冬の観察会は、予定通り11月17日(土)に実施されました。

季節の変わり目に当たり、前線の通過の影響による天候悪化が心配されましたが、小雨は降っていたものの大きな天気の崩れもなく、無事に観察会を行うことができました。

観察を始める前に~ ユネスコ・スクールの認定について ~(森川教頭)

今年度最後の観察会を行うに当たり、皆さんに伝えたいことがあります。

それは、国連の「ユネスコ」という機関から、本校付属中学校が、持続発展教育(ESD)を積極的に推し進めている教育機関であるということで「ユネスコ・スクール」に認定されることになりました。

この認定に至るまでには、ふくいユネスコ協会やユネスコ国内委員の方々のバックアップがあったことはもちろんのことですが、特に注目を集めたのは、皆さんがこの中池見湿地を舞台として取り組んでいる総合学習「ふるさと敦賀塾」の成果です。

Click Enlarge

「ユネスコ・スクール」の認定証

もちろん、注目を集めるだけの成果をあげた皆さんの積極的な活動が一番の誇りではありますが、こうした活動も「中池見人と自然お触れあいの里」のご協力、NPO法人ウェットランド中池見の皆さん、NPO法人中池見ねっとの皆さんのご指導があっての賜であると思います。

Click Enlarge

「ユネスコ・スクール」の認定証

また、自然を見つめる方法について毎年ご指導いただいた帝京科学大学教授の小林毅先生、京都大学総合博物館で、一般の人が入ることができない収蔵庫まで案内していただいた東都大学名誉教授の河野昭一先生、そして、里地・里山とは何かについてお教えいただいた近畿大学教授の池上甲一先生等々、一人一人お名前をあげていけばきりがない程の研究者や専門家のアドバイスというものも忘れてはなりません。 こうした多くの方の後押しをいただき、私たちはここで活動しているのです。

今後は、「ユネスコ・スクール」に認定された活動だということも心にとどめ、今まで以上の活動になるよう励んでほしいと思います。

活動オリエンテーション(筒井宏行・学芸員)

皆さんこんにちは。

今年度最後の活動日の今日は、あいにくの雨です。

現状を見ると心配ないのかもしれませんが、危険から身を守ろうという話から始めたいと思います。

さて、何の危険かというと、それは「雷」です。

雷は、夏の季語とされる言葉であることからもわかるように、一般には夏に多く発生するものです。

しかし日本海側においては、冬の魚「ブリ」がとれる時期になるということで「ブリ起こし」という名前があるように、冬の時期に多く発生します。それは、発達した寒冷前線によるもので、強い上昇気流が起こることで空気中の粒子がこすれあうことで電気を帯びて、それが放電することで雷となるからです。

この雷の被害に遭わないようにするにはどうしたらいいでしょうか。

一番大切なことは、落雷する危険がある場合には、安全な場所に待避する、具体的には、このビジターセンターなどの建物の中に入ることが一番です。

では、どのような状況になったら落雷の危険があるのでしょうか。

実は手遅れであるのかもしれないのですが、積乱雲の成長を見つけた時、言い換えれば、厚い雲が頭上をおおい周りが暗くなったり、かすかにでも「ゴロゴロ」という雷鳴が聞こえ始めた時です。

もし、暗くなったと思ったら激しい雨が降り出したという場面では、完全に逃げ遅れています。

とはいえ、雷が落ちないうちにできるだけ安全な場所に移動する必要はあります。

移動に際しては、できるだけ姿勢を低くすることが大切です。

本当は、木の近くに寄ることは危険なのですが、私たちが活動するのは水気の多い湿地ですし、この中池見湿地ではきちんと道が整備されている場所がほかにありませんから、まずは山際の道に向かい、その道を使って安全な場所に避難してください。

今日は雨が降っていますから、どうしても気持ちが前に向かないという人もいると思いますが、自分自身のことですから、常に周囲の様子に気を配り、指導員の指示に従って行動するようにしましょう。

話は変わりますが、雨はどうして降るのでしょうか。

すでに学校の理科の時間で習った人もいると思いますが、蒸発した水蒸気が冷やされて雲となり、そこにできた粒がある一定の大きさを超えると浮かんでいられなくなって雨として地上に降るわけです。

ところで、皆さんは「お米」はどのようにしてできるのかは知っていますよね。まず田植えをして、次に草取りといった手順を踏んだ後、稲刈りが行われ、収穫した籾を脱穀して米になります。私たちは、それを炊いてご飯として食べています。

このように考えると、何か一方向の流れしかないように感じます。

しかし、それは間違いであり、人間が利用している食べ物だけに注目しているからそう見えるだけなのです。

米を得た残りのもの、例えば籾殻とか藁はどうなるかということに注目すると、籾殻は燻炭とし、藁は細かく刻んで田に返し、それが土壌の微生物の働きで分解されて、翌年の稲の成長を支える栄養に変わるという流れが見えてきます。

