鏡は遠くを見るだけのものではない。こうすれば拡大鏡にもなる
カイツブリ(下)とアオサギの羽
草陰に何か見えるぞ
カイツブリの浮巣
カメが遊びに来ました
その他にもこんな鳥が
あっちで座り込み、そこでは覗きこみ、こちらではガヤガヤと話し込みながらの観察会。
気温も湿度も高く、最後の方は少しグロッキー気味だったのかな。
それでも、集合場所に集まってきた顔は少し誇らしげでした。

夏の観察会のまとめ(筒井宏行 学芸員)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか。
今日の観察会は、本当に内容が盛りだくさんの観察会になったと思います。
今日の観察会で、どのようなことができたのかを発表してもらいましょう。

活動報告

1班

私たちの班は、池のような場所に行って、やごの調査をしました。大きさや形の違うヤゴがたくさんいました。

2班

水質調査をしました。晴れていたので、ほとんどの場所で水は透き通っていましたが、水が濁った場所がありました。

3班

今日は田んぼの調査をしました。田んぼの中と外では生えている植物が違うことが分かりました。

4班

私たちは、植物の名前を聞きながら、薬草になるのか、どんな虫が食べるのかを調べました。雑草だと思っていた植物も、薬になることが分かってビックリしました。

5班

今日は仕掛けてあったカゴワナを引き上げ、アメリカザリガニをとりました。

6班(鳥班)

今日はカイツブリの浮巣をを見つけることができました。浮巣にカメが登ったりヘビが泳いでいったりしました。

7班

最初、田んぼの草取りをして、後で民家の気温などを測りました。トラックの荷台に載って移動したのが楽しかったです。

8班

外来植物を探して、抜いてきました。シボラ道には少なかったけれど、仮設道路にはたくさんありました。
はい、ありがとうございました。
さて、活動を始める前に皆さんに伝えたことが二つありましたね。覚えていますか。
一つは、観察をするときの気持ちで、見るもの・見えるものが変わってくるという話でした。このことに関しては、今日ここに集まった皆さんは、この中池見湿地で何ができるかを自分たちで考えて、その目的に沿って活動したわけですから、何も目的を持たずにやってきた人達に比べたら、相当たくさんのことが見られたのではないかと思います。その証拠に、各班の発表を聞いていると、それぞれ有意義な活動ができたことが報告されました。
それでは、二つ目は何だったでしょうか。そのことを考える前に、今日の皆さんの活動の意味を考えてみると、次のようになります。
まず、1班・2班・3班・6班の活動は、中池見湿地には何がいるかを調べることであり、こうした調査をすることで、今ある環境を把握する活動です。
次に、5班と8班の活動は、外来種をなくす活動であり、まさに中池見湿地を保全する活動でした。
そして、3班の活動は自然の中にあるものの利用法を確かめることであり、7班の活動は自然に積極的に働きかけて自分たちが必要とするものをつくろうということであり、いわば中池見湿地を利用する活動ということになります。こうした活動は、皆さんの考えでスタートしているわけであり、それぞれの班で独自に活動すればいいと思います。
しかし、それだけでいいのでしょうか。そこで提案したのが、「保全すること」と「利用すること」のバランスを考えようということです。
何か自分たちに必要なものをつくろうとするならば、もともとそこにあった何かをなくすことになります。逆に、その場所にあるものを残そうとするならば、必要とするものが十分に手に入らないということがおきます。だからこそバランスが大切なのです。
そして、バランスをとるためには互いのことをよく知る必要があるとは思いませんか。皆さんの活動もそうなのです。自分たちの班の活動も大切ですが、他の班のやっている活動をよく知ることで、さらに大きな成果が期待できるのです。

夏の観察会の終えて(笹木 進 自然観察指導員)

今、皆さんの報告を聞いて、それぞれの班でよく頑張ったなと感じました。
最初は1年間を通して一つの班の指導に当たろうに計画していたのですが、都合により来れなくなった指導員がいますので、春とはまた違った指導員と活動した班も多いと思います。私が担当した班も、そうでしたね。
最初に「これからは皆さんの番だ」ということをいいました。それは、この観察会においても同じです。今回私が担当した4班は、食草や薬草を探そうというテーマで活動してくれましたが、道沿いにあるさまざまな植物に目を留めて、その植物にはどのような働きがあるかを図鑑を使って丁寧に調べていました。
人の話を聞くだけではなかなか記憶としては残らないものです。記憶というのは、やはり積極的になにがしかの働きかけを行うことで、より鮮明なものになっていくのだと思います。この意味で、少なくとも4班の皆さんは、今日のことが鮮明な記憶として残ると思います。
また、他の班でも外来種の駆除に汗を流した班もありましたが、きっと次に来たときには、今日一生懸命汗を流した場所を見る目が変わっていると思います。多分どこかで、この前来たときに駆除した外来種は増えていないかという気持ちが芽生えているからです。
記憶もそうですが、身近な場所への愛着というのも、皆さん一人一人の積極的な働きかけで深くなるのではないでしょうか。皆さんの好奇心の目が、この中池見湿地での体験を通して大きく見開かれることを期待します。

余談 -伝統農法による田植えを体験-

夏の観察会を前にした5月19日(土)に「中池見 人と自然のふれあいの里」の民家前の田んぼで有志による田植えを今年も行いました。
まず行ったのは、「田起こし」の替わりに行う「株踏み」です。その後、「株踏み」をして整地された田んぼに生徒が一列に並び田植えを行いました。
泥だらけになりながらも、生徒たちは心地よい日差しのもと、昔ながらの農作業に汗を流していました。

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この様子を伝える読売新聞の記事(平成24年5月20日付)