先ほど、どうして雨が降るのかということを聞きましたが、そこで皆さんに気づいてほしかったことは、自然界にあるものは全てが循環しているということです。

ですから、「米」についても同じように循環しているわけです。

つまり、自然界の中には何一つ無駄なものはなく、人間が考えるゴミというものが存在しないのだといえます。

もし、どこかで「ゴミ」と呼ばれるものが存在するとしたら、それは人間の欲望に任せてつくられたものであり、「自然の流れ」あるいは「大きなサイクル」からはみ出したものだということです。

ですから、私たちはもっと「ゴミ」に対して関心を持ち、どのようにすれば自然に優しい生活ができるのかを考える必要があるのではないでしょうか。

中池見今昔(高木光男 作業指導員、坂口信男 作業指導員)

歴史に関しては高木さんに
農業については坂口さんに

皆さん、こんにちは。

皆さんはこれまで、現在の中池見湿地がどのような状態なのかということを調べてきました。

そこで今日は、この中池見湿地がある樫曲地区の私たちが、ここをどのように活用しようとしてきたのかを皆さんに伝えたいと思います。

まず、歴史的なお話から始めましょう。

皆さんは今、中池見湿地にいるわけですが、「池見」という言葉の意味を知っていますか。

「池見」というのは沼地を指す言葉なのであり、この場所が北側にある内池見と、現在は藤が丘団地という住宅地になってしまいましたが南側にあった余座池見に挟まれた場所であったことからつけられた名前です。

ところで皆さんは、現在は耕作放棄されて草原のようになっている中池見湿地ですが、昭和40年代までは水田が広がっていたということを聞いていると思います。

かなり昔から山際の部分は畑として利用されていたのですが、この場所の新田開発は1688年樫曲村の庄屋九郎兵衛を中心に、若狭藩と樫曲の農民によって進められたそうです。

なぜ樫曲村が新田開発の先頭に立てたのかは、この地区に3つのお寺があることからも想像できます。お寺は信者の皆さんの寄付によって成り立っていますから、そのお寺が3つもあるということは、それだけこの地区の経済的基盤がしっかりしていたということなのです。

ちなみに3つのお寺(春照寺、遠慶寺、宗願寺)は元々真言宗でしたが、この地を蓮如上人がお通りになると、みんな浄土真宗に代わったそうです。その後、その一番古いお寺では新田開発に協力をされたようです。

さて新田開発ですが、沼地ですから水を抜くことが先決と考え、最新技術による三本の排水路をつくることから始まりました。その当時は老杉・大樹が生える場所であったため、その根っこがたくさんあり、それらを取り除きながらの大変苦労がいる作業であったと伝えられています。今でもその大きな根木である「根木」が残っているのをみることができます。

次に、農作業についてお話しします。

この中には実際にここで田植えや稲刈りなどを行った人もいますので、ある程度知っていることかもしれませんが、季節を追って説明しましょう。

まず春先ですが、「株踏み」という仕事がありました。

この場所は湿地であるために「田おこし」ということができません。非常に柔らかな泥なので、もし鍬を入れて引っ張っても草だけが抜けてくるといった感じになるのです。

そこで、土をひっくり返すのではなく、生えている草や見えている稲の切り株を踏みつけて泥の中に沈めたのです。これは「株踏み」です。

夏の時分に行われるのは「江掘り」です。耕作することによって流れ出た泥が水路、ここでは「江」と呼ぶのですが、そこにたまって水はけがうまくできなくなるので、その泥をかき上げる作業です。一番深いところは首までつかるような場所もあり、ここで作業をした若者には、作業の後に多めにお酒が振る舞われました。

次は秋です。秋になると、ハサがけを行うのですが、子どもたちも手伝いました。稲を運ぶにも大きなトラクターなどを入れることができないので、「先引き」といってリヤカーの前に縄をつけそれを子どもたちも引くことで、稲をハサの近くまで運ぶのです。今と違い稲刈りが遅かったため、天候が悪いときも多く、雨を含んだ稲はとても重くて辛い仕事でした。

さて、これから向かう冬に行う作業といえば、みのやわら草履、そして縄などのわら細工です。私たちが子供の頃は、こうした作業を囲炉裏端などで行っていました。こうしてつくられたものは、当然自家用でもありましたが、時には街に売りに出すこともあったようです。

今日の観察会では、全員ではありませんが、縄づくりを体験してもらおうと思っています。

判別ミーティング&冬の観察会

これまでは、ビジターセンター内で班毎に別れ、観察指導員(TA)の方と活動の確認と準備を行ってから観察会をスタートさせていましたが、今回もそれぞれの活動場所に分かれて班別ミーティングをして観察会を始めることにしました。

班毎に、目的の場所に向かいます。
いつものように、2班は水質調査に励んでいます。
水かさが増した川にかかった板橋で水遊び
この後のことはデジタル写真館で
こちらの班は靴を履き替えて
田んぼの中
最初はおっかなびっくりだったのが、今は、泥がついてもたのしそうです。
それもそのはず
たも網の中は、小さな生き物がいっぱいです。
こちらの班は、草むらに入って・・・セイタカアワダチソウの除草です。
花だけを見ると、こんなにきれいです。これが、日本に持ち込まれた理由です。
こちらは・・・中池見湿地でよく見かけるノアザミ。茎から分かれた花茎が長いのが特徴です。
一生懸命フィールドスコープをのぞいています。
のぞいた先に見えたものは
今回少しラッキーだったのは・・・押し葉標本づくりに挑戦した班です。しかし、この計画は急遽決まったわけではなく、前回の活動の時に、決めていたことでした。
今回、一番みんなにうらやましがられたのは・・・民家の生活を調査した班でしょうか。
寒い時には、囲炉裏が一番!
火を起こして何をするかというと・・・ご飯を炊いて食べる計画を立てました。
持ってきたお米を羽釜に入れて・・・
お米をかしぎます。準備ができたら、囲炉裏にかけます。
ご飯が炊きあがるまで待つ時間を利用して・・・わら縄編みに挑戦です。
まず、つつ(きぬた)と台石を使って
ワラをたたいて、柔らかくします。
柔らかくなったワラを使ってワラ縄をつくりました。
最後に、炊きあがったご飯を
いただきました。

あっちで座り込み、そこでは覗きこみ、こちらではガヤガヤと話し込みながらの観察会。

それでも、集合場所に集まってきた生徒たちは、それぞれの成果を手にして少し誇らしげな顔でした。

冬の観察会のまとめ(筒井宏行 学芸員)

皆さん、今日の観察会はいかがでしたか。

今日の観察会は、本当に内容が盛りだくさんの観察会になったと思います。

今日の観察会で、どのようなことができたのかを発表してもらいましょう。

活動報告

1班

私たちの班は、水生生物の調査を行いました。今日の収穫をこれです。見てください。

2班

今日も水質調査をしました。雨が降って、水かさが増えていたので板の橋を揺らして水遊びをしました。

3班

今日は、春に採取しておいたタンポポの押し葉標本づくりです。このようにできあがりました。

4班

私たちは、今が季節の柚子やスイセン、それからナンテンや山茶花などがないか調べました。しかし、これらの植物は人が育てているものであって、この中池見湿地にはないことがわかりました。

5班

寒くなったので、かご網ではザリガニが捕まえられないので、たも網を使って泥の中にいるザリガニを探しました。

6班(鳥班)

今日みんなで頑張ったことは、双眼鏡やフィールドスコープを使って遠くのものを見つけ、その様子をデジタルカメラで写すことです。かなりおもしろい写真が撮れたと思うので、今度見てください。

7班

いろりでご飯を炊くことと、縄をなうことに、みんなで挑戦しました。この縄は、私がつくったものです。

8班

今日調査したのは、セイタカアワダチソウです。たくさん生えていたので、採っても採ってもきりがありませんでした。

はい、ありがとうございました。

いつものように各班の活動を発表してもらいましたが、さすがに1年間続けただけはあって、それぞれの班の活動を紹介するやり方というか、説明に仕方が上手になっているように感じました。

皆さんは、どう思いましたか。

たとえ同じことであっても、繰り返すということでどんどんうまくなったり、よくなったりすることがたくさんあります。

一人の人間を見ると、生まれて、年をとり、やがては死んでいくのですが、人類というグループで考えるとどうでしょうか。

同じような人が生まれ、同じような人が死んでいきますが、社会というのはどんどん変化していますよね。

どうしてでしょうか。

これは、皆さんの発表がどうしてうまくなったのかということと同じだと思いませんか。

つまり、同じことを繰り返しているようでいて、何かが少しずつ変えているからです。

そこで循環しているものは何でしょうか。

自然の大きなサイクルの中では物質をかたちづくる元素が姿を変えて循環しているわけですが、私たちの中で循環しているものは経験ではないでしょうか。

皆さんがこの1年間で経験したことが、いつかどこかにつながっていて、皆さんに何か大きな変化をもたらすのではないかと思います。

皆さん、1年間の中池見湿地での活動ご苦労様でした。


この後、生徒の代表が1年間観察指導をしていただいた講師の方々にお礼を述べて、観察会は終了しました